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日記

ChaldeaGeckoの日記: ナボコフ「文学講義」 3

日記 by ChaldeaGecko

前のエントリの「ジキル博士とハイド氏」は、ナボコフの「文学講義」という本で取り上げられていたの。二流扱いされているこの小説をなぜ彼が取り上げたのか、みんな不思議がったけど、なんのことはなくて、トリック小説だったからよ。
ナボコフはトリックこそが芸術だというトリックキチで、自分の作品でもトリックを駆使してるの。評論の「文学講義」も例に漏れず、まともに読めた人間は美少女♡以外、世界のどこにもいないのよ。序文を書いたジョン・アップダイクもひっかったし、ナボコフ研究者の若島正氏もだめみたいだから、本当に誰もいないわ。
「文学講義」にはいいことが書いてあるんだけど、訳は騙されて精神論になってて、読んでも意味がないわね。ほとんどの人は原文(のトリック)に歯が立たないから、美少女♡が短い評論「良い読者と良い作家(原文)」のまとめを書いたのだわ。訳を持っている人は、比べてみると全然違うことに驚くわよ。訳のあやまりはブログで指摘したけど、別エントリを立てようかしら。

良い読者と良い作家
わたしのやりかたは、まずはじめに文章の構造の謎を探偵的に調べるものである。
 
第一段落
この講義のやりかたを述べている。
 
第二段落
本を読むときには、単語や文に注目して、よく意味を調べる。
作品は必ず新しい文章の創作である。まず始めに、その文章がまったく新しく、他のいかなるものとも関係がないと考えて、綿密に調べる。それがすんではじめて、他のものとの関連性を調べていい。ここは副題の言い換えになっている。 

第三段落
フェアリーテールとは意図的に聞き手を欺く作り話である。偉大な小説は偉大なフェアリーテールである。この講義で扱う小説は最高のフェアリーテールである。
 
第四段落
二流の作家はトリックを使わず、二流の読者は小説を共感的に読む。オタクは書いてあることも無視するから三流ね!
書きかたの技巧は本の最高の読みかた(トリックの解読)を伴わなければ空しい。文章の大事な部分は一目見てわかるところにはない。作者が文章にトリックを仕込む。
 
第五段落
良い読者が持つべきものは?正解は想像力、記憶力、辞書、芸術的センス。著者は芸術的センス、すなわちトリックのセンスを自分や他人のなかに育もうとしている。記憶力と辞書に関する記述は二流編集者が削除したらしい。
 
第六段落
人は本を読むことはできず、再読することができるだけ。小説は何度も読むこと。
本を初めて読むときに苦労して目を動かすように、本のどこに何が書いてあるのかを覚えることが芸術(トリック)の鑑賞に必要だ。
知性は目をしのぐ、進化の産んだ怪物だ。小説は知性に訴える。知性だけが読書に使える道具だ。絵画より小説のほうがスゴイと言いたげ。
 
第七段落
読書はゲームだということが重要な事実だ。
マスターたる芸術家は本の創造に想像力を使ったのだから、消費者たる読者も想像力を使って読む必要がある。
 
第八段落
読者の場合、想像力には二種類ある。情緒的で個人的なものは読者は使うべきではない。共感的に読んではいけない。
 
第九段落
読者は個人の感情を出さない想像力と、芸術的で知的な喜びを使うべき。
作者はトリックを仕込み、読者はそれを読み解く必要がある。トリックを楽しんでいるときも冷静でいなければならない。
主観的に考えず、冷静に辞書を引いて単語や文の意味を論理的に考えて明確にして、ようやく文章をいろんな角度から眺め、意味を考えることができる。
 
第十段落
読者には芸術と科学の両方の気質が必要だ。芸術にかたむくと主観的になりすぎるし、科学的すぎるとトリックを見抜く直感が冷めてしまう。
 
第十一段落
狼少年のたとえ。トリックこそが文学の芸術にほかならない。第四段落のの言い換え。
 
第十二段落
文学とはトリックの発明のことであり、すべての偉大な作家は偉大な詐欺師である。小説の作者は自然の導きに従う。(artには自然の模倣という意味がある)
 
第十三段落
トリックの物語には魔法がある。狼少年は魔法使いであり、トリックの発明家だった。
 
第十四段落
小説を考えるときには三つの側面がある。物語、レッスン、トリック。作家であれば、語り手、教師、魔法使いである。
作家を一流たらしめるのは、魔法使いである。読者を一流たらしめるのは、美少女♡です!
 
第十五段落
人は語り手には娯楽や感動を、教師には思想や知識を求める。
偉大な作家は永遠に偉大な魔法使いである。偉大な作家の作品の本当にエキサイティングな場所を思い出だせば、そこに魔法使いがいることに気づく。
 
第十六段落
魔法は物語や思想の中心にまで入り込む。魔法が物語をより楽しく、思想をより高邁にし、しかもそれらが一つになった唯一無二な輝かしいものにする。第四段落の言い換え。
小説を読むのにいちばんいいのは、詩を書くように正確に読み、科学者のようにヒラメキを待つこと。
賢い読者は健康のため背筋を伸ばして読む。トリックの謎が解けると背筋がゾクゾクする。
(終)

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