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日記

ChaldeaGeckoの日記: リアリティ

日記 by ChaldeaGecko

ナボコフ「良い読者と良い作家」の原文

The material of this world may be real enough (as far as reality goes) but does not exist at all as an accepted entirety: it is chaos, and to this chaos the author says "go!" allowing the world to flicker and to fuse. It is now recombined in its very atoms, not merely in its visible and superficial parts.

〇ビ訳

ことばの大事なところは(実在性を抜きにすれば)申し分なくリアルかもしれないが、みながこのことばの全体だと思っている、目に見える部分のどこにも存在しない: 目に見える部分はカオスであり、このカオスに向かい作者は「消え失せろ!」といい、ことばをきらめかせ、溶け合わせる。それは目に見える表面的な部分だけでなく、まさに原子レベルで再結合される。

誤訳してたのでこっそり修正したのです。この「大事なところ」が

そして官能的でも知的でもある喜びとともに、われわれは芸術家がトランプでお城を作るところ、そのお城が美しい鋼とガラスのお城に変わってゆくところを見ることになる。

鋼とガラスのお城なのです。つまり鋼とガラスのお城はリアリティなのです。実在性と信念は別だから、揉まれたがっている清楚な美少女の三葉さんのリアリティは残るのです。
あと

To the storyteller we turn for entertainment, for mental excitement of the simplest kind, for emotional participation, for the pleasure of traveling in some remote region in space or time. A slightly different though not necessarily higher mind looks for the teacher in the writer. Propagandist, moralist, prophet—this is the rising sequence.

物語作家には、われわれは娯楽、もっとも単純なタイプの知的興奮、感情移入、場所や時代の離れた異郷を旅する喜びを求める。やや違った知性は、必ずしもより賢いというわけではないが、作家の中の教師を求める。宣伝家、道徳もっとも単純なタイプの知的興奮家、宗教的預言者--あとに行くほどよい教師だ。

われわれにはナボコフも含まれるから、彼はこういった小説に値打ちを認めているのです。やや違った知性には、ナボコフは含まれないのです。『ロリータ』を書いたナボコフが道徳小説に価値を見ているはずがないから、これはつまり最初の宣伝者を叩いているのです。そこにはいわゆる政治的なものだけでなく、娯楽から宗教的予言者まで以外のあらゆるもの、ヒューマニズムやフェミニズムも入るのですが、これらはゴミだと言っているのです。
性的興奮は知的興奮と等しいのです。なぜなら

そして官能的でも知的でもある喜びとともに、われわれは芸術家がトランプでお城を作るところ、そのお城が美しい鋼とガラスのお城に変わってゆくところを見ることになる。

ちゃんとこうことわっているのです。「もっとも単純なタイプの知的興奮」は「もっとも単純なタイプの性的興奮」なのです。小説がちょっとエッチなのはあたりまえなのです。

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