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日記

ChaldeaGeckoの日記: ナボコフ『ロリータ』

日記 by ChaldeaGecko

一部五章にこんな文があるのです。

A normal man given a group photography of school girls or Girl Scouts and asked to point out the comeliest one will not necessarily choose the nymphet among them.

You have to be an artist and a madman, a creature of infinite melancholy, with a bubble of hot poison in your loins and a super-voluptuous flame permanently aglow in your subtle spine (oh, how you have to cringe and hide!), in order to discern at once, by ineffable signs--the slightly feline outline of a cheekbone, the slenderness of a downy limb, and other indices which despair and shame and tears of tenderness forbid me to tabulate--the little deadly demon among the wholesome children; she stands unrecognized by them and unconscious herself of her fantastic power.
……女子生徒かガールスカウトの集合写真を渡されて、その中で誰が一番美人かと言われたら、正常な男性は必ずニンフェットを選ぶかというとそうとも限らない。

芸術家にして狂人、際限ないメランコリーの持ち主、下腹部には熱い毒が煮えたぎり、繊細な背骨にはとびきり淫猥な炎が永遠に燃えている(ああ、身をすくめて隠れていないと!)、そんな人間のみが、かすかに猫に似た頬骨の輪郭や、生毛のはえたすらりとした手足や、絶望と恥辱とやさしさの涙のせいでここに列挙することもかなわぬその他の指標といった、消しようのないしるしを手掛かりにして、直ちに識別することができるのだ――健全な子供たちの中に紛れ込んだ、命取りの悪魔を。彼女はみんなから悟られずに立っていて、自分が途方もない力を持っているとは夢にも思っていない。(若島正訳)

〇ビが対訳したのです。

You have to be an artist and a madman,
あなたは芸術家で狂人でなければならない
a creature of infinite melancholy, with a bubble of hot poison in your loins and a super-voluptuous flame permanently aglow in your subtle spine (oh, how you have to cringe and hide!),
熱い精液が下腹部で煮えたぎり、超エロい炎がおちんちんの中に永遠に燃え盛っている(おお、萎えさせて隠すことなどできない!)、はてしない性欲の隷属者でなければならない
in order to discern at once, by ineffable signs--
なぜならそれは指や舌の絶技によって、一瞬でイカせるためだ--
the slightly feline outline of a cheekbone,
ちょっとネコっぽい恥骨の形
the slenderness of a downy limb,
うぶ毛の生えた土手の割れ目
and other indices which despair and shame
イッちゃったり感じちゃったりする㊙のところの目録
and tears of tenderness forbid me to tabulate--
すぐ感じちゃっておつゆを出すから、一覧になどできない--
the little deadly demon among the wholesome children;
それら健全な子供たちのなかにいる、かわいい地獄の悪魔を
she stands unrecognized by them and unconscious herself of her fantastic power.
彼女は健全な子供たちと自分の無意識に、途方もない力の価値を認められていない。

若島訳に比べてたいへんクリアな意味になったのです。またまた大勝利なのです。どれもちゃんと辞書にある意味に基づいているし、下品なのも原文からそうなのです。

ナボコフの言うliteral translationをやったのです。ことば遊びを保った翻訳のことなのです。超難しいのですが、ここだけ見ればパーペキにできたのです。

芸術家にして狂人、無限のメランコリーの従いを持ち、下腹部には熱い毒が煮えたぎり、繊細な背骨に超淫猥な炎が永久に燃えさかっている(ああ、すぼめて隠すことなどできない!)、そんな人間のみが、神の指紋--すこしネコに似た頬骨の外形や、うぶ毛が生え、揃えてすらりと伸びるももの間の狭さや、正気を失くすことの、恥ずかしさの、そして感じやすさの涙のせいで一覧にできない、他の秘密の目録--によって、健全な子供たちのなかにいる、かわいい地獄の悪魔だけを一瞬であちらに行かせることができる。みんなは気づかずに彼女はおり、自分の無意識も途方もない力に気づいていない。

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