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日記

ChaldeaGeckoの日記: オカルトオーディオの生まれるわけ

日記 by ChaldeaGecko

オーディオは自己同一化の激しい趣味です。「よい音で聞く」ではなく「よい音を聞いている自分がスキ」になりがちです。選択肢は多いが修練の必要はなく、買うだけのことが多いです(もちろん科学的な人もすくなからずいますが)。この「買う」という行為は判断とリスクテイクの快感をともないます。これは本質的に勝ち負けです。高価な機材であればあきらかなハズレはそうそうなく、負けることはまずありません。お金は必要だが勝ち続けることができ、容易に自己同一化を引き起こします。
科学的に考えない人は、よい機器はなぜよい音を出せるのかを知りません。しかし自己同一化しているので根拠のない自分の考えをあてはめます。さっき書いたように、オーディオで負けることはないので、自分の考えを修正するチャンスはありません。これでオカルトオーディオの下地ができました。
オカルトオーディオの大半は「なんの影響もない」でしょう。たとえばイヤホンでは、ケーブルの特性はほぼインピーダンスのみで決まります。インピーダンスが変わるのならリケーブルで音質は変わるでしょう。しかしそれにユーザーが気づけるかどうか、気づいたとしても好ましい方向への変化かどうかはわかりません。インピーダンスがおなじケーブルに変えてもなにも変わりません。だから「音が悪くなることはない」のです。あとは高いケーブルを買ったという心理的な効果により「音がよくなったように感じられる」のです。もちろん承知の上でファッションとしてリケーブルを楽しんでいる人もいます。
なぜ高いケーブルを買うかというと、高いのだから効果もあるのだろうという素朴な信頼や、レビューサイトで評価が高いからとか、結局は「みんなが買っているから」につきます。オカルトでなければ購入の判断基準として常識的なものです。ショップもたぶん店員は体感したままを言い、ウソは言ってないのでしょう。買ってからも、心理的な効果で体感としては本当に音がよくなったと感じられている。だから「それはオカルト商品だ」と指摘すると、自分と信頼している人(店員)の両方を否定することになるが、自己同一化が激しい趣味のため、普段は慎重な人でもかたくなになります。これでオカルトオーディオの流通ができました。
オカルトオーディオは言ってみればカルトです。人畜無害なら放っておけばいいと思う人がいるかもしれませんが、自分の家族がカルトに入ろうとしているなら阻止するでしょう。なぜならそれは認識や思考の歪みの問題だからです(世間体の問題の人もいるでしょうが…)。オカルトオーディオにハマっている人は、基本的には常識的にふるまっています。だからオカルトを叩いたり嘲笑するだけでは、カルトと大差はありません。オカルトオーディオを批判する唯一正しい方法は、科学的思考です。オカルトオーディオは、他の自己愛をくすぐる商品と変わりはありません。異様さは、一見科学的なのにきわめて非科学的なところにあります(しかし購入者は自分の正しさを信じる理由があります)。商品ではなく購入者の非科学性は、まともな商品を買っている人とそう差があるわけではないのです。だからオカルトを叩くうちに自分たちもオカルトと大差なくなります。これがわたしがオカルトオーディオのストーリーを嫌う理由です。

オカルトオーディオにハマった人は、一つの機器に満足せずつぎからつぎへと買うのが常です。これは勝利の快感はドーパミンによるもので、すぐ減衰してしまうからです。まっとうな商品のイヤホンやヘッドホンをスパイラルと称してどんどん買う人もおなじです。そこそこの値段のヘッドホンは末永く使うことが前提です。こういったヘッドホンは楽器が指になじむように、耳になじむのに時間がかかります。エージングのことではありません。年単位のスパンです。つまり、ヘッドホンのモデルが脳内にできるということです。音の認知のしかたがすこし変わり、「音」から「声」へ変わるイメージです。これはことばでは形容不可能な感覚なので、レビューを読んだり書いたりすることはできませんし、そもそもヘッドホンではなく脳の能力です。

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