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Pravdaの日記: ラディカル・ヒストリー

日記 by Pravda

山内昌之『ラディカル・ヒストリー』(中公新書)より。著者は歴史学とイスラム地域研究を専攻されている学者さんです。

以下、カバー裏の紹介文より引用。

ペレストロイカは経済問題とともに民族問題の爆発を惹き起こした。十六世紀から膨張を重ね、社会主義政権に受け継がれたソビエト・ロシアはユーラシア大陸の巨大な版図に数多くの民族と宗教をもつが、いまそのヨーロッパ的世界とアジア的世界に亀裂が生じているのである。本書は進行しつつある現在時と歴史的時間をクロスさせ、ロシア史とイスラム史のフロンティアに存在する隠れた構造を剔抉する、歴史学の野心的試みである。

振っておきながら、この本は絶版です。でも非常に面白い本ですので、興味を持たれた方は、ぜひ頑張って入手してください。

ソビエト・ロシアの教条的歴史観によると、16世紀にカザン・ハン国やアストラハン・ハン国を破り、野蛮なる「タタールのくびき」からロシアは逃れたことになってますが、それは一種のウソだとこの本は述べています。つまり、それまではロシア人とイスラム系諸民族の間で、ステップ政治経済圏もしくはスラブ=トルコ政治経済圏と呼ぶべき共存関係が成立していたと著者は書いています。

10世紀にロシアの地を旅したイスラム教徒は、その見聞記に「ルース(=ロシア人)は『さまよい歩く野生ロバ』のように不潔で野蛮」と書き残しています。イスラム系の人たちの方が文化レベルが高く、ルースは教えを請う立場でした。実際、ロシア語の単語の中には、トルコ語やペルシャ語、アラビア語から借用した言葉が含まれているとか。また、「タタールのくびき」からロシアを解放したとされる(実際には純粋な侵略行為)イワン雷帝 [wikipedia.org] が「白いハーン」を名乗った点も見逃せません。ハーン=汗でイスラム教国の君主の称号。白は、トルコ=モンゴルの世界観で西方を象徴する色だったそうです。

そして16世紀以降、それまでロシア人と対等だったイスラム系諸民族は、徐々にロシア帝国の支配下に入るわけですが、また長くなるので、この本の目次だけ紹介します。

  • 序章 輪郭 ─ 白いハーン(Albus Imperator)
  • 第一章 接触 ─ スラブ=トルコ政治文化圏
  • 第二章 征服 ─ 民族国家から他民族国家へ
  • 第三章 正当化 ─ トルストイとカフカースの英雄
  • 第四章 支配 ─ 新井白石と西徳二郎の見た中央アジア
  • 第五章 軋轢 ─ ムスリマ・シンドローム
  • 第六章 記憶回復 ─ スルタンガリエフの復権
  • 第七章 自己主張 ─ フラトリサイド(兄弟殺し)
  • 終章 代償 ─ ゴルバチョフと新ユーラシア国家

最後に、ロシア人とイスラム系諸民族との歴史的関係を端的に言い表した箇所を引用します。ペレストロイカからソ連崩壊を経てもなお、イスラム地域が今でもくすぶっている理由がよく分かります。

これ(=古典的な植民地型の従属関係)とは対照的にソ連のムスリム系諸民族は、征服された後にたとえロシア人の「長兄」が優れていることを無理やりに認めさせられたときでさえ、文化や政治の面で劣っていると感じたことはまずない。ロシア革命前のタタール人の歴史家アヤズ・イスハーキーはその公理を一言でまとめている。「かつてわれわれの奴隷だった者たちの奴隷に一体どうしてなったのだろうか?」

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