Pravdaの日記: 失敗は予測できる?
中尾政之『失敗は予測できる』(光文社新書)より。著者は、日立金属(株)を経て、現在は東大大学院の教授で失敗学会 [shippai.org] の副会長。自称“失敗学の伝道師”。以下、カバー裏の紹介文より引用。
人間、生きている限り、自分の周りに失敗はツキモノである。(中略)しかし、ある失敗は別の場所で起きた失敗と何らかの類似性がある。本書は、過去に起きた豊富な失敗例を挙げながら、類似性に気づきさえすれば失敗は予測できることを示す。また、失敗を予測するだけでなく、失敗を回避する方法、もし失敗してしまったときの対処法なども考える。
さらに、昨今の日本社会の急激な変化に伴い、今まであまり公にされることがなかった、企画・開発時に起きる「隠れた失敗」にも目を向ける。
このあたりの読みの浅さが、おいらの限界なのかもしれませんが、結局「重大事故のほとんどは類似災害であり、『失敗のシナリオ』としてグループ化すると決して偶然でないことが分かる」という言葉に尽きていると思います。
つまり、個々の失敗事例を抽象化した「失敗のシナリオ」を覚えておけば、似たような状況になった時に連想が働いて失敗は予測できる、という論法ですね。また、個々の課題を抽象化した「一般的な課題」を頭の中に描き、それを解決する「一般的な解」を持っていれば、イザという際に具象化して失敗は回避できる、とのこと。
どこかで聞いた発想だなと考えてみると、KJ法 [wikipedia.org] に似てますね。例の、カードにデータを記述し、それをどんどん抽象化していくやり方です。しかし(半可通ですが)、抽象化されたカードを広げてグッと睨み、「これとこれは相関がある」とか「こういう仮説が成り立つ」などとヒラメキを得るのは、誰がやっても同じ結果が得られるワケじゃないですね。あ、「だからKJ法はダメだ」なんて言ってませんので念のため。
ということで、この本の指南に従っても、鋭い人はササッと失敗を予測し回避できるのでしょうが、おいらのような鈍才には荷が重いかも…。まあ、知恵が回らない分は知識量でカバー、ってのはアリかもしれません。;-)
ちなみに、この本に書いてある失敗事例は、科学技術振興機構(JST)の失敗知識データベース [jst.go.jp] で読むことができます。ためになるというか、面白いですね。「明日は我が身」ですけど。^^;
あと、企画・開発時に起きる「隠れた失敗」ですが、著者がある大手情報会社の失敗学研修で、トップ200人の高級幹部にアンケート調査を行ったところ、製品の生産・使用の不具合(下流の失敗)より、商談や企画・開発の失敗(上流の失敗)の方が多く、後者が全体の61%を占めたそうです。これを「もともと将来が予想しにくいがエイヤーッで決定してまずくなった上流の失敗」と名づけています。
ただ、サンプル数が200程度ですし、また内容も「高級幹部がそう思っているだけ」の可能性があり、真実は検証のしようが無いでしょうね。また、あとがきによると、
筆者の現在の夢は、日本にFailure Analyst(失敗アナリスト)の会社を作ることである。欧米にはそのような大会社があるが、顧客は役所やメーカーだけではない。保険会社や法律事務所が上客であることが大きな特徴である。
と書かれています。うーむ、この本を読んで、あまりアカデミックな匂いがしなかったのは、そのせいでしょうか?
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