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火星

Pravdaの日記: 初音ミク楽曲をめぐる「契約」

日記 by Pravda

初音ミクに歌わせたオリジナル曲のJASRAC登録をめぐって、あれこれネット上で騒がれていますね。

竹熊健太郎氏のブログ記事、クリプトン伊藤社長の「態度」 [cocolog-nifty.com] が、出版界と対比させて論じているのが興味深い。以下、その記事より引用。

まあ、このJASRAC問題だけではありませんけど、そもそも「契約」をめぐる考え方が、ドワンゴとクリプトンで根底から異なっているのがこの問題の「根」にあるようです。
世間一般では、ある権利者の商標を他社が使用したり、販売したりするときは、まず契約書を交わして、しかるのちに使用することが「常識」であろうかと思います。ところが俺のいる出版界では、「出版後に出版契約を交わす」のが常識になってます。会社員の友達にその話をすると、全員「そんなバカな」と言うんですけど、事実なんだからしかたがない。

たしか、中国文学者の高島俊男先生もエッセイ『お言葉ですが…』に書いていたと思いますが、出版界は口約束の世界で、「こういう内容をいつまでに原稿用紙ン枚」と出版社から依頼が来るだけ。お金の話は基本的にナシ。出版社は見積りをとらないし、また作者側はギャラが振り込まれても領収書を出さないという、普通のビジネスとは相当違った慣行があるようです。まあ、高島先生は中国文学の道に入るまで、数年間の銀行勤めの経験があるため、ことさら「変だよね」という感覚があるのかも。

他の業界ではどうしているかというと、個人的に知っている限りでは映画の世界で、日本映画監督協会 [dgj.or.jp] や日本映画撮影監督協会 [jsc.or.jp] (後者はいわゆる映画キャメラマンの職能団体)では、協会員に「標準契約書」を配布し、なるべくその契約書に沿って契約を結ぶよう働きかけているそうです。標準契約書のメリットは協会員と映画会社=プロデューサー両方にあります。

  • 映画監督や映画キャメラマンが主張できる全ての項目が網羅されているので、契約漏れによる取りっぱぐれを防げる。
  • プロデューサーとしては「いつからいつまでの拘束期間でン百万、あとは標準契約書の通りで」などと、交渉が楽になる。

当たるか当たらないか判らない映画で、いちいちテレビ放映時やDVD化の際のギャラの取り分の細目まで決めるのは面倒なのですね。

以下、岡本薫『著作権の考え方』(岩波新書)より引用。

このように、「業界の慣行」に頼ってきた契約システムが「多様化」の中で機能不全を起こしているにもかかわらず、「一億総クリエーター、一億総ユーザー」の時代に機能する契約システムの構築が、日本では遅れている。このために、既に述べたような「法律直接適用」という状況も多くなってしまっているわけだ。このような状況の中で、一部の人は「コンテンツの利用についても契約書が必要だ」ということに気づき、契約書を書こうとし始めた。しかし、個々のケースについて契約の素人がそれぞれ契約書を作るというのは、再び「アパート」にたとえて言うと、「契約の素人であるすべての大家さんとすべての借り手が、契約するたびに膝を突き合わせて一条一条契約書を書いている」という状況だ。素人がそんなことをいちいちしなくてもいいように、アパートの場合には不動産屋に「スタンダードな契約書」がある。そうした、素人が契約するときに頼れる「スタンダードな契約書式」といったものの開発・普及が急務なのである。

この著者の岡本薫氏は文化庁のお役人ですが、実現可能かどうかは別として、言われていることはマットウだと思います。

初音ミクに歌わせたオリジナル曲をめぐっての問題は、契約の面もありますけど、それまで二次使用三次使用に対し著作権者が何も言わない(権利を行使しない)前提で盛り上がっていたものが今後どうなるか、という面からも個人的には興味深い出来事です。

オリジナル曲の著作権者の方には、クリエイティブ・コモンズのライセンスを宣言した方もいらっしゃいますね。文化庁でも「自由利用マーク」 [bunka.go.jp] を定めていますが、こちらは動画や音楽に付けられませんし、また改変不可のみの場合のようです。

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