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Pravdaの日記: 1997年−世界を変えた金融危機

日記 by Pravda

竹森俊平『1997年−世界を変えた金融危機』(朝日新書)より。著者は慶應大学の経済学部教授。以下、カバー裏の概要から引用。

アジア通貨危機が世界を襲い、日本の大手金融機関がバタバタと倒れた1997年。
金融危機が深化したこの年を境に、世界のマネーの流れが大きく変わった。「不確実性」に支配された市場をどうコントロールするか──。1997年の動きを検証し、次なる「危機」への処方箋を探る。

1997年というと、国内では北海道拓殖銀行や山一證券が倒産し、国外ではタイ通貨危機が引き金となりインドネシア、マレーシア、フィリピン、韓国に混乱が飛び火した年。この本の第1章では、その発生と派生のメカニズムを解説しています。

第2章は、どちらかというと経済理論について書いてあり、近ごろ時々見かける「ナイトの不確実性」に関する説明があります。この理論の提唱者のフランク・ナイト [wikipedia.org] は、シカゴ大学経済学部で45年間教鞭をとった篤実な経済学者だったそうですが、「完全競争の下でなぜ利潤が生まれるのか?」を考え、企業家が直面する、将来外れるかも知れない予測を以下の2タイプに分けたそうです。

  1. 確率分布が予想できる「リスク」
  2. 確率分布が予想できない「不確実性」

このうち、1.の「リスク」の方は、例えば交通事故で保険ビジネスが成り立つように、保険金を支払えば回避できる種類のものでその保険金はコストの一部と見なす事ができる、従って利潤を生むのは2.の「不確実性」のみ、というのがフランク・ナイトの結論だそうです。

では、社会の平均的利潤はどうなるかというと、ナイト先生の直感によれば、企業家は失敗する傾向があり、従って平均的には利潤はマイナスで、企業家は社会的な純価値を創造するより破壊する傾向がある、それが目立たないのは「不確実性」を引き受ける以外に企業家が自分の資産や労働時間を投入しているから、なのだそうです。

わはははは(爆笑)。シカゴ学派 [wikipedia.org] という「経済自由主義」の本丸みたいな所で、一派の重鎮がこんな、自分たちの足元をすくいかねないようなことを言うかねえ(笑)。実際、教え子で後にノーベル経済学賞を受賞する、ミルトン・フリードマン [wikipedia.org] あたりから異端視されたそうですけど。

またこの本の著者は、アメリカの経常収支赤字を止めさせ、収支を均衡させなければならないか?、という議論に対して以下のように書いています。

しかるに、一国内の政府・中央銀行を考えてみれば、「収支制約」はまるで満たされていない。政府・日銀は「円」を発行し「財・サービス」を購入する代金としてそれを民間に渡すだけであり、発行した「円」と同額だけの「財・サービス」を後から生産して、それと交換に先に発行した「円」を吸収するという作業は行っていない。つまり政府・中央銀行とは「収支制約」を超越したところで存在する組織である。それなのに、なぜ「円」に価値があるかといえば、「バブル」が発生しているためである。つまり、自分の望む商品との交換に使用できるという「信用(バブル)」が存在することによって、「ただの紙切れ」に購買力が生じるのである。経済理論の観点からは、「不換紙幣」とは「バブル」に他ならない。

ビッグバン宇宙論ならぬビッグバン貨幣経済論といったところでしょうか。あっさり「バブルだよ」と言ってしまってるのが面白い。

この本の第3章は「これからどうなる?」という話で、「ナイトの不確実性」をもとに多角的に世界経済を論じています。元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏 [wikipedia.org] は今のところ巧みな金融政策で米国の、ひいては世界の景気を維持し続けた人物と評されていますが、その景気刺激策によってサブプライム問題が引き起こされたことで、現FRB議長のベン・バーナンキ氏 [wikipedia.org] がどのような金融政策で挑むか、注目されるところです。

経済学は全くのシロウトですが、その分野にもナイト先生のようなラディカルな人が居たのかと、なかなか楽しく読めた本でありました。

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犯人はmoriwaka -- Anonymous Coward

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