Pravdaの日記: 〔廉価DVD〕 忘れじの面影
メロドラマの巨匠、マックス・オフュルス監督作品を3作ご紹介。まず第一回目は『忘れじの面影』(1948年)。
マックス・オフュルスという監督、国別の映画史だと、どこに入れたらいいか困る人です。1930年代初頭にドイツで監督デビュー。その後、自身がユダヤ系だったためナチスの迫害を逃れ、一家でフランスに亡命し映画を制作。この時期イタリアとオランダに招聘されて1本ずつ撮っています。フランスがドイツに占領されると米国へ脱出しハリウッドで仕事。第二次大戦後しばらくして再びフランスを拠点に、と実にややこしいキャリアです。この『忘れじの面影』はハリウッド時代の作品。
1900年頃のウイーン。決闘を申し込まれた中年プレイボーイの音楽家ステファンは、その夜のうちに逃げるつもりだったが、心当たりのないリーザという女から手紙が届いていた。その手紙の内容が回想形式で語られる。リーザがまだ学校に通っていた少女時代、同じアパートに若いピアニストのステファンが引っ越してきた。一目でリーザは恋に落ち、彼がアパートで弾くピアノを聞くのが無上の喜びだった。しかし未亡人の母親が再婚することになり、リーザは自分の愛情を彼に明かすことなくリンツへ。その町で18歳になり社交界デビューした彼女は、若い将校に結婚を申し込まれるがステファンへの思いは変わらず、ウイーンに行きモデル(マヌカン)の仕事で生計をたてる。そんなある冬の日、リーザはステファンと出会い甘美な一夜を過ごす。だが彼女が同じアパートに住んでいた娘だとステファンは気づかず、いつもの行きずりの遊びだと思っている。ステファンは演奏旅行でミラノに発ち、そのまま彼女の前から姿を消す。その時すでに、リーザはステファンの子を宿していた…。
リーザの役はジョーン・フォンテイン。アルフレッド・ヒッチコック監督『レベッカ』(1940年)の主演も見事でしたが、こういうメロドラマも良いですね。この作品では視線の演技が秀逸。まあ、オフュルス監督の芝居のつけ方もあると思いますが。ステファンに扮するルイ・ジュールダンは、美男の新進ピアニストの溌剌さ、成功の頂点での輝き、そして才能が枯れ堕落した姿をロマンチックに演じ分けています。ステファンの執事で唖者のジョンの役はアート・スミス。地味ながら上手い役者さんです。
マックス・オフュルス監督というと、まず「流麗なカメラワーク」があげられ、豪華なドレスで着飾った貴婦人がワルツを踊るシーンを横移動と横パンで撮らせたら天下一品。それと同時に、階段を撮るのが大変うまい人でもあります。シーンの中で階段を効果的に使う演出家としてウィリアム・ワイラーが「階段監督」などと呼ばれていますが、マックス・オフュルスや、前のエントリ [srad.jp] で触れたダグラス・サーク監督も実に巧み。階段はアングルや照明が難しいので、カメラマンの腕の見せどころの一つでもあり、撮影のフランツ・プラナーは、ヴィリ・フォルスト監督の 『未完成交響楽』(1933年) [srad.jp] や 『たそがれの維納(ウイーン)』(1934年) [srad.jp] のカメラマンでもあります。奥さんがユダヤ系だったため一家でハリウッドへ逃げてきた点は、ダグラス・サーク監督と同じ。
中条省平『フランス映画史の誘惑』(集英社新書、2003年)の中に、マックス・オフュルスについての一節があり、「フランス的優雅と洗練において天才」と評していますが、オフュルス監督の優雅で洗練されたスタイルは、戦前のオーストリア映画の小粋さやエレガンスもベースになっているのかもしれません。
以下、DVD裏のデータより。
■ CAST
ジョーン・フォンテイン
ルイ・ジュールダン
アート・スミス
マディ・クリスチャンス
マルセル・ジュルネ■ STAFF
監督:マックス・オフュルス
製作:ジョン・ハウスマン
原作:ステファン・ツヴァイク
脚本:ハワード・コッチ公開年度:1948年
字幕スーパー、日本語字幕のみ
87min.
モノクロ
発売元:(株)ファーストトレーディング
購入価格:約500円 in Amazon.co.jp
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