Pravdaの日記: 〔DVD〕 関の彌太ッペ
そろそろ日本映画も、ということで山下耕作監督の作品より二つ。第一回目は『関の彌太ッペ』(1963年)。ついに東映ビデオより発売。原作は長谷川伸の同名戯曲。股旅もの。
若くてイナセな旅がらすの関の彌太ッぺは、十年前に両親と死に別れ、祭りの晩にはぐれた当時八つの妹お糸を探していた。お糸のためにと貯めた五十両の大金を肌身離さず持っている。そんな道中、川に落ちた幼い娘お小夜を助けるが、その父親の和吉に五十両を盗まれる。和吉は別件で十両の金を盗んでおり、その後を追っていた箱田の森介に斬られ、和吉は居合わせた彌太ッぺにお小夜を澤井屋という旅籠に連れて行くよう頼んで息をひきとる。やむを得ずお小夜を澤井屋に預けた彌太ッぺは賭場で箱田の森介を見つけ、森介があっさり五十両を返すのに感心して兄弟分の契りを結び、五両を森介にやり、残りの四十五両をお小夜の養育費として黙って澤井屋に置いて行く。いっぽう澤井屋では、お小夜の話から主人一家の孫娘および姪に間違いないことが判って驚喜し、お小夜を届けた渡世人に感謝するが、名前さえ聞いていない。
それから十年。妹お糸の死を聞いた彌太ッぺはすさみ果てて顔に刀傷のある凄惨な姿で、ヤクザ同士の喧嘩の助っ人稼業をしている。そんなある日、喧嘩で田毎の才兵衛の命を救った彌太ッぺと箱田の森介は、澤井屋がお小夜の恩人を探している話を才兵衛から聞く。その話を聞いた森介は、最初は金が目当てで「自分がお小夜の恩人」と澤井屋に名乗り出るが、美しく成長したお小夜を見て心を奪われ、なんとしてでもお小夜と一緒になろうとする…。
主役の関の彌太ッぺは中村錦之助(後の萬屋錦之介)。前半の颯爽とした姿、後半のすさんだ姿、どちらも絵になります。16min.頃のセリフ、
悲しいこと、辛いことがたくさんある。だが忘れるこった。忘れて日が暮れりゃあ、あしたになる。
(空を見上げて)ああ、あしたも天気か。
は名調子。芝居だけでなく発声も良いんですね。怒鳴っても声が割れません。箱田の森介に扮するのが木村功。このストーリー、箱田の森介のキャラがかなり重要で、お小夜を見てふと魔がさしてしまう難しい役どころを好演。37min.頃から約3分間、女郎が彌太ッぺに妹お糸の最期を語って聞かせる長回しのシーンがありますが、その女郎に扮するのが岩崎加根子。さすがは俳優座の新劇女優さん、お見事です。美しい娘お小夜の役は十朱幸代。セリフの無いうちはなにやら(失礼ながら)鈍重な印象なのですが、セリフが入ると俄然良くなります。まあ、山下耕作監督の計算ずくの演出かもしれませんけど。
山下耕作演出の特徴の「花」は、この映画でも出てきます。33min.頃の、彌太ッぺがムクゲ(槿)の花を一輪添えて四十五両の金を黙って置いていくシーンは抒情的で、また82min.あたりの、彌太ッぺとお小夜が槿の花をはさんで話をするシーンは約2分の長回しのショットがあり、情感あふれる美しさ。そして、ラストの道ばたに咲く彼岸花。
股旅ものの傑作。加藤泰監督の 『瞼の母』(1962年) [srad.jp] や 『沓掛時次郎 遊侠一匹』(1966年) [srad.jp] と比べても遜色がないと思います。
以下、DVD裏のデータより。
■ CAST
中村錦之助
十朱幸代
岩崎加根子
鳳八千代
沢村宗之助
武内亨
砂塚秀夫
遠藤辰雄
坂本武
夏川静江
木村功
安部徹
大坂志郎
月形龍之介■ STAFF
企画:小川貴也/翁長孝雄
原作:長谷川伸
脚本:成沢昌茂
撮影:古谷伸
録音:野澤裕男
照明:井上孝二
美術:桂長四郎
編集:宮本信太郎
音楽:木下忠司
監督:山下耕作公開:1963年
日本語(モノラル)
89min.
カラー
販売:東映株式会社
発売:東映ビデオ株式会社
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