Pravdaの日記: 〔DVD〕 ふたり 2
役者がマズくても工夫次第の映画、ということで、ロバート・ワイズ監督『ふたり』(1972年)。ラブロマンス(ヌードシーンあり)。
モロッコの古都マラケシュ、アメリカに戻ろうとしている青年エバンは、撮影で来ていたモデルのディアドラと知り合う。経由地のパリに一緒に向かう途中、エバンは自分がベトナム脱走兵で、逃亡生活に疲れ果て、軍事裁判にかけられるのを承知で帰還する身であることを彼女に打ち明ける。一方ディアドラは、華やかなモデル業の裏で孤独感を抱いていた。そして二人は惹かれ合う…。
脱走兵エバンの役はピーター・フォンダ。お世辞にも演技がうまいとは言えないんですよね。『イージー・ライダー』(1969年)でも、ジャック・ニコルソンと比べちゃ可哀想ですが、棒立ちでしょこの人。モデルのディアドラの役はリンゼイ・ワグナー。TVシリーズ『地上最強の美女バイオニック・ジェミー』より前。さて、どうするか?
監督のロバート・ワイズは、SFでもスリラーでもミュージカルでも何でも来いの器用な人ですけど、監督になる前はハリウッドのRKO社で編集を勤め、『市民ケーン』(1941年)でアカデミー編集賞にノミネートされたキャリアの持ち主。「映画は編集だ」と黒澤明が言ったそうですが、編集から逆算して各シーンの演出を考え撮影できるのは強みですね。まあ、ハリウッド映画では監督に編集権が無い場合が多いので、日本やヨーロッパの方が良く当てはまる話かもしれませんけど。
撮影のアンリ・ドカエはフランス人ですが、ヌーベルバーグ初期の諸作品を撮ったカメラマンとしても有名。『死刑台のエレベーター』(1957年)など。ヌーベルバーグ映画の多くは低予算のため、ギャラの高い俳優を使えなかったので、悪く言えば「ごまかし」のテクニックを熟知している人。もっとも、この映画でアンリ・ドカエが撮ったのはパリのパートだけだと思いますが。
テクニックその1.なるべく写さない
この作品、やたらと風景のショットが多く出てきます。ピーター・フォンダが姿を現すのは映画が始まってから7分後。また、リンゼイ・ワグナーとのツーショットも遠景で撮られている構図が散見されます。
テクニックその2.ショットは短く
長く回すショットで芝居がもたないのなら、短く刻めばいいという発想ですね。途中に風景ショットをはさむことで、本来1つのショットを2つに分けることもできます。
テクニックその3.しゃべらせない
セリフを言いながら動くのが難しければ、動きに専念させればよく、映画にはナレーションという便利なものがあります。この映画でも23min.頃、リンゼイ・ワグナーの身の上話はナレーションで、画面はサボテンの実(?)を二人で食べているシーンです。
テクニックその4.他の動作をさせる
ハンフリー・ボガートとの共演で知られ、実生活でも妻だったローレン・バコールは、演技の中でやたらタバコを吹かしているので有名(?)ですが、そうしないと芝居がもたなかったからのようです。この映画でも、二人はやたらと歩きながら話をしています。
…と、エラソーなことを書きましたが、このあたりのテクニックは1940年代のハリウッドB級ノワールや、現代ではテオ・アンゲロプロス監督やアキ・カウリスマキ監督の作品にも見ることができます。俳優の演技の上手さ(下手さ)は映画の構成要素の一つで、作品そのものの値打ちとは論ずるレベルが少し違うような気がします。
以下、DVD裏のデータより。
■ CAST
ピーター・フォンダ
リンゼイ・ワグナー
エステル・パーソンズ
アラン・ファッジ
フィリップ・マーチ
フランシス・スターンハーゲン
ブライアン・リマ
ジェフリー・ホーン■ STAFF
製作・監督:ロバート・ワイズ
脚本:リチャード・デ・ロイ
撮影:アンリ・ドカエ/ジェラルド・ハーシュフェルド
音楽:デヴィッド・シャイア製作年度:1972年
字幕スーパー、日本語字幕のみ
101min.
カラー
発売・発売:キングレコード
目鱗 (スコア:1)
という大根四原則を駆使しても、よい映画を撮る事は可能と。
// 思えば昨今の特撮映画だと、役者さんが添え物状態ぽいので
// 大根四原則が堅持されているような気が ……
Re:目鱗 (スコア:1)
まあ、どんな実績ある俳優でもカメラ・リハーサル必須で、結果が不満ならバンバン落とすなんて贅沢ができたのは、イギリスのデヴィッド・リーン監督ぐらいではないか?、と思っていたりするのですけど。
逆に俳優の側からすると、デヴィッド・リーン監督の作品に出られること自体がステータスで、ギャラやスケジュールの話は二の次と、ある意味「正のスパイラル」が働いた稀有な例です。
映画百年の歴史の中で、こういう正のスパイラルは珍しいんじゃないでしょうか。旧共産圏でも、ギャラの代わりに政治力とかコネとか色々あったみたいですし。古今東西、ほぼ100%の映画監督はキャスティングに妥協を強いられてきましたし、今後もその傾向が進むことはあっても、まず逆行することはないだろうと考えています。
その点、アニメーションは俳優の問題がありませんので、このまま劇映画が衰退しないかと少し心配です。;-)