Pravdaの日記: 〔DVD〕 愛の奴隷
才気あふれる若い映画監督が昇り調子で撮った作品は、観ていて気持ち良いものです。ということで、もう30年前になりますが、ニキータ・ミハルコフ監督の初期作品より3つ。どれもエレーナ・ソロヴェイという女優さんが出演しているので、「ソロヴェイ三部作」とも呼ばれているそうです。第一回目は『愛の奴隷』(1976年)。
1918年の夏も終わろうとしているロシア革命混乱期、赤軍と白軍の国内戦が本格化しようとする状況の下、サイレント映画のスター女優オリガと製作スタッフたちは南部の黒海沿岸の町で次作を撮影中。しかしモスクワからフィルムも届かず共演するスター男優も到着せず、リハーサルばかりで一同ダレ気味。そのうち、女優オリガはカメラマンのポトツキーと親密な仲になるが、彼は共産党の地下党員であることを彼女に打ち明ける。一方、その町の白軍憲兵隊は、共産党員の摘発と処刑に血眼になっていた…。
女優オリガに扮するのがエレーナ・ソロヴェイ。贅沢が好き、チヤホヤされるのが好き、いい男が好きと、まるっきり思想性に欠けた映画スターの役どころ。白軍の残虐行為を隠し撮りしたフィルムの秘密上映会に誘われても「何を着て行こうかしら?」と考える無邪気なヒロイン。しかし愛を貫こうとしたがための悲劇。そういう意味ではメロドラマでしょうか。初期のミハルコフ作品は、押し付けがましい政治的メッセージが全然ありません。
南ロシアのまぶしい陽光と風景が抒情的に美しく描かれています。映画プロデューサーの役はオレーグ・バシラシヴィリ、監督に扮するのがアレクサンドル・カリャーギンで、どちらも上手いですね。ニキータ・ミハルコフ自身も、カフェの主人役として少し登場します。撮影はパーヴェル・レベシェフ。ミハルコフ作品のほか、カルトSF映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986年)でもカメラマンを務めた人。難しい絵をさりげなく撮っています。
なお、史実でも、フィルム感度が悪かった1910年代、ロケ地やグラスステージの建設場所として、ヤルタやオデッサにスタジオがあったそうです。この作品は「映画製作を描く映画」ですので、サイレント期の撮影シーンを使ったクスグリもあって可笑しい。ラストの、黄色い路面電車が霧の中に消えてゆく詩情は、新進気鋭の監督ならではの演出だと思います。過去の栄光やら実績やらのシガラミがありませんので。
以下、DVD裏のデータより。
■ CAST
エレーナ・ソロヴェイ
ロジオン・ナハペトフ
アレクサンドル・カリャーギン
オレーグ・バシラシヴィリ
コンスタンチン・グリゴーリエフ■ STAFF
監督:ニキータ・ミハルコフ
脚本:フリードリフ・ゴレンシュテイン/アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー
撮影:パーヴェル・レベシェフ
美術:アレクサンドル・アダバシャン/アレクサンドル・サムレキン
音楽:エドゥアルド・アルテミエフ公開年度:1976年
字幕スーパー、日本語字幕のみ
93min.
カラー
企画・制作・発売元:株式会社アイ・ヴィ・シー
販売元:株式会社ビーム エンタテインメント
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