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SS1の日記: SRB-A:まじめな失敗?

日記 by SS1

H2A SRB-A 導爆線の経路変更は,ペンディングになっていた。

宇宙開発委員会の昨年の議事録のうち昨年第20回を除けば公開会議のはずだが,いまだにアップデートされていない。いいかげん,見るのやめていたのだが,宇宙委員会の議事録が久々にアップデートされていた。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/uchuu/gijiroku/001/04050601.htm
宇宙開発委員会 第1回特別会合議事録

ごらんのように特別会合のもの。それぞれの事故調査委員会報告を受けての,今後の指針を定めるためのものだと思うが,事故原因の究明が,不完全なまま終了していることもあり,議論の方向性は定まっていないようにみえる。

さてと。その中から,私が注目している導爆線の引き回しの是非についてのやりとりを抜粋する。

【白川委員】ガス漏れがあって導爆線が機能喪失ということだが、逆に言うと導爆線がうまく行っていればガス漏れがあったとしても大丈夫だったのか。

【大塚課長】導爆線以外にエンジンノズルを動かすアクチュエータも問題の箇所に存在しておりその部分にガスが漏れるということは想定していないこと。逆に言うと想定してはいけないほど起きてはいけないことであったということ。

【坂内委員】前回特別会合までの検討で「チェックする仕組み」というのはだいぶ議論したと思うが、その仕組みが実体化していれば今回の件は予見できたのかそれともできなかったのか知りたい。従来のやり方の実体化のレベルが一つ重要だと思うが、それを言い出すと先に進めないというところから、従来の対策も踏まえた上で「やむを得ない」という今回の結論にしたものか。

【関課長】今回の報告書(案)は技術的な面から原因を追及したもので当時の知見のベースで判断したときに「やむを得ない」ということ。

【桑原座長】報告書(案)には「いろいろ意見があったが....やむを得ない」とまとめられていた。特別会合でそこをつっこんでみようよということであればつっこんで行ってもいいのではないか。そういう声はありますよね。

【関課長】当該部分の後に「ただし書き」が2点ついている。そこに調査部会の委員の思いがあるとご理解いただきたい。

【坂内委員】現時点で100%を尽くすことはもとより不可能なことで、現段階で可能な範囲で最大限問題点を洗い出して、結果として前に進んでいるかどうか、1の事例から100の教訓を得て進んでいるかどうかが問題なのではないかと考えている。

【畑村委員】調査部会でガスが漏れたときに防ぐやり方についてもう少し冗長系があっても良かったのではないかという議論はあった。議論はあったが結果的にはその点はペンディングになったと認識している。冗長系を組むということはあるいは無駄になるかもしれないしあるいはこのまま行くともう一度ミッション達成に対する脆さを露呈するということになるかもしれない。それは設計思想まで立ち戻って考える必要がある。いわば今回の失敗は「まじめな失敗」であると評価している。今回なぜこんなにすぐに対策が出てきたのか、と国民の立場からすると思うかもしれないが、それはそういう開発をあらかじめしていたということで、結局あのくらいのところで動いているのは正しい判断ではないかという議論があったことをご紹介しておく。

【桑原座長】アクチュエータは実際に切れたのか。それで結果は左右したのか。

【大塚課長】アクチュエータは機能を喪失した。

【畑村委員】切れたものの、飛行状況、左右のエンジンのバランスからしてそのまま軌道投入できたのではないかという議論があった。

【松尾委員】冗長系がいかにあるべきだったかという点については畑村委員の言うとおりペンディング。

【桑原座長】予見はできたのだからそこで手を打っておくべきだったということはあったのではないか。

【松尾委員】懸念があったというのと、危ないと思ってみていたというのは明確な差があり、今回の件は絶対に後者ではない。

【畑村委員】こういうケースでは「この際黙っておこう」とか「うすうす感じていた」というのがあるものだが、今回の件では聞けば聞くほどそういったものはないように感じた。

最後の2点は,それだけ今回のエンジニアがバカばかりだったということを示しているのだろうか。このように根拠も無く擁護発言が出るところから見ても,導爆線問題は,責任論との兼ね合いで議論の俎上に上げることに失敗した感がある。

冗長系とロバスト性の向上は,微妙に意味合いが異なる。FMEAでわかるように,変更案の検討と,そのRPN評価くらい,簡単にできるだろうに,なぜやらなかったのだろうか。だが,この議論では,不用意に使った冗長系という言葉尻をとらえられ,ごまかされている感じだ。

だいたい「想定してはいけないほど起きてはいけないことであった」と大塚課長は言うが,そのリスクも想定できなければ,信頼性の向上はありえない。トラックのハブの破損のように,「想定してはいけないほど起きてはいけないこと」を隠蔽するメーカーだってあるのだ。今だって,隠蔽された事故原因がないと,畑村委員は断言できるのだろうか。

事前のノズル改良ができなかったことが,「やむを得ない」のであれば,それこそノズル周りの(欠陥検出可能性の低い)高リスク部をはずして,導爆線を引き回すべきだった。そもそも考えるべきは,今回のような欠陥が事前に発見されるために,あるいはされなくても,ミッション成功率を上げるには,どのようなアプローチが必要なのか検討すべきなのである。

SRB-A設計者にとっては,H2Aが道連れになる設計のほうが,失敗時の改良予算も取りやすく,今現在も,そのメリットを享受している。これじゃ,「まじめな改良」なんて考えらんないんじゃないか?

で,結局はペンディングだ。分離シーケンスは,そのクリティカル性を事故前から指摘されてたんだから,結論がペンディングじゃ,お話にならんだろう,と私は思う。

                                (つづく)
#ところで。「今回の報告書(案)」ってナニ?

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