パスワードを忘れた? アカウント作成
42026 journal

SS1の日記: 耳鼻咽喉科医とレントゲン 3

日記 by SS1

去年の話だけど,わたしのハハが小骨をノドに指して入院した。その話。
ともかく,えらい騒ぎだったらしい。ハハいわく「死にかけた」とのこと。

はじめは,まあ,ありがちなことだけども,夕食時にキンメダイの煮付けを食べてて,ノドに骨が刺さったんだそうな。でもって,ありがちな民間療法だけども「ご飯を丸めて飲み込む」とかしたらしい。それが,逆効果だったわけだが。

翌朝。ふつうなら2~3時間ほどで引くのどの痛みは,夜中になってもつづき,ノドの腫れもひどくなり,お茶を飲むだけでも苦しい状態になった。で,早々に近所の病院へ。元々は教職員組合系の大きな総合病院である。

レントゲン撮影などをして,耳鼻咽喉科での診察。医師が口腔から覗き込んだ範囲では腫れは確認できたが,小骨は見えなかったようだ。それもそのはずである。じつはそのとき,小骨は咽喉を貫通して,ちょうどノドボトケの裏側の奥のほうの筋肉につかまっていたのである。だもんで,医者からは見えない。

で,レントゲンである。レントゲン写真というのは,素人が見ると骨しか写っていない様に思えるのだが,医師の目で見れば,それ以外にもいろいろ写っているらしい。たとえば,人体内部の炎症などもはっきりと写る。だから,肺炎の人をレントゲン撮影すると肺がマッシロに写る。とか,お医者さんはいうわけだが素人にはさっぱりわからない。

さて。診察した医師は耳鼻咽喉科である。まあ,なんとなく察することが出来るとおもうのだが,耳鼻咽喉科ってのはあまりレントゲンを使わない。だから見慣れてないのだね。レントゲンを。

でもって。くだんの医師はレントゲンをみて当該箇所の炎症は確認したらしい。じつは,小骨も写っていた。診察室でレントゲンを見ていた医師は,当該箇所を指でつつきながら,こういったそうな,

「ん~~。 ・・・・・・でも,これはちがうだろ」

前にも言ったように,耳鼻咽喉科医はレントゲンをあまり見慣れていない。そのため,目視の診察結果を優先したわけである。というわけで,同医師は小骨はもう取れてる。と診断。でもって,抗生剤,鎮痛剤,胃薬などを処方される。

さて。大変なのは,患者である。診察時にはすでに喋るのがつらくなっており,それで「ぼけ老人とおもわれたんじゃないか」と後にグチる状態。それから午後にはお茶などの流動物の摂取も困難になり,夜は呼吸すらも痛みの原因になり,眠れず。

でもって,朝一であらためて同病院へ,つきそいのチチが再診を強く要求。ここからがすごかったらしい。診察室で待たされながら,カーテン一枚となりの・・・ なんていうんだろう,ミーティングルームから,すごい剣幕で怒鳴りあう声が聞こえたのだそうな。
「なんで,昨日そのまま返したんだ!」
「こんなにはっきり写っているんだから,見間違うはず無いじゃないか!」
「きちんと写っているだろう! すぐわかると思ったよ!」
などなど・・・

でもって,別の先生が出てきて,誤診の説明。それから,即刻,緊急入院の上,紹介状&手術予約着きで耳鼻咽喉外科のある某病院へ転院。でもって手術と相成りました。

その辺の外科じゃダメなの? と思ったのだが,診察に付き合ったチチ曰く「咽喉の回りは専門性が強すぎて耳鼻咽喉科じゃなきゃ出来ない」のだとか。まあ,たしかに。首の周りは頚動脈を筆頭にヤバイパーツだらけだもんね。場所的に挿管もできないし。

でまあ,その手術も大変だったらしい。術後の説明をする転院先の耳鼻咽喉外科医は,ニッカニッカ笑いながら,「いや~~。もう大変だった。小骨見つからなくて」と説明してくれたらしい。先ほど説明したようにレントゲンにははっきり写っていたので部位も確定しているし,担当した外科医は割と簡単に見つかると思っていたらしい。ノドボトケの脇を切開して食道を開き覗き込んだら,無い。この時点でかなり焦ったとか。それから,あちこち探し回ったあげく食道の裏をみたら(触診したら),食道の筋肉を貫通していた小骨を発見した。とのこと。

この「ノドに刺さった小骨が食道を貫通する」というのは,とても珍しい症例でもあるらしい。くだんの外科医の説明では,通常は小骨が刺さっても,周囲の筋肉に押し出されていつの間にか取れてしまうもので,貫通することは滅多に無いそうな。というのも魚の小骨にはテーパーがついていて,それが押し戻すように働くからなのだとか。ところが,今回のキンメダイの煮付けの小骨の場合,刺さったのが小骨の先側ではなく関節側で,そこが,剣先のように鋭くとがっていたため,そこから突き刺さり,逆テーパーがついていることで,より深く食道の筋肉に押し込まれていったのではないかとの所見であった。

また,同医師曰く「とても興味深い症例だったので論文をかくつもりだ」そうである。さて,どこに投稿したのかはわからないけれど,そろそろ出版されていてもいい時期ではないかと思う。だれか,読んだ人いらっしゃいませんかね? 知ってたら教えてください。

ともあれ。耳鼻咽喉科の日常業務とER的な緊急医療での診断対象には隔たりが大きく,そこで誤診が起きるのは,仕方のないところなのだけど。誤診されると患者は死にかけるわけでもあるし。なにかいい方法はないかなぁと思わないでもない。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 先月、同級生が耳鼻咽喉科の診療所を開設したのだが、その診療所ではGEのCTをも導入している。
    開設前まで大学病院で助手をしてた際、咽頭癌手術後の再生手術とかをメインに研究していたらしく、レントゲンやCTはしょっちゅう使っていたようで、CTの導入は絶対にやりたかったようだった。
    耳鼻咽頭科も耳、鼻が専門なのか、喉が専門なのか、そして専門分野でスタンスとかが違うのかなぁと。
    何分、3箇所一緒にされている分、その専門医だからといっても、慣れていない部分や手法、知識、ノウハウとかがあるのかなと思ったりも。

    先日、(高齢の)知人の弟さんが顎が外れたとかで整形外科に診てもらったら、それがぜんぜん判らず、数ヶ月経過観察の状態にされて、長い期間外れたままでかなり状態が悪くなり、歯科医の看板が目立つけど、
    口腔外科もできる所で診てもらったら、「ここまで(状態が悪くなって)くれば、大学病院で…」と紹介状を出されたとか。
    整形外科医と言っても、顎周りとかに関しては、口腔外科医で見てもらった方が確実だとか。
    専門医といっても、その診療科目の専門医としてみるのではなく、その診療科目の中で特定の診療に関しては専門医なんだろうな…と、思った方がいい様です。

    プログラマー的に言えば、オフコンが専門分野だけど、その中でも専門的に判ってるのは富士通だよ…みたいな感じかな。

    --

    /* Kachou Utumi
    I'm Not Rich... */
  • by Anonymous Coward on 2008年12月04日 22時56分 (#1467713)
     最初に同業の不手際をお詫びいたします。(小生、耳鼻咽喉科医です。)いくつか誤解があるようなので、コメントいたします。
     まず「耳鼻咽喉外科」なる診療科は存在しません。転院先も耳鼻咽喉科だったはずです。もちろん今回のような特殊な手術を専門とする耳鼻咽喉科医と他の分野を専門とする耳鼻咽喉科医はそれぞれ存在します。
     また耳鼻咽喉科医がレントゲンを見慣れていないというのも誤解です。耳や鼻のレントゲンは毎日診ています。喉のレントゲンは耳や鼻に比べると診る機会は少ないですが、一番多く診ているのは耳鼻咽喉科医でしょう。
    • by Anonymous Coward
      まず、医者の不勉強から、標榜科目について、もう一度勉強しなおさなくてはなりません。
      他にも、禁煙外来を「呼吸器内科 [twmu.ac.jp] 禁煙外来」などと言っているところもあります。親コメントを責めているわけではありません。
      万事、客商売だということを忘れていることが多いということが多かったと言いたかっただけです。
typodupeerror

日々是ハック也 -- あるハードコアバイナリアン

読み込み中...