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SS1の日記: 月へ行く途中でUターンできる軌道なんて,そんな都合のいい・・・ あった。 6

日記 by SS1

こないだのシンポジウム論文集(*1)を読んでて気がついた。清水順一郎という元JAXA筑波センター長(ようするに,ISSミッションの親玉)の論文なんだけど,月と地球の間に宇宙ステーションを作るならL1点がイイ。という話。L1ってのはいわゆるラグランジュ点の月と地球の中間(重力ポテンシャル的)にあるやつ。

これがアポロミッションだと,8の字軌道の交差するあたりにあるのがL1点。そんな月往還ロケットがビュンビュン飛び交ってそうな場所のどこがいいのか・・・ と思ったんだけども,丸2日ほど経ってから気がついた。よく考えてみると,月や地球の周回軌道(LLO,LEO)から,L1点目指して飛ぶと,ちょうどL1点に着いたところで静止する。そういう飛行ルートが設定可能なのね。どちらからでも。

で,L1点のメリットは,というと,そこから月に向かうにしても地球に向かうにしても増速量としてみてペナルティが無いこと。つまり,L1点に立ち寄っても燃料的なペナルティがない。

つーことわだ。月往還軌道をL1点に立ち寄る(停滞する)ルートに設定しておくと,仮にそこでUターンしても,エネルギー的なペナルティは無い。ということになるのだね。当然,L1点で方向転換して逆周りで帰るのもアリになる。はず。

うげげげげげ・・・・ こんなの本当にアリなんですか?

前回コメントのtarosukeさんの強烈なアイディアにもまいったんだけど。こっちの事実にもまいった。

*1 清水順一郎,2009.3.30, pp.208-9, 高等研報告書 0804 『宇宙問題への人文・社会科学からのアプローチ』,ISBN978-4-906671-66-3,JAXA/IIAS

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  •  アポロ13号事故のような特殊なケースを除けば、「Uターンするかも」ということ自体あんまりないでしょうし、行程でよけいな時間がかかる分だけ不利な気がします。ほとんどずっと日照を得られるという点はあるので、L1に恒久的に何かを置くならメリットかも。

    前回コメントのtarosukeさんの強烈なアイディア

     あれから計算してみたのですが、西向きだと(対地での)大気圏突入速度が東向きより上がるので、空力加熱15~20%ほどアップしそうです。赤道付近がワーストケースですが、緯度が少し上がってもそれほど改善しないんじゃないかと思います。

    • そのあたり。定量的に検討されたデータが無いので苦しいところではあります。

      ポイントとしては,LEOにベースキャンプを置く場合では,そこから月往還軌道に行くなら最適な軌道傾斜角が射点ごとに個別にあり,その分だけ寄り道になること。月の周回軌道(LLO)だと,かぐやの報告にもあるように外乱が大きくて無人機でも1年が(滞留の)限度ということ。L1がそれに対してどれだけメリットがあるのか・・・ というのは白紙であります。

      アポロ13号事故のような特殊なケースを除けば

      アポロ計画は全部で17号くらいまでで。有人機だけでみれば10回とちょっと。そのうちの一回ですから13号は「特殊なケース」とは呼べないと思います。

      あれから計算してみたのですが、西向きだと(対地での)大気圏突入速度が東向きより上がるので、空力加熱15~20%ほどアップしそうです。赤道付近がワーストケースですが、緯度が少し上がってもそれほど改善しないんじゃないかと思います。

      あーー。やっぱきつそうですね。個人的には「首都高でバイク通勤する」という経験があると,受け入れ可能なリスクなんですが(笑)。 どっちかっつうと,無人の月ミッションで活躍しそうなフライトシーケンスではある。と思います。デブリがらみについてはISSの近況報告とか見てると,LEOでもガクブルだし。

      --
      斜点是不是先進的先端的鉄道部長的…有信心
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  • 単にペナルティがないだけで...あるか。
    人間用と貨物用(例えばイオンエンジンでのんびり)を分けて、貨物用を使ってL1に物資を置いとけば全部人間用で運ぶよりは安くなるか。
    # 無人だと無意味だけど、有人だと時間=質量だからね。

    • 単にペナルティがないだけで...あるか。

      うーむ。贅沢なヤツ。タダでUターンできるんだから,それだけで感謝しなさい。

      こないだの月帰還軌道の話に戻すと,L1で滞留することで帰還軌道の自由度が上がるってのがあって,これが一番目のメリット。2番目がそのtarosukeさんのいう貨物船で作った,撤退も可能な位置のL1キャンプの設営。

      あれから,つらつらアポロとアレスVの情報を調べてみると,月着陸船ってのはLEO上で100トン程度のペイロードになるみたい。てことは,日本だとH2Aを10本くらい束ねたクラスターロケットが必要になる。でまあ,こないだのシンポジウムで土井宇宙飛行士が有人用にはH2Aの10倍の信頼性が欲しい。なんて話をしてました。

      ということは,LEO100トン級のアポロクラスのLVを有人にするには10^10の信頼性向上が必要になる。つまり無理なのね。NASAのアレスV(LEO 100トンのLV)も無人にしてあります。そゆのも考慮して,LEOで待ち合わせるときの打ち上げウィンドウとかも考慮すると,L1点で待ち合わせって結構アリなのかも・・・ と思わせる雰囲気はあります。

      とはいえ,萌えるネタに流されてるのも事実・・・ はふー

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  • by GeoJ (32542) on 2009年03月18日 22時40分 (#1533393) 日記
    周回軌道面を極軌道にずらすとかもできるのかな?
    • 周回軌道面を極軌道にずらすとかもできるのかな?

      軌道的には,何でもオッケーなはず・・・です。前回の話では,楕円軌道に入れるのかなーとか思っていたパターンでも,いったんL1で滞留するのを条件にすればなんでもオッケーになると思います。この自由度は捨てがたいです。

      ただ,その正しい利用法については・・・ 正解はわからないのですが。

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長期的な見通しやビジョンはあえて持たないようにしてる -- Linus Torvalds

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