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SS1の日記: books: 弓と禅 -中西政次 2

日記 by SS1

近所の新古書系の古本屋で発見。書名は甲野氏の著作で覚えあったので興味を引かれて購入。新古書価格で480円だった。

初めは口絵の写真に興味をもったんだけども。というのは著者の師の弓を引く写真の,その肩が凄いのだ。肉とかじゃなく,その肩のつきかた。弓を持ってるほうの腕なんだけど,肩が完全に落ちたところから,すっきりと高く口元の高さまで引き上げられている。肩はむしろ矢を持つ側のほうが高くなっていたりする。弓道ってそういうものなのかもしんないけど,あれ,何も知らない人が真似したら確実に肩関節を壊すと思う。うーむ・・・

同書は,まったくの素人があるきっかけから弓を習いはじめ,そして禅の領域の開眼するまで話。時期は昭和35年から43年までの7年間。始めた当時は53歳であったそうな。彼の学んだ流派は無影(むよう)心月流。これは昭和9年ごろに梅路見鶯が創始した,弓禅一味を本義とする流派とのこと。ようするに弓を学ぶことで禅を極めるのだね。伝統解釈に基づく型稽古の礼として,弓道って一種の型稽古(とうぜん,型は一つしかない)だし ―中国武術でいえば「洗髄教」みたいなもんでしょうか― 参考になった。

でまあ,自分の練功とも共通してるところが大きくて参考になる。というか弓道を知らないためだと思うんだけど,その身体の作り方が李師匠に要求されてる身法の要件と「おんなじ」にみえる。とくに参考になるのが,身体感覚としての「力」と「気」の取り扱い。中国内家拳では,この二つがセットになって教えられる。それは流派によって「勁」と「気血」だったり,「ニュートン力学」と「自律神経系」だったりするわけだけど,どれも同じものを指してると思う。そのあたりを,なんかこう具体的に説明してもらえる感じがした。たとえば,読んでいると技術とは別の段階として「境」というものがあって,それによって正しいやり方が変わったりすること。5章末あたりの問答を読んでいると,初めは呼吸を強く使って丹田を「作る」みたいなんだけども,丹田に力が「入る」段階になったら,もうそういう呼吸法は必要なくなるとか。こういうのって,易筋体操を習ったときの感覚を思い出すと,ああ,なるほど。と思えるのだった。

6章の「力脱と練気」では,そういう「気」の取り扱いで,丹田に力を入れて,それを足に伸ばして,それから手にも繋いでと,日付を確認しながら読むと,かなりのすごいペースで習得していくところが読める。とりあえず私は気血を練るところまでは教わってるわけで・・・ いや,まだ練れてませんが。その,やりかたはなんとなく理解している状態。とはいえ,こっから先の身体感覚を記述してる人ってのは見たこと無いので,まあ,なんというか興味津々である。

でまあ,そうやって引き込まれるうちに,彼がたどり着くところが「禅」でいう「開眼」の境地である。そして彼は,その結果として「統一」に昇進する。統一とは禅の開眼の境地が弓と一体化され,それが具現化して現れたものであるという。

ここでいう「開眼」とはなにか。それは宇宙と一体になること。であったりする。ここまで読んで,じつのところ後悔している。というのはまあ,こないだ読んだ「朱子の宇宙論」がそうなんだけども,朱子の宇宙論ってのは淮南子から続く「気」の宇宙論でもあったりする。でまあ,淮南子の天文訓と李師匠の伝統解釈による身法の要件って,けっこうストレートに繋がっているように思えるのだけど。いきなり,その答えを見ちゃったというか・・・ 見るんじゃ無かった。という思いが強くする。

いやもう,修行中の身には目に毒です。この本。

復刊ドットコム
http://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=19745

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  • 弓を引いているときの左手の使い方は、左手を横に伸ばし、壁か柱に親指を上にして手の平を当てて、体を動かさずに壁を押すような感じになります。
    実際にやってみると、肩を下げないとこれができないということが実感できるかと思います。
    右肩については、大正や昭和初期の写真を見ると右肩が上がり気味である場合が多いので、 かつてはそういう引き方が一般的だったのだろうかと思います。
    近年は逆に、右肩が上がるのは好ましくないとされることの方が多いですね。
    • どれ・・・ってんで日記検索を弓道 [srad.jp]でかけてみると,ちょうど20件でますね。

      「肩を下げないとこれができない」というのは,私の八卦掌の師匠がそういう肩の構え方してるんで,理屈ではわかるんですが・・・ 感覚がね。ゴム弓でも買ってみようかしらん。

      右肩については、大正や昭和初期の写真を見ると右肩が上がり気味である場合が多いので、
      かつてはそういう引き方が一般的だったのだろうかと思います。

      近年は逆に、右肩が上がるのは好ましくないとされることの方が多いですね。

      たぶん昔は強弓使いが多かったんじゃないかと想像します。同書に,巻き藁を卒業して的中するようになったとたんに,師匠からバカみたいに強い弓(引くだけで大変で筋肉がブルブル震えてくるようなヤツ)を渡されて,それから1射も当たらなくなった話が出てきます。それくらい強い弓を使うと,両手の高さのちょっとした違い(右手は矢柄の真ん中,左手は矢の下)で,肩の位置も同じようにずれるんでしょう。というか。

      --
      斜点是不是先進的先端的鉄道部長的…有信心
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ナニゲにアレゲなのは、ナニゲなアレゲ -- アレゲ研究家

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