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日記

SS1の日記: 酔根草と青い蓮のいろいろ

日記 by SS1

放送大学の茗荷谷の学習センターが新築された。こないだはじめていってきました。現在は、筑波大の分校に併設された形になった。さいしょ、そのお隣のスポーツセンターを覗いて某講習会のひととかいたら襲撃しようかなどと思っていたのだが、朝から晩まで授業で、とてもそんな余裕はかけらもなかった。授業は、古代中国の不老長生思想のなんとか。

古代中国の不老長生思想,加藤千恵、放送大学面接授業
http://syl-web1.code.ouj.ac.jp/ouj-f222/dt-5659.html

八卦掌がらみで,中国の気の自然哲学とかつついてる身には、とても参考になる話ばかりだった。なんつーか、知らないといろいろ、とっかかりがつかめないことがあるのだよね。たとえば、仙人になるための入門書といえば「抱朴子(ほうぼくし)」だよね。とか、そういう基本的なところがわからなくて、ものすごい遠回りになったりすることがある。講師の加藤氏は、自身も太極拳を習っているとかで、太極拳の気の感じ取り方や起式をちろっとデモってたりした。面接講座の受講者には、ご婦人のみなさまも多く、某講習会とも、なんか、じんわりとオーバーラップしているような… という気もした。

講義は、前漢あたりから崑崙山の信仰。太陽のヤタガラス(?烏)や、月のヒキガエル(蟾蜍)の話(淮南子精神訓)から、なんでもペアにするのが好きな中国神話の話とか、石棺に描かれる羽人の話、瓢箪から宇宙(壷中天)の話、抱朴子、それから唐の時代の煉丹術ブームから、宋代の内丹/気功ブームのあたりまで。シメが清末とおもわれる内経図などの紹介。

Wikipedia、内経図
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%86%85%E7%B5%8C%E5%9B%B3&oldid=37099325

その内経図は、Wikipediaのものと同じなんだけど、私はこれ見てて、なんか谷中七福神を連想した。てっぺんが飛鳥山で、そこから七福神をめぐって、最後に不忍池へと至る。でもって山手(京浜東北)線のかわりに脊椎が走っている。そんなかんじ。江戸時代って、江の島弁天とか体内めぐりみたいな観光地があったし、図像をみると人物をかぞえてみると7人だし。関係があるのかなと。んで、講義の後に講師に伺ったら、「関係ないと思うけど、それレポートにしてよ。」とのリクエスト。ええぇ… てなわけで、「中国内経図と谷中七福神の体内めぐり」というレポートを作ろうかと思ったが、時間がない(提出期限は明日だ)ので、またまたお茶濁し感想文の準備などなど。

文京学習センターの図書室が大変なことになってる

というのは、けっこう良い蔵書を備えていた放送大の文京学習センターの図書室なんだけども、たとえば、講義で言及されていた石田秀美氏の本で『こころとからだ―中国古代における身体の思想』とか、ついこないだまで学習センターの図書室に置いてあったのに、こぎれいに広くなった地下一階の図書館からは、どこかへ消えてしまっているのだ。じゃあ、ニーダムくらいはあるか、と思ったが無い… あれも、ない、これもない、で、放送大の学生にとっては、とても困った状態になっていた。現在、筑波大の大塚図書館と併合されて、その蔵書が、印象で10分の一に減らされていたのだ。

放送大の教養学部の学生としては、教科書だけあってソースがない。興味を持っても参考書籍がない。疑問を感じても批判資料がない。そういう、学習機会を奪われた状態。某国の愛国教育じゃないんだから、かんべんしてほしいっす。

併設の筑波大の図書館は、専門書やジャーナル類は拡充されているんだけども… 研究者が論文を書くならいいのかもしれないが。だいたい、蔵書が開架のみで閉架が無いって、どうなのよ。と思う。図書館というより、コンビニ?

筑波大学大塚図書館
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/otsuka/

ちなみに、学芸大の世田谷学習センターも近々蔵書を20分の一にする予定とか。下馬の学習センターは図書館情報大学の跡地を利用して運営されていて、それが歴史的に効いているのか人文・文学系に強く、けっこうハマる書籍が多かった。ドイツの幻想文学者であるエーベルスなんかを初めて読んだのもこの図書館だった。あと東洋文庫さがすなら、ここ。という感じだったのだが、これからどうなるのか… あたまのいたいことである。

芝と煉丹とマンガと魯迅

「芝(し)」とは、先ほどの「抱朴子」にある、「服薬」の原材料のこと。霊芝つうとキノコのサルノコシカケだけども、他にも石芝、肉芝、いろいろあるそうな。さがすと、古い図像にも「芝」が登場するそうで、で、「こんなかんじ~」と板書してたんだけども手にもつ「芝」の図像を見たのだけども。マンガが好きな人にはわかる、ゆうきまさみの『鉄腕バーディ(2003-2008)』に登場する「酔根草」とそっくりだったりする。

煉丹術もかなりアレ。そもそも火薬の発明は、さきほどの「服薬」の一環として、外丹術があり。仙人になるために、まず穀物を立って、食べ物として丹薬を食することで、人に非ざるその生き物に近づこうとしていた。で、そのとき、うっかり、火薬をつくってしまったとか(本講義、レジュメ、2011.11.加藤8-1、月刊しにか2000.5)。つまりですね、中国の人は仙人になるために「かやく」を「ごはん」にしようとしていたってわけです。近畿のひとたちにとってはびっくりな話ですね。

そういう、古代中国人のアレな所業をネタにしていた人として、魯迅もとりあげられてました(レジュメ、加藤7-1、魏晋の風土および文章と、薬および酒の関係)。こちらでは、明代の五石散の服薬と同じようにおかしな風習として、清末の阿片吸引の慣習になぞらえて揶揄している。

魯迅と阿片で、思い出すマンガに、エルジェの『青い蓮(The Bule Lotas)』がある。これは、日清日露後の中国で、エルジュの描くタンタンと日本軍が戦う話である。タイトルの『青い蓮』とは阿片窟のことで、むかし日本でタンタン展やってたころに読んだ解説書によれば。その英国人ジャーナリストは、日本軍の経営する阿片窟で、The Bule Lotasとは、『リヴァイアサン』(ホッブスだったかな?)に登場する「青きロトスに酔い…」とかのパクリで、そもそも日本人はそこまで教養があったっけ? などとしめていた。当時の日本人の教養については、まあ微妙… たとえば、真珠湾攻撃の作戦成功暗号電文が「トラ・トラ・トラ」、つまり、ジョイスの「虎よ虎よ」であったりするわけだし。で、なんともいえないんだけど。阿片戦争を無かったことにしてる英国人らしい発想だなと思った記憶はある。

「タンタンの冒険」展,Bunkamura ザ・ミュージアム、2003.3
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/02_tintin/index.html

タンタンの冒険 : その夢と現実,マイクル・ファー著,小野耕世訳,2002.3日本版発行。
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000003587512/jpn

んでまあ、「青い蓮」なんだけど、そもそも実在しているのか。というのがわからなかったり。スイレンはあるらしいんだけどね。んでも、スイレンはロータス(蓮)じゃなくて、リリイ(睡蓮)じゃなかったっけ? とか。あ、でも、Wikipedia みると、写真が載ってるな。

スイレン属
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%B3%E5%B1%9E

さて。話をもどして。講師の加藤先生によれば、そーいう、調べれば調べるほどわけがわからないよ、になる「芝」を調べつくした研究者がいらっしゃるそうで。その研究者の大形徹さんが、2006年に「芝とは何か」という論考を学会で発表されているんだそうな。

大形徹、大阪府立大学大学院、中国思想(神仙思想・霊魂観念)教授
http://www.human.osakafu-u.ac.jp/staff/red/r_oogata_tooru/index.html

んで、今回の講義のレジュメに、そのときのスライドの引用(大形徹、芝とは何か:パルメット文様の考察を通して 2006.10.27、から,
1,4,5,10,11あたりのスライド)があるんだけども、そこでいきなり、青い蓮と酔根草が…(笑)。いやまあ、マンガ読みとしては、びっくりしました。

これは日本のマンガ史的にみると、

2002年の小野耕世氏による、エルジェ関連の翻訳と考察
2003年のゆうきまさみの『鉄腕バーディ』の連載開始

…んでもって、道教思想研究者の大形徹氏が、

2005年に青睡蓮と芝の関連についての考察を学会で発表

という順番になる。講師いわく、この説には批判者も多いとのこと。まあ、フィクションのほうが自由にできるわけだから、マンガが先行しても不思議じゃないんだけども、プロパーの研究者はたいへんだなぁと思いました。

学籍番号:***-***223-*

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ほんとは、こういうのは、facebook みたいなクローズなとこを使うほうがいいのかな。と、ちょっと思う。んまあ、でも、大学講義の感想をブログに書いちゃいけないという法律はないし… 裏サイトぽいとこのがあれだし。てなわけで。

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