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SS1の日記: 古武術とオートバイ運転技術(3) 5

日記 by SS1

“数学は,科学と同様,ただ単に法則を適用すればそれでいいというものではない,とポアンカレはいっている。またある一定の法則に従って,最も多くの組み合わせを作ればいいというものでもない。そのようにして得られる組み合わせは,ただ数が多いばかりで,役に立たず,煩わしいだけであろう。発見者の真の仕事は,さまざまな組み合わせのなかから巧みに選択することによって,無用なものを消去したり,あるいはむしろそうした組み合わせを作る煩瑣な手続きを省くことにある。だがその選択を導く法則はきわめて微妙で繊細なので,言葉をもって正確に述べるのはほとんど不可能であろう。公式化するよりは,むしろ感じとるべきものなのである。
 そこでポアンカレは,この選択がいわゆる「閾下自我」によって行われるという仮説を立てた。この存在はバイドロスが前知性的な気づきと呼んだものとピッタリ符号する。” ---ロバート・パーシグ,『禅とオートバイ修理技術』,p.447 より。

すなわち「気づき」そのものが理論化されることはない。そのため,ひとりひとりが自分で見つけるしかないのである。

前回のコメントのやりとりの後。かるいスランプにはまってしまった。それはそうだろう。考えすぎれば身体が動かなくなるものだ。ひとまず,コーナリングの乗れていないパターンについてあらためてチェックしてみることにした。

1.コーナーの脱出速度が遅い。
2.バンク中に当て舵をしている。
3.バンクが必要以上に深くなる。
4.ラインが膨らむ。

2と4は,向き変えをきちんと行わなかった時におこる。なんとなく逆操舵でコーナーに入ってしまうとこのような状況に陥る。早い段階であれば,向き変えをもう一度やりなおすことでリカバリーできる。1と3は,加重がインにかかっていない時におこる。つまり,抜重操作に失敗している。ということ。

向き変えについては,すぐに修正することができた。向き変えの体制を作るためのストップモーションと根本氏が呼ぶ姿勢づくりのために,コーナー進入時にFブレーキで,車体を立てるのだが,その力が弱いのが原因だった。私の乗っている748Rは,レーサーレプリカだけに,しっかりとFブレーキをかけないとピッチングがおこらないのだ。そのため,かるくFブレーキをかけたのでは,正しいストップモーションを作ることができていなかった。

さて,もうひとつの問題だが。身体をインに入れても加重はインにかからない,というのが何故おこるのか。見た目が同じなら,同じように加重がかけられても良いように思うが,そうはならないのが,ポイントなのだ。そんなことがあり得るのだろうか?

前回のコメントのやりとりで教えられたが,格闘技とくらべて身体の軸というものをライダーは,あまり意識することがなかった。その前に,オートバイの軸,ヨー/ピッチ/ロールの3軸を考えなければならず,そこまで頭が回らなかったともいえる。じゃあ,身体の軸はどこをどのようにとおっているのだろうか? と,そのようなことを考えてみた。

ちなみに。バイクの軸は,力学的に解明されている。ここでは,ロール軸について説明するが,ロール軸はリアタイヤの接地点を通り,バイクの重心を抜けてフロントフォークに直交するように,Fフェンダーのすぐ上を通っている。このため,スポーツバイクでは,シートからの入力が最もロール軸から遠く効果的な入力を与えることができるのだ。身体の軸も基本は同じだ。まずはじめに身体の重心を考えてみる。誰でも知っているように,これはへそのすこし下。いわゆる丹田とよばれるところ,ただしスポーツバイクでは前傾しているから,その少し前に身体の重心がある。もう一つの支点(力点)はシートの上の骨盤からバイクに力が伝わることになる。つまり,シート上の力点と身体の重心を結んだ線が,力学的な身体の軸,ということになる。

ということはだ。たとえば。外足で踏ん張りながら身体をインに持っていこうとする。すると,力点が外になるため身体の軸も外に流れてしまい,結果としてバイクを起こす力が働いてしまう。これではリーンウィズより悪い結果になるのは当然である。そのままアクセルで修正しようとすれば,ずっとスロットルオフで耐えなければならなくなる。もし,ステアリングで修正しようとすれば,どこまでも深くバンクすることになり,最後はスリップダウンするしかない。加重がアウトにながれる(インにかかっていない)というのは,そういうことだったのだ。

さて。それでは加重は,どのようにかけるのが正しいのだろうか? これはやはり,どのようなスポーツでも同じように,背筋にそってまっすぐに下ろすのが,もっともバランスが取れているではないかとおもう。あとはこの軸がロール軸よりイン側を通るように気をつければよいはずだ。これで,バイクをバンクさせる力がうまれることになる。まっすぐにストンと身体を落とす。これがまたむずかしいのだ。

この抜重動作の練習法は,バイクを使ってやるものと,イスをつかってやる方法がある。このうちバイクを使ってやるのはひとりでは出来ないので,イスを使って練習することにする。できれば,倒れてしまわないように,固定されたイスが望ましい。たとえば,尾山台のリンドバーグ近くなら,デニーズのカウンター席が最適だ。では,さっそく練習してみることにする。

まずはじめに。足をそろえたままで,イスのはじに座る。それから,外足で踏ん張って,すとんとおちる。何もおこらない。オフセットを増やし,続けていると,骨盤の出っ張りが外れたところで,ゴロンとインに倒れ込む感覚を味わうことができた。骨盤の回転につられて,インに引き落とされるような感じ。これが正解かは,わからないが,ひとまずいい雰囲気ではないかと思った。そこで,ハングオフに挑戦。今度は,外足をイスに引っ掛け,ステップを蹴り出すようにして,ニーグリップしながら身体をおとす。何もおこらない。いろいろと試してみると,どうやら足と背筋が連動していて,外足に力を入れている限り,上の骨盤の回転がおこらないようだ。背中に手を当てて歩いてみるとわかるのだが,ついてる足と反対側の背筋が緊張して,身体を支えるように常に連動しているのである。バイクでは,その連動を切り離して足だけニーグリップしながら,背筋を弛緩させろというわけだ。なんか,めちゃめちゃむずかしいんですけど。

で,飲み干したコーヒーのおかわりをいただきつつ,いろいろやってみた。背中をまるめ,丹田にちょっと力をこめてやると,抜重したときの骨盤の回転が若干スムーズになった。これは,いわゆるナンバの姿勢に近い。

脊椎は,並行する2本の背筋と1本の腹筋に支えられている。だから,脊椎を腹筋で支えてやると,その分だけ2本の背筋がフリーになり,骨盤のロールが可能になる。どうやら,脊椎は必ず腹筋,背筋の2本のいずれかで支えておく必要があるようだ。筋力がちょっと衰えただけで痛めてしまう椎間板を守るため,どれか一つは筋肉を使って脊椎を支えてやる。そんなメカニズムが働くのかもしれない。ぎっくり腰になったらやだし。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • >前回のコメントのやりとりの後。かるいスランプにはまってしまった。

    たいへん申し訳なかったです。なので今回はIDで書いてみます。

    格闘技における体の軸、特に視線について考察してみます。 スポーツではなく殺人術としての格闘技では自分の体の軸、視線を傾けることを嫌うものが多いです。 意図的に体の軸を傾ける、あるいは倒れる場合にも視線は水平を保つようにコントロールします。 ボクシングではウイービング(頭を左右に振る動き)、ダッキング(体をかがめる)などが見られますが、 これにはかなりの反射神経が必要なので、プロボクサーは30才台半ばで引退します。 しかし、「若いときだけ強い」などというのは殺人の技術としてはあってはならないのです。 このため、年を取っても衰えない方法が必要なのです。 また、偶然タイミングがズレて入ったラッキーパンチで試合の形勢が変わるのも良くあることです。 殺し合いの場ではこの偶発性は死に直結するので、これを嫌うのです。 さらに、ウイービング、ダッキングなどの動作による平衡感覚のわずかなズレも死に直結します。 ボクシングではパンチのみを見切れば良いのに対して、殺し合いでは上段、中段、下段への突き蹴り、投げなどもあります。 なので、どの格闘技も最初の「自らが傷つくことなく、いかに効率良く人を殺すか」の発想は甲野氏の考え方に近いのです。 ただしその実現法が空手、合気道、柔術、中国拳法、あるいは甲野氏それぞれでまったく異なるわけです。 実現法のスタイルがその人に合っているかどうかで強くなれるかどうかが決まるわけです。
    すなわち「気づき」そのものが理論化されることはない。
    ついでに言うと、上のような考え方を伝えることを口伝、口訣というのです。 これは「気づき」を体系化したものです。 聞けば「なんだ、そんな簡単なことか」と思うことでも、言われなければ気づくことができません。 型練習、組手(スパーリング)だけでは強くなれないのです。 そして、ノウハウ類を体系化しない限りその流派の技術継承が行われません。 さらに、口伝、口訣で指導できるかどうかが良い指導者の条件なのです。

    で、バイクにおけるバンク時の水平位置をどこ基準にするかは判りませんが、 ボクシングのような意図的に頭を振る動作だけは避けた方が良いでしょうね。 「ラッキーパンチ」的な事故も避けることができるでしょう。 まあ感じからするとたぶん甲野氏スタイルが合っているんでしょう。 それと、このコメントでまたスランプにならないように、戯言だと思ってあまり気にしないでください。
    • どもです。「スランプ」は,まあ,ネタの前ふりみたいなもので。あまり気にしないでください。

      「ボクシングのような意図的に頭を振る動作だけは避けた方が良いでしょうね。」

      頭を振るわけではありませんが,バンク角=コーナリングスピードを稼ぐテクニックとしてはあるようです。MotoGP初代チャンピオンのバレンティーノ・ロッシなんかは,平気で頭をインに傾けたまま走っています。ただまあ,やはり,リスキーなようで,福田照男著の『チャンピオンライダー考現学』なんか読んでますと,こうしたライディング・スタイルは,ポケバイ出身者の特徴で,かつ若いあいだしか出来ないものでもあるようです。他の多数のライダーは,頭だけは地面に水平っていうか,両耳に串を通すと地面に水平になるような感じです。傾けるとだめみたいですね。ためしに,頭を傾けてこの文章を書いていたのですが,それだけでけっこう酔います。私は。

      面白いのが,流派のもつそれぞれの体系化されたノウハウ類って,混ぜられないんですね。バイクの場合であれば,逆操舵派とリアステア派って,結果としては同じでも基準にしてるバイクの軸が違う(重心 vs. 支点)ために,相手の理論の引用が利かないような印象があります。

      この二つのスタイルの向き不向きについては,上記『……考現学』によれば,体格の違いが大きいようです。なんていうか,柔道やってそうなずんぐりした体格だと逆操舵派になりますし。リアステア派は,なぎなたが似合いそうな,ひょろ長で,ぐにゃっとした感じ。リアステア派の根本氏はひょろ長でライディングは見るからにぐにゃっと乗ってる感じだし,甲野氏は,ひょろ長には見えませんが筋力でなんとかできないタイプみたいだし,なぎなたとかもやってるそうです。

      私にも,何かそういう体格的な共通項があるんじゃないかと思います。

      #日記のコメントは,やはりIDの方が,ほっとしますね。
      #こちらもACってわけにいかないですから。
      --
      斜点是不是先進的先端的鉄道部長的…有信心
      親コメント
      • >相手の理論の引用が利かないような印象があります。

        これは格闘技でも同じです。ただし何事でも天才は別ですが。

        >体格の違いが大きいようです。

        空手や格闘技としての太極拳などを見ると、同門派でも師系によって「これが同じ武術か?」と思うことも良くあります。 これはやはりその流派の創始者の体格の違いに拠るところが大きいです。 理想的には弟子は師匠と同じような体格であることが好ましいとされています。 たとえば太極拳で言うと、大兵肥満体な人は急激な転身などが苦手、あるいは不要なため、そのような動作は技にあまり見られなくなります(楊家太極拳)。 逆に中肉中背な人には急激な転身などが向いているのです(陳家太極拳)。 なお、他にも呉家太極拳、孫家太極拳などいろいろあります。
        親コメント
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アレゲはアレゲ以上のなにものでもなさげ -- アレゲ研究家

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