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娯楽

Takahiro_Chouの日記: 【映画】セデック・バレ 第1部・太陽旗/第2部・虹の橋

日記 by Takahiro_Chou

台湾の山奥に虹を信仰する民族がいた。
ある時、海を隔てた北方から、太陽を崇める民族がやってきた。
2つの民族は出会い、互いの信ずるもののために戦った。
しかし彼らは気づいていなかった。
虹も太陽も、同じ空にあるのだと…。

「よく聞け! セデックの戦士たちよ! 敵の首を狩れ! 魂を血で洗い清め、虹の橋を渡り、永遠の狩場へ行こう!」

「俺たちは天皇の赤子か? それともセデックの子か?」
「切れ。葛藤を切り裂け。どちらでもない自由な魂になれ」

「軍司令部に糜爛性ガス砲弾を申請しろ……おまえ等に"文明"を与えてやったのに、反対に我々を"野蛮"にさせおって!!」

構想から10年、プロデューサーは中国と台湾(香港映画の雄・ジョン・ウーの名前も!!)、監督は台湾のウェイ・ダーション、役者は日本と台湾、アクションチームは韓国、美術は日本、と東アジアの総力を挙げて作られた感の有る大作映画。
2部併せて4時間半なのに、時間は、あっと言う間に過ぎ去り、一瞬も目が離せぬほど、脚本も演出もアクションも最高レベル。
いや、もう、今年最高の映画は、コレでいいでしょ的な内容。

1930年(よくよく考えりゃ、大陸で色々とキナ臭い事が起き始めてた時期)に、日本統治下の台湾で起きた「霧社事件」(セデック族と呼ばれる台湾の原住民族の反乱事件)を題材にした作品。
誰が正義で誰が悪かどころか、誰が勝者で誰が敗者かも曖昧な苦い展開ながら、漢(おとこ)映画としては最高の出来。
なお、この映画、どの登場人物に感情移入しようとウギャーなオチが待っている難儀な作品でも有る。
セデック族に友好的だった日本人警官は、最終的にダークサイドに堕ち、セデック族出身で日本と警官となり、日本名を名乗っている2人の若者は、日本とセデックの板挟みになり……えっと、あれ、ちゃんと描写されてないけど、自分の子供それも赤ん坊を……。
さらに言えば、日本に対して反乱を起したセデック族に感情移入しても……この翌年に満洲事変、2年後には上海事件、7年後に日中戦争が始まり、9年後にはノモンハン事件……そんな時期に日本と、「勇敢に戦い、敵の首級を上げた者の魂のみが、虹の橋を渡り、先祖の霊の一員となれる」と信じ全員が戦死か自決かのどっちかと云う運命を辿った者達が戦った話から連想される事って……片や少数民族の伝統、片や列強の1つが近代にデッチ上げたエセ伝統の違いは有れど、「虹の橋」って東京の九段の例の神社と何が違うんだ? 蜂起したセデック族の最期って戦陣訓の例の一節そのものじゃないのか? 最初はありがちな悪役だった、ある登場人物が、最期にセデック族を評価する発言を行う、一見、よさげに見えるシーンは、史実において、この後、日本軍が自国の兵士が他国の捕虜になった時や、他国の兵士を捕虜にした時に、彼等をどう扱ったかを考えると、この上なく、おぞましいシーンではないのか? 最期まで降伏する事なく勇敢に戦った敵を称賛する心情と、敵味方を問わず捕虜となった者を軍人失格者として扱う心情は、裏と表では無いのか?
つまる所、この映画で描かれているセデック族が、美しく気高く見えるとしたら、それは、山口貴由の「シグルイ」で描かれている虎眼流剣士や、アメコミの「ウオッチメン」のロールシャッハの最期と同じ、狂った思想が血肉となっている者であるが故の美しさ・気高さでは無いのか??
わざとやったんだとしたら、この映画の脚本家は嫌がらせの天才だけど、その嫌がらせ脚本すら、この映画のエンターティメントとしての完成度を上げる働きをしているのである。

何はともあれ、ええ顔のオヤジやアニキが、最後には破滅すると判っていながら、知恵と身体能力とシグルイ精神で、物量に勝る敵をボコボコにする……って、他に何か要りますか!!
公開館数は少ないけど、観に行ける奴は、とにかく観ろ!!

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