パスワードを忘れた? アカウント作成
504501 journal

TarZの日記: 「40インチ以下でフルHD」はユーザーニーズから産まれたものではない、という誤解

日記 by TarZ

 数日前の記事だが、気になるところがあるので突っ込んでみる。

松下プラズマ生みの親が語る「今」と「これから」

液晶がフルHDを実現したのは、高精細なコンピュータ用ディスプレイの延長で開発できたからです。必ずしも、ユーザーニーズから産まれたものではありません。視認できないピクセルサイズが、そんなに重要でしょうか?

(強調部は引用者)

 これは事実誤認だと思う。

 もともとのフルHDのルーツをたどると、NHKの技術開発していた高精細テレビ(のちにハイビジョンと呼称)がある。こいつのMUSE(アナログ圧縮・伝送)方式の走査線数が1125本(画面上に表示される部分はこれより少ない)、画面アスペクト比が横16:縦9だった。

 結局、日本のアナログハイビジョンは世界標準にはなることなくデジタル化の波に飲まれてしまったが、デジタルTVでのフルHDピクセル数はほぼこの値を踏襲している。「縦のピクセル数が1080、16:9の画面アスペクト比」だ。正方画素とした場合、画面アスペクト比から求められる横のピクセル数が1920となる。(1920:1080=16:9)

 高精細テレビの走査線数やアスペクト比は、NHK技研が実験した結果、「視聴者が観て、これくらいなら画面の粗さが目立たずに迫力ある映像を楽しめるだろう」として設定されたものだ。この歴史に、液晶やプラズマといった表示デバイス側の事情はまったく絡んでいない。
 「NHK技研がユーザーか?」というと微妙な気はするが、少なくともフルHDの解像度は、視聴上の効果を見込んで設定された値がルーツとなっており、(液晶は高精細が得意といった)メーカー側の事情から設定されたものではない

 そもそも、NHK技研が高精細テレビを研究していた頃、液晶テレビはまだ影も形もなかった。また、初期のハイビジョンテレビは「プラズマ42インチ」どころではなく、ブラウン管でサイズはせいぜい28インチだった。

# 付け加えるなら、NHK技研で、将来の高精細テレビ受像機向けとして研究されていたのはプラズマパネルだ。

 だから、40インチ以下でフルHDを出すことがユーザーニーズから出たものではない、というのはおかしい。

… … … …

 自陣営が技術的に苦手とする点を「不要なもの」と主張する場合は、発言は慎重に行うべきだ。一つ間違えば痛々しいことになる。最近の例で言えば、ソニーが「(ゲーム機ではない)PS3の価格をこんなに安く設定できました」と言っていた件がそれに近い。

 通常の視聴スタイルではフルHDの違いが判りづらいのは事実。しかし、

 ...フルHDを楽しむなら、56インチくらいが最適。...(中略)...しかし、これだけ大きなディスプレイとなると、すべての人が買える大きさ、というわけではありませんね(笑)。

 私にいわせれば、「フルHD」という言葉は、マーケティング先行の色合いが強すぎます。コンシューマにとって、実用的な問題とはいいかねます。少々混乱を招いているようです。...

…とする一方で、パナソニックが「すべての人が買える(DVD置き換え)」商品と位置づけて推進しているBDには、映画ソフトでは1080pソースが収録されている。
 720pでは現行DVDの480pから大きく変わらない。つまり、次世代DVDならではの差別化として(つまりマーケティング上の理由で)1080pソースが収録されているわけだが、しかしこれではダブルスタンダードと受けとられかねない。
 (「40インチ以下でフルHD不要論」は、メーカーの主張全体をみると他にもおかしな点を抱えているのだが、長くなるので別の機会に)

 エンジニアには、「取れない葡萄は酸っぱい」主張をするより、苦手を克服する技術開発を進めてほしい。
 フルHDが必要かどうかは、メーカーではなくてコンシューマーが店頭で見比べて決める。見比べた上でフルHD効果なしと判断すれば、一般的なHDパネルをチョイスするだろう。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
typodupeerror

「毎々お世話になっております。仕様書を頂きたく。」「拝承」 -- ある会社の日常

読み込み中...