TarZの日記: 【惑星として軸がぶれている】地球の自転のブレを超精密に直接測定 7
地球の自転速や自転軸の位置は、太陽や月といった外部からの重力の影響のほか、地球内部の要因(不定期で起こる巨大地震に伴う地殻変動や大気・海の流れの季節変動など)によって絶えず細かく変動している。このことは、/.Jでも過去に何度か記事として取り上げられている。(直近の記事では「東日本巨大地震の影響で地球の自転が速まる」)
たとえば、主に海水温や塩分濃度による海底圧の変化、大気の流れによっておこると考えられているチャンドラー揺動では、地軸のブレが地表面での長さにして10m前後と、かなり大きな変動量となって現れる。このくらいになるとGPSによる測位でも無視できないくらいのズレなので、ズレの原因となる自転のブレはきちんと把握しておきたい。
しかし、そもそも我々の住んでいるこの地球そのもののブレは、どのように測定すればよいだろうか。なにしろ、人類が使える観測装置は概ねこの惑星上にあり、それらはいっせいにブレの影響を受けてしまう。(近年では人工衛星も使えるけど)
ということで、こうしたブレは、地球外の基準(古くは星の光学的観測、現代では宇宙の非常に遠いところにある電波源)を使って間接的に測定されてきた。
遠方の天体は、太陽系から見てほぼ点状かつ平行光源で静止しているように見える(はず)なので、地球の自転が規則正しいものなら、地上から天体を観測したある時間には、あるべき位置に見える(はず)。逆に言えば、あるべき位置になければ、おそらく天文台なり電波望遠鏡が据え付けられている地面(つまり地球)の方で何らかの位置の変動があったと考えられる。
こうした間接的な測定手法は、まあ日時計の超高精度版といえる。
自転のブレは地表でも角速度の変化として現れるので、「原理的には」フーコーの振り子やジャイロスコープの類の装置を使って直接測定できないこともない。
もっとも、先ほど挙げたチャンドラー揺動のケースでも地軸の角度にして1秒未満、しかもこれが数百日という長い周期でゆっくりと変化するので、角速度の変化としてはあまりに微小となり、直接測定は絶望的なまでに難しい。
それでもまあ、測定してやろうという人は出てくるのです。曰く、「だって遠方の天体が不変だとは限らないじゃないか」。
ミュンヘン工科大学(TUM)のプレスリリース First ever direct measurement of the Earth’s rotation
Physical Review Letters How to Detect the Chandler and the Annual Wobble of the Earth with a Large Ring Laser Gyroscope
リングレーザージャイロのお化けのような装置で地球の自転のブレを直接測定してみたら、VLBIでの測定にかなり合致する結果が得られたよ、という報告。
TUMのプレスリリースによれば、著者らは1990年代中頃からこの仕事に取り組み始めたとのことだが、当初は周囲から笑い飛ばされた(At the time, we were almost laughed off.)とある。航空機などに搭載されているレーザージャイロの精度が 0.01°/hour あたり(これも非常に精度が高い)らしいが、自転のブレの測定ではその数百万倍の精度が必要ということなので、どうか笑った人を許してあげてください。
測定対象があまりに小さな効果のため、装置は安定した岩盤のある地下に設置され、測定に影響を与える他の要因(気圧や温度などの変動)は徹底して排除されている。装置にたどり着くには、長さ20mのトンネルに設置された5つの断熱ドアをくぐらないといけないそうだ。どこかのサイキック大作マンガで似たような設定がありましたが、リアルで存在したとは胸熱!
PDFのほうには、(prad/s)/day なんて単位が書いてある。これはピコラジアン毎秒(角速度)の1日での変動ということか。まあ角加速度の単位になるんだろうけど、違和感がありすぎる。
何よりも (スコア:0)
何が一番凄いって、この研究に研究費がおりた事なんじゃなかろうか……
>だって遠方の天体が不変だとは限らないじゃないか
ってのも、いや、まあ、そうだけど!って感じですよね。
どんな話術を駆使して
だまくらかした説得したんだ彼らは。Re:何よりも (スコア:2)
GPSに影響が出るということは、結構大きな問題なんじゃないですかね。
いまどきの高性能タイプなGPSは衛星から飛んでくる信号搬送波のエッジまで見てるそうですし。
Re:何よりも (スコア:2)
一応、チャンドラー揺動については古くから知られているので、GPSでは考慮済みのようです。
ただ今後、ワールドジャンプデー [wikipedia.org]の類で、「世界のみんなで夕日に向かって走ろうず!」みたいなイベントでもあれば、考慮されていない妙な影響が出ることはあるかもしれません。:-)
Re: (スコア:0)
VLBI(等)によって決定された最新の地球回転パラメータはIERS(国際地球回転事業)が配ってるんでしたっけ。
しかし、国際地球回転事業だの地球回転パラメータだの、ネーミングが何となく心躍ってしまいます。
Re: (スコア:0)
いや、基本的には間接測定で済む話なんで、それをわざわざ直接測定で大々的にやる、ってのはどうやって説得したのかなあと。
#まさか遠方の星が足並みそろえて変な方向に移動すると本気で考えてるとも思えないし。
で? (スコア:0)
ぶれが判って何が良いんだ?
そもそも、ぶれが出ない様に作った訳ではなく、
たまたま自転を始めただけの物に対して精度を求めるというのは
求められているほうとしちゃぁ良い迷惑以外の何物でもないんじゃぁないかい?
Re: (スコア:0)
1. そもそも何が原因でぶれが生じるのかを解明するための基礎データになる(いくつかの周期のぶれに関しては原因が判明した)。
2. 衛星軌道の高精度決定の際に必要(地球回転パラメータ)。影響の大きいものに関してはGPSでも考慮済み。
3. 遠方の探査機との通信時や、天体観測時にも利用されている。