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原子力

TarZの日記: 核融合は究極のエネルギーになるのだろうか 3

日記 by TarZ

 核融合炉のネタを書きたいのだが、まず事前準備。

… … … …

 人類史上、文明はいくつも興っては消えていった。文明が滅ぶたびに知識や技術のいくつかは失われ、次の文明で再発見・再発明しなければならなかった。まったく無駄なことだ。
 文明というものは長期存続され、変化しつつも知識や技術は維持されないといけない。これがファウンデーション設立の目的である!

 …というSFネタをやりたいわけではない。とりあえずここでは、こうした長期存続可能な文明にレベルをつけることにする。

 空想科学の立場からは、宇宙に使えるエネルギーが残っている限り存続可能である文明(文明レベル3と呼ぶことにする)を目指すべきだし、さらに、可能であれば宇宙の熱的死を乗り越えて存続できる文明(レベル4)を築き上げたい。まあ、レベル4が可能かどうかは判らないけど。

 エンジニアとしての立場から(つまりもうちょい現実な視点から)は、まず現在の文明が抱えている問題を解決して今後100年~数百年を乗り越えること(文明レベル1)、さらに、可能であれば太陽が燃えつづける限り存続できる文明(レベル2)を実現したい。

 文明レベル1となるには、人口増、資源枯渇、文明活動に伴って廃棄される物質による気候変動や海洋・土壌汚染といった問題に適切に対処する必要がある。
 このレベルに到達した文明は、文明発祥の惑星において長期(数万~数百万年)持続可能であることが期待できる。

 文明レベル2のためには、レベル1より数段高度なリサイクル技術の実現と、数千万年に1度の惑星規模の大災害(小惑星衝突や大規模火山活動)に対処可能でなければならない。
 このレベルに到達した文明は、文明発祥の恒星系において、その恒星が燃え尽きるまで存続できる可能性がある。もしかすると他の惑星への殖民も必要になるかもしれないし、もはや文明の担い手はヒトという種ではなくなっているかもしれない(というか、まず間違いなくそうなる)。

 現在の文明は、そもそも長期存続可能なレベルに到達しているとは思えないので、レベル0とする。

… … … …

 と、文明のレベル分けができたところで、核融合炉(実現できそうなDT反応炉による発電を前提とする)について考えてみる。

 これはどれだけの期間、人類のエネルギーとして使い続けられるのだろうか。技術的・工学的・経済的に目途が立ったとして、文明レベル0のエネルギー源としては間違いなく使えそうだが、文明レベル1のエネルギー源になり得るのだろうか。

 燃料の一つである重水素の資源量は膨大なので、数千万年にわたってまず問題ない。トリチウムはリチウムから作るのでそちらの資源量を見ることになるが、これも鉱石だけでなく海水も含めれば割と豊富にある(ただし、海水からの抽出で経済性は悪化すると思われる)。
 危ないのが、現在のDT反応炉のデザインにおいてトリチウム生産で使うベリリウム。これは消耗品のうえ、あまり資源としては多くない。採掘可能な資源量から、DT反応炉の総発電可能量がかなり制約されてしまうのではないだろうか。

 ということで、"ベリリウム 資源量" で適当に検索してみると、既に検討されまくっているようで、「核融合」の検索キーワードを入れなくても色々と出てきた。ただ、資料によって前提が異なるようで、総発電可能量の見積もりにはかなりの差があった。

核融合エネルギーの資源量 (PDF)

7万年(総鉱物資源量)
方式によってはBeは不要
資源制約にならない

 こちらの資料↑では、資源量は7万年分、ベリリウムを使わない炉のデザインも可能だから制約にはならない、としている。

6.核融合エネルギーに関連した資源量 (PDF)

DT商業炉開発の初期の段階では,資源量にとくに問題はない.しかし長期的な観点では,ベリリウムの資源量が制約条件となる.DT核融合発電を200年問以上続けるには,非常に効率的なベリリウムのリサイクルが必要であると考えられる.中性子増倍材として使用するベリリウムを減らすためには,海水からのリチウム抽出を実用化させ,豊富なリチウムの同位体分離を行い,高濃縮6Liを三重水素生産に用いる必要がある.

 こちらの資料↑では、短期的(200年程度)には問題ないが、長期的な供給についてはなんらかの対策が必要としている。

 ベリリウムも確かに足りないが、意外だったのは、一義的には消耗品でない超伝導磁石の線材で使うニオブや、炉の構造体に使うバナジウムやタングステンも資源量の制約が大きい点か。特にニオブの資源量はカツカツ。現在は酸化物超電導物質が発見されているとはいえ、1980年代以前はこれでよく「夢のエネルギー」とか言っていたなあ。

 また、私は認識していなかったのだが、資源量以外にこんな問題もあった。

エネルギーの価値と次世代エネルギー技術の特徴比較 (PDF)

燃料はあるか?リチウム6、初期装荷トリチウムの確保
民生用トリチウムはITERで使い果たす。原型炉以降の初期装荷トリチウムはどこから入手するの?

 あー、確かに。

 現在のDT炉のデザインでは、いったん運用を開始しさえすれば、そこで消費する分のトリチウムは生産できるようなデザインになってはいる。しかし、最初に商用炉を立ち上げから、炉で生産されるトリチウムを回収するまで(運用開始から数年後以降?)に必要なトリチウムはどこから入手するんだろう。
 商用炉の目途が立ったときに、最初に使うトリチウムの供給量が制約となってホイホイと商用炉を増設できない、なんてマヌケな事態を避けるためには、商用炉で必要な規模で燃料を供給できるトリチウム生産設備(核分裂炉)を事前に準備しておかないといけないということか。

 既存の原子炉で作るのか、専用のトリチウム生産炉を立ち上げるのか、どういう計画になっているのだろうか。

 ということでまとめると、不確かな技術を前提としないなら、どうもDT反応炉はレベル1文明のエネルギー源になりえないような気が…。(いや、それでもレベル0文明向けエネルギー源にはなるし、もしかすると延長の技術としてDD反応炉が実現しないとも言い切れないし、投資は続けられるべきだとは思いますけど)

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by manmos (29892) on 2012年03月29日 14時13分 (#2126138) 日記

    レベル1ならD-He3でしょう。

    モノリスが出てこない限り、月を掘るんです。ガニメディアンが助けてくれます。きっと。

    • by TarZ (28055) on 2012年03月29日 14時24分 (#2126144) 日記

       月面だとあまり資源量がないんじゃありませんでしたっけ。人類がいずれレベル2文明からレベル3に飛躍する際、恒星間航行の推進剤としてHe3が必要になりそうなので、レベル1で使いつくしてしまうとやばいことに…。

      # 優しいガニメデ住人がいるといいんですが。

      親コメント
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