TarZの日記: 【またテープか!】スコッチテープでX線天文学に革命が起こる(かもしれない) 4
数年前、スコッチテープを真空中で剥がすとX線が出る、という研究報告があった。身近にある安い文具を使う意外性と、Natureの表紙を飾るというインパクトもあって話題になったのは記憶に新しい。(/.J記事 ごく普通の粘着テープからX線が放出される)
この研究にインスパイアされた…のかどうか分からないが、NASAゴダード飛行センターのX線天文学の研究者が、スコッチテープ(厳密にはスコッチテープじゃないけど)による新しいX線観測機器を構想している。テープを使うと、従来よりはるかに高性能のX線望遠鏡ができるかもしれない。しかも、たぶん低コスト。
NASA X-ray Concept Inspired from a Roll of Scotch(R) Tape
# 誇らしげに掲げられるスコッチテープ!
X線天文学の分野では、硬X線領域での高い分解能の観測は未踏であり、そのための観測が今後予定されている。たとえば先日打ち上げられた NASA NuSTAR や、2014年打ち上げ予定の日本の Astro-H がそうしたX線観測衛星である。
さて、一般に、光がどこから飛んできたのかを知るには、たとえばレンズで集光してイメージセンサ上に結像させる、といった手段が必要になる(一般的なデジカメはこれ)。
一方、高エネルギーのX線は通常の物質ではほとんど屈折しないため、可視光のようにレンズを使って集光するわけにはいかない。辛うじて、金属鏡に浅い角度で当たると反射するので、この性質を利用する円筒状の反射鏡が使われる。
もっとも、円筒状の金属鏡1セットだと集められるX線が少ないので(円筒に沿って浅い角度で入ってくるX線しか集光できない)、サイズの異なる円筒鏡を何枚も入れ子状に重ねた構造にして、ようやくX線望遠鏡として使えるものになる。前述の NuSTAR だと133枚もの金属板が入れ子になっている。こんなやつ。
しかし、天文学者が観測したい対象(硬X線源)からのX線は弱く、最新のX線観測衛星をもってしても限定的な観測しかできないと考えられている。次世代のX線望遠鏡では、さらに30倍程度の性能向上が求められているそうだ。こうした構造の望遠鏡を作るのは手間も(もちろんコストも)かかるのだが、どうすれば30倍もの性能向上を図れるだろうか。
そこでテープさんの出番です。
用意するものは、薄いX線反射層を作りこんであるテープ。これを、反射鏡に求められる曲面に成形しつつロール状に巻いていく。これだけ、以上。…マジで?
テープは厚みを調整した支持層とX線反射層から成り、これを巻くことで反射層の多層構造が自動(?)で作られるので、何枚もの金属板を精密に配置する必要がないということのようだ。
現在はまだ実現の可能性を検証している段階のようで、いろいろと解決すべき課題も多そうではあるが、もし実現できたらX線望遠鏡の能力に革命的な飛躍をもたらすだろうし、うまくすると天文学以外の分野にも応用できるのではないだろうか。
身近な文具であるテープは、単層グラフェンの剥ぎ取りに使われたり (Nobel Prize!) 、科学の最先端で意外な活躍をしているのだが、それにしてもX線分野(?)におけるテープの働きっぷりには驚かされるのであった。
すると (スコア:1)
こうのとり(HTV)の金色の断熱材をベりべりと剥がす(スコッチテープじゃないけど、マジックテープで貼ってあるらしい)と、何かか起きるのかもしれない。
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Nobel Prize! (スコア:1)
ここまで来たらスコッチテープの開発者にノーベル賞を挙げても良いと思ったり、思わなかったり、、、、
Re: (スコア:0)
そーいう目的のために作ったわけではないというところが微妙かも。
存命かどうかも怪しいけど。
グリーンイノベーションスチール (スコア:0)
日立金属が開発した新型工具鋼 SLD-MAGIC(S-MAGIC)は微量な有機物の表面吸着により、金属では不可能といわれていた自己潤滑性能を実現した。この有機物の種類は広範囲で生物系から鉱物油に至る広い範囲で駆動するトライボケミカル反応であると。潤滑機械の設計思想を根本から変える革命というものもある。
このトライボケミカル反応にもノーベル物理学賞で有名になったグラフェン構造になるようになる機構らしいが応用化の速度にはインパクトがある。