英国でミツバチの本能を摸したロボットを作ろうとしているらしい。
このロボットは、ハチが嗅覚で花の蜜を見つけて、ミツバチの脳に刻まれた本能で花の位置まで移動して蜜を回収。といった昆虫の本能の部分をトレースして災害現場でのガス漏れ探知や実際のミツバチの代役として、花々に受粉させるといった行為をさせようというものらしい。
ロボット工学を学ぶ人間として気になるのが、このロボットの安全性というべきところである。
アイザックアシモフの提唱するように『ロボットは人に危害を加えれはならない』故に、本能のままに行動するロボットが、そのボーダーラインを越えることはないのか?と心配になってしまう。
本能とは、生物が『生きたい!生きよう!』と考えた結果であると私自身は考えており、ロボット自身に芽生えた生存本能が人の考える制御則を超えることはないのかと、悶々と考えてしまう。
もちろん、技術の発展は喜ばしい事であるからどんどん研究は進めて行ってもらいたい。
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20121004-00010000-akoba-nb より転載
近年、原因不明のミツバチの減少が世界規模で発生しており、ミツバチが花粉を媒介する農作物の生育に影響が出始めている。原因が分かっても減ってしまったミツバチを増やすのは容易なことではないが、この問題に対して、ひとつの解決策となり得る研究がシェフィールド大学とサセックス大学の科学者らによって進められている――ミツバチの脳をシミュレートするプログラムを開発し、それを小型の飛行ロボットに搭載してしまおうというのだ。
この計画は「グリーン・ブレイン・プロジェクト(Green Brain Project)」と名付けられている(人間の脳全体をコンピュータでシミュレートしようという、IBMの「ブルー・ブレイン(Blue Brain)」プロジェクトにちなんでつけられたもの)。英国の物理化学研究委員会(EPSRC)から100万ポンド(約1.3億円)の資金援助を、半導体メーカーのエヌビディア(NVIDIA)社からハードウェア類(同社製のGPUなど)の援助を受けている。研究の目標は、ミツバチの脳を正確に再現するコンピュータモデルを開発し、それを通じてAIの進化と動物の思考回路に関する理解を促すこと。そして実際にロボットに搭載して、ハチのように自律飛行ができる機械を完成させることを目指している。
このロボットの実用的な活用法として、農作物の人工授粉を支援するといったアイデアの他に、災害時における被災者の発見などが検討されている。本当の昆虫や小動物の脳を機械的に操作して、こうした作業をこなす「サイボーグ」をつくり出そうという研究は既に行われているが、グリーン・ブレイン・プロジェクトは全てを機械で再現しようとしている点がユニークだろう。また実用的な面だけでなく、今回の研究を通じて、他の生物の脳をモデル化する際に活用できる知見が得られるだろうと期待されている。
さらに逆の視点からの活用法として、ミツバチが生態系の中でどのような役割を果たしているのかを探るといったアイデアが示されている。本物のミツバチを大量に捕まえてきて、科学者が望んでいるような実験を正確に行うことは難しいが、ロボット・ミツバチなら自由にコントロール可能というわけだ。あるいは前述のミツバチの大量失踪現象を解明する手がかりをつかめるかもしれない、とシェフィールド大学はプレスリリースの中で述べている。
実はロボットを使って人工授粉させようという試みとして、ハーバード大学の「ロボビー・プロジェクト(RoboBees Project)」が存在している。こちらの主眼はハチの動きを再現するロボットを製作することに置かれており、必ずしもハチの脳を正確にシミュレートするものではないため、グリーン・ブレイン・プロジェクトの研究者らは自らの成果がロボビー・プロジェクトにも貢献できるだろうとしている。ロボビー・プロジェクトは全米科学財団(NSF)から1000万ドル(約7.9億円)の資金提供を受けており、英米の科学者が協力すれば、本当にロボット・ミツバチが野山を飛び回る日が来るのかもしれない。
しかしその前に、現在の遺伝子組み換え作物と同じような議論が起きるだろう。当初はあくまでも実験的に放たれるだけだろうが、ロボット昆虫やロボット小動物を自然界に放っても大丈夫なのか、様々な疑問が持ち上がるはずだ。こうした問題は往々にして技術が先行し、法制度や倫理観の問題は後追いになってしまう。生物の理解のためにロボットを開発するのは良いとして、それを社会の一員として迎え入れるにはどのような準備が必要か、いまから議論を開始しても早過ぎないのではないだろうか。