Torisugariの日記: フォントのライセンス 3
SIL Open Font License系のライセンスは、いわゆる「オープンソース」のライセンスでも、他のソフトウェアとは勝手が違う、という話は、そこかしこで耳にします。それに少しだけ関係がある話です。
郵便局は、はがきに関する規定をいろいろ出しているのですが、その中に、「宛先郵便番号は(自動仕分けするから)OCR-Bだったらいいな」という趣旨の文面があります。
もうちょっと正確にいうと、『内国郵便約款』「別記」には、「番号枠内に手書きする場合」と「(枠外に)印刷する場合」の規定があって、「(枠外に)印刷する場合」は、「別記」内の挿絵で指定されたフォントを使わなければいけません。ですから、場合分けの失敗により、「枠内」でかつ「印刷する場合」は曖昧なのですが、まあ、こだわりがなければ、そのフォントを使うに超したことはないでしょう。そして、明記されてはいないものの、このフォントこそがOCR-Bです。
ただし、週刊少年ジャンプに織り込みのアンケート葉書をみると、どう考えても「(枠外に)印刷する場合」に相当するのに、郵便番号はOCR-Bではありません。また、郵便局のサイト内にある「郵便番号・バーコードマニュアル」では、バーコードのフォントにOCR-Bを指定していますが、郵便番号は別のフォントです。
つまり、なんというか、このルールはかなり緩く運用されているわけです。さらに言うと、かつて、書籍のISBNはOCR-Bでしたが、今は(おそらく、ISBNの下にあるバーコードにもOCR-Bが使われていて紛らわしいため)使用が禁止されています。何でもかんでもOCR-Bにしておけばいい、というわけでもないのです(参考: ilyaの日記:ISBNの拡張あるいはOCR-Bフォントの没落)。しかしながら、年末に売っている例の系統のソフトウェアには、ほぼ必ず同梱されていて実際に郵便番号の描画で使用されていますから、OCR-Bの採用に起因する誤配の心配は無用でしょう。(参考: 『筆まめ24FAQ』 2013年9月6日「郵便番号が印刷されない、表示されない」)
-----
いささか話が脱線しましたが、とにかく、私はOCR-Bを利用するにあたって、会津若松市版を自分の書いたソフトウェアに同梱したのですが、ここで気になったのがSIL Open Font Licenseの「予約名の一意性」に関するくだりです。会津若松市版のウェブサイトには、予約名に関する記述が一言もありません。しかし、FAQでいうところの"primary name as presented to the user"は、この場合は「OCRB」です。
「OCRB」が予約名だとすると、奇妙なことが起こります。もともと、OCR-BはISOで規定されており、JISにも規格があります。各社が有料のフォントを販売しており、また、再配布を禁じて無料で提供している会社もあります。ですから、いくらライセンスが「名前の一意性」を確保しようとしても、フォントが2重にインストールされたら、バッティングすることは避けられません。そもそも、会津若松市は、ソフトウェア側が「OCRB」を決め打ちで呼び出してくる場合に、OCR-Bを欠くマシンを正常に動作させるために、代替フォントを作ったわけですから、彼らにとっても、それ以外の人々にとっても、名前を「OCRB」以外にするのは本末転倒です。
会津若松市版は、数字だけが収録されています。そして、郵便番号はそれで十分です(ただし、枠がない場合はハイフンも必要です)。他方で、これにアルファベットを付け加えると、「OCRB」として配布できないのなら、どこかに問題があるということになります。そこで、もう一度ライセンスを隅から隅まで読むと以下のくだりがあります。
http://scripts.sil.org/cms/scripts/page.php?item_id=OFL_review
OLD>>> "Reserved Font Name" refers to the Font Software name as seen by users and any other names as specified after the copyright statement.
NEW>>> "Reserved Font Name" refers to any names specified as such after the copyright statement(s).
EXPLANATION: This avoids disagreement on what is meant by 'as seen by users', and makes it clearer to everyone exactly which names are reserved. This is the only operational change in the license. It means that authors must explicitly list any names they wish to have as Reserved Font Names. No font names are reserved by default. Note that this is a significant change for those releasing their fonts under the OFL.
つまり、「予約名」は必須ではなく、会津若松市は予約名を指定していないので、予約名が存在しないことになり、一件落着です。
「"Reserved Font Name" refers to any names specified as such after the copyright statement(s).」だけを見て、「このライセンスをあなたの作ったフォントに適用するにあたって、必ずしも予約名を指定する必要はない」と解釈するのは、あまりにもアクロバティック過ぎるでしょう。しかし、バージョン改定の履歴からは、「"primary name as presented to the user"が自動的に予約名になるわけではない」という意図があるのは確かで、上記のような結論に落ち着くようです。
OCRが読みやすいように (スコア:0)
フォントの方で歩み寄ってたけど、OCRの性能向上で数字ごときの読み間違いはほとんどなくなって規定は有名無実化したと。
Re: (スコア:0)
そうなんだと思います。まあ、フォントの種類だって知れてますからね。手書きを判別することを思えば、出回っているフォントくらいは何ともないんでしょう。
Re: (スコア:0)
今時は数字だけでなく、漢字の住所も併せて認識して、類推してるとか。