akiraaniの日記: GoogleBooksの価格破壊 13
GoogleBooksの和解案が世界中を巻き込む大騒動になったのは記憶に新しいが、米国以外では歓迎しないムードが強い。原因はGoogleの強引なオプトアウト的手法にあるが、その是非は語りつくされた感があるので、ちょっと別の切り口で見てみたいと思う。
今回注目したいのは、和解内容の金銭的な部分について。
GoogleBooks和解の金銭条件は以下のようになっている
- 電子化にあたって60$を支払う
- 出版社と著者へ売り上げの63%を支払う
- 売り上げには電子書籍の販売のほかに、広告収入も含まれる
ちなみに、出版社と著者の取り分は、基本折半、絶版から期間が長い書籍ほど著者の取り分の割合が大きくなり、版元が倒産している場合はもちろん全部著者にわたることになる。
本来、電子書籍化にあたって販路の確保や電子化作業は出版社が行うべきものであるが、電子化作業も販売もGoogleが勝手に行う。これは裏を返せば権利者は電子化作業にまつわるコストは一切負担しなくて良いということでもある。
電子書籍販売に当たっては出版者の仕事は事実上ないといってもいいだろう。
基本的にGoogleBooksは流通しなくなった書籍について扱っているため、紙の書籍から著者への収入見込みはまったくないケースが大多数となる。ということは、著者から見れば出版社は何もしていないのに上前だけをはねている存在に成り下がってしまうということになる。
もしGoogleBooksが成功すると、このことは著者からの不満となって問題になる可能性が高い。
通常、電子書籍の販売を行うと、出版社は書籍の電子化、販路の整備、宣伝を行い、売り上げの15%程度(おそらくこれくらいが相場のはず)を著者に支払う。ところが、これらの作業をGoogleが行った場合、売り上げの63%が支払われるのだ。それも、通常はまるまる出版社・販売ポータルの取り分となる広告収入ですら印税の対象になる。
これはとんでもない価格破壊なのではないだろうか。
もし、世界の電子書籍市場を牽引する米国でGoogleBooksの相場が著者契約のスタンダードになり、米国以外が旧態依然のままの販売形態を維持していたとすると、クリエイターはどう思うだろうか。
今は、オプトアウト方式という強引な手段から著者団体からの反発も強いが、遅かれ早かれ電子書籍への対応自体は避けられない。将来、書籍の電子化が当たり前になったとき著者が作品をどこに託すのか、その判断基準としてGoogleBooksが作り出す著者印税の相場は大きな役割を果たすのではないだろうか。
補足:12/28追加
米国と日本での出版システムの違いについてある程度予備知識がないと、わかりにくい部分があるかもしれない。
日本ではいわゆる出版権という権利が存在し、出版社は独占的に出版する権利を得る代わりに、継続的に在庫がなくなれば増刷して絶版にするまで市場に商品を提供する義務があります。
ところが、米国にはこんな制度はないので、基本的に書籍は最初に売れる見込みのある分だけ刷って増刷しません。このため、日本で言うところの絶版の概念自体がありません。日本みたいに返品制度もないので、流通在庫が取次ぎに戻って再入荷なんてこともありません。なにしろ、大半の書籍が刷ったその日に絶版なので、小売店から在庫がはけてしまった段階で事実上購入不可能になります。
継続して出版するという概念がないので、著作者と出版社との契約も日本とはずいぶん内容が違うはずです。今GoogleBooksの対象になっている大半の書籍も、出版社と著者の契約は発行時点で清算されていて、継続してロイヤリティが発生することを想定していないものばかりのはずです。このため、出版社サイドから電子書籍化を行う場合、以前の契約に追加するのではなく、新たに再契約する形になっていると思われます。
なので、電子書籍化にまつわるコストをすべてGoogleが負担しているという事実は、電子書籍化した後での再契約時に大きな意味を持つのではないかと考えられるわけです。
新作 (スコア:1)
次の一冊を作るのにどれだけ協力してくれるか、は?
それにGoogleから作家に依頼することはなさそうだし。
個人的には有料の図書館になるんじゃないかと。
Re:新作 (スコア:1)
Googleに託すか、ではなく、今回Googleの出した条件が今後の相場が影響するか、という話ですよ。
米国の場合、日本と違って個人でやってるエージェント業務してる人もたくさんいるので、電子出版のみなら本当に出版社がなくても問題が出ない可能性もありますが。
どっちにしても、電子書籍の販売に当たって交渉材料として引き合いに出されるのは確実でしょう。
しもべは投稿を求める →スッポン放送局がくいつく →バンブラの新作が発売される
価格決定権は? (スコア:0)
売上げのパーセンテージだけ示されても。
本来価格決定権は権利者の強力な権利の一つ。
それが取り上げられるのならば、当然権利者側は抵抗するでしょう。
Google自体がそれで稼ぎたいのなら無いかも知れないが、なんなら自社サービスの
プレミアムの為にそれらの価格を$0としてしまえば、支払い自体不要になる。
Re:価格決定権は? (スコア:1)
権利者というのは著作者と出版社のどちら?
#コメント上で二つの切り分けができてない時点で、こちらの意図が伝わってないのが丸わかりなんですがね……。
#もひとつ揚げ足取るようですが、広告売り上げも印税対象に含まれるので価格が0でも支払いは不要にならないですよ。
しもべは投稿を求める →スッポン放送局がくいつく →バンブラの新作が発売される
Re: (スコア:0)
Googleによる配当は出版社、著作者などで分配されるべきものですから
どちらが価格決定を主導していようと同じことです。
この63%の数字を印税と比べてお考えになるのがそもそも間違いのもとです。
Re:価格決定権は? (スコア:1)
やっぱりわかってないな。
出版社と著者を明確に分ける必要があるのは、それまでは電子書籍に関して出版社が行っていた作業をGoogleが肩代わりしてるから。
「Googleがあんなに安くできることなのに、どうして出版社はそこまで上前をはねるのか?」という不満が著者から出て、それでもなお今まで通り印税相場が問題なく維持できると思う?
流通が強くて商慣習主体で動いてる日本ならともかく、個人でエージェントを雇って必要とあらば訴訟も簡単に起こす米国で影響が出ないというのは無理がある。
ちなみに、価格決定権が100%Googleにあるという前提での反論みたいだけど、それは確かな話?
何年も裁判して著作者出版社が合意した和解案が、そこまでざるな仕組みになっているとは考えにくいんだが……。
しもべは投稿を求める →スッポン放送局がくいつく →バンブラの新作が発売される
Re: (スコア:0)
Googleが企画、編集、校正からやってくれるなら出版社の取り分は
考えなくてよくなるかも知れませんけれど
スキャニングの配信は電子出版業務の一部を買って出たに過ぎません。
37%はGoogleが持っていってしまうので電子配信にかかるはずだった
経費が浮いて0になるのでもありません。
紙の書籍に10%、電子配信に15%といった印税の相場があるとすれば
電子化の手間のない書籍の分配割合と経費の安い配信の利益率に沿った
相場が作られることになるのではないでしょうか。
これが持ち込み原稿の電子書籍化、自費出版のAppStoreのような
サービスだったならおっしゃるようなことも起こるのかもしれませんね。
#破壊すべき競合があるのか分かりませんが。
価格決定の仕組みは追っていません。#1693441とは別ACです。
Re:価格決定権は? (スコア:1)
>価格決定の仕組みは追っていません。#1693441とは別ACです。
じゃあ、もともと的外れな意図を持ったコメントだったのですね。
マジレスしてすみませんでした。
しもべは投稿を求める →スッポン放送局がくいつく →バンブラの新作が発売される
作家への支払いってどうなっているの? (スコア:0)
Re:作家への支払いってどうなっているの? (スコア:1)
版権レジストリ [cnet.com]を通じて支払われるんじゃないですかね。
まあ、細かいことは和解案に書いてあると思いますので、興味があればこのあたり [googlebooksettlement.com]調べてみればいいかと思います。
しもべは投稿を求める →スッポン放送局がくいつく →バンブラの新作が発売される
Re: (スコア:0)
どうもろくに書いてないようですが [srad.jp]。
まぁ、Googleらしく「多少の粗があっても見切り発車して途中で修正する」ということかもしれませんけどね。さすがに権利関係が絡むとそういう態度は許されないと思うんですが。
Re:作家への支払いってどうなっているの? (スコア:1)
米国の権利者には支払い手順用意されてるんじゃないの?
著作権使用料の分配なんてのは書籍ではじめて行われる事業じゃないし、米国で一般的に利用されてる手順がなんかしらあるでしょ。
そのあたりを調整するのも出版レジストリの仕事なんじゃないかという気もしますが、少なくとも米国の権利者はそれで納得している以上、受け取れるめどは立ってないとおかしいですよ。
#それを日本から利用しようとすると難しいかもしれませんが、和解対象には含まれなくなったので、まあ無関係ですよね。
しもべは投稿を求める →スッポン放送局がくいつく →バンブラの新作が発売される
売れっ子以外には十分選択肢じゃない? (スコア:0)
紙の本が好きなだけ売れる作家先生ならGoogleを相手にする必要は無いでしょう。
でも、絶版状態が長く続いてて、新刊出したくてもなかなか相手にされないような、
売れ筋のメインストリームから外れている書き手は、
Googleに頼るメリットが十分にある。
それぞれの立場で「選ぶ」事が健全だと思います。
(書き手を束ねる団体が勝手に交渉したりしなかったりするんじゃなくてね)