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日記

akiraaniの日記: 優先座席付近で携帯電話の電源を切る、という話の嘘 6

日記 by akiraani

この話、定期的に話題にしないと知らないまま盲信しちゃう人がいまだに出るようなので、せめて日記に。

結論から言うと、電車などでよく「優先座席付近はペースメーカー使用の方がいるかもしれないので携帯電話の電源をお切りください」という感じのアナウンスがされますが、あれ、科学的な根拠はありません。

件のアナウンスの根拠とされているのは、平成8年に出された医用電気機器への電波の影響を防止するための 携帯電話端末等の使用に関する指針の以下の部分になります。

IV.植込み型心臓ペースメーカ装着者及び補聴器使用者への配慮

1 外見だけでは特定できない植込み型心臓ペースメーカ装着者への配慮
  携帯電話端末、PHS端末、コードレス電話又は小型無線機(アマチュア無線機、パーソナル無線機及びトランシーバ(特定小電力無線局のものを除く)等)の所持者は、第Ⅱ項で示したような植込み型心臓ペースメーカ装着者と近接した状態となる可能性がある場所(例:満員電車等)では、その携帯電話端末等の無線機の電源を切るよう配慮することが望ましい。

[理由] 近くに植込み型心臓ペースメーカ(携帯電話端末等から発射される電波により影響を受ける可能性のある生命維持用の医用電気機器)を装着した人がいる可能性があるため。

2 補聴器使用者への配慮
  携帯電話端末又はPHS端末の所持者は、補聴器を使用している者と近接した状態となる可能性がある場所(例:満員電車等)では、その携帯電話端末又はPHS端末の電源を切るよう配慮することが望ましい。

[理由] 近くに補聴器(ごく接近した状況では雑音が混入することがある。)を使用している人がいる可能性があるため。

 ポイントになる部分を強調しましたが、上記の注意事項は「混雑した場所」というのが条件になっています。
 詳しい理由は以下にあります。

II. 植込み型心臓ペースメーカ装着者の注意事項

  植込み型心臓ペースメーカは、その近くで携帯電話端末、自動車電話、ショルダーホン、PHS端末、コードレス電話及び小型無線機を使用したときに、電波による影響を受ける可能性がある。実験結果によれば、この影響は一時的かつ可逆的(元に戻る)であるが、植込み型心臓ペースメーカを装着している人は、次の事項を遵守することが望ましい。

1 携帯電話端末
  携帯電話端末の使用及び携行に当たっては、携帯電話端末を植込み型心臓ペースメーカ装着部位から22cm程度以上離すこと。
    また、混雑した場所では付近で携帯電話端末が使用されている可能性があるため、十分に注意を払うこと。

2 自動車電話及びショルダーホン
  植込み型心臓ペースメーカを自動車電話及びショルダーホンのアンテナから30cm程度以内に近づけないこと。

3 PHS端末及びコードレス電話
  PHS端末及びコードレス電話の使用に当たっては、1の携帯電話端末と同様に取り扱うこと。

[理由] PHS端末及びコードレス電話を植込み型心臓ペースメーカへ近づけた場合に全く影響を受けないわけではなく、また、PHS端末及びコードレス電話と携帯電話端末が外見上容易に区別がつきにくく、慎重に取扱うという意味で、携帯電話端末と同様に取り扱うことが望ましい。

4 小型無線機(アマチュア無線機、パーソナル無線機及びトランシーバ
 (特定小電力無線局のものを除く)等)の使用
  小型無線機は携帯電話端末と比較して植込み型心臓ペースメーカに影響を与える可能性が高いため、小型無線機を使用しないこと。

ポイントになる部分は、以下の3点です。
・携帯電話端末を植込み型心臓ペースメーカ装着部位から22cm程度以上離す
・影響は一時的かつ可逆的(元に戻る)
・混雑した場所では付近で携帯電話端末が使用されている可能性がある

この22㎝という数字の根拠なんですが、これは携帯電話が出す周波数それぞれで規格上の最大出力のノイズを出した場合に、ペースメーカーがどれくらいの距離で影響を受けるのかを確かめた実験から来ています。平成8年に行われた実験において、もっとも影響する距離が長かった周波数帯がPDC、つまりmovaが使っていた周波数帯で、当時発売されていたペースメーカーの19%で電波による誤動作が確認され、その中で最も影響が出始める距離が長かった騎手は15cmで影響が出はじめることが確かめられています。
この15cmに安全係数として出力が半減する√2倍をかけた数字が22㎝の根拠になっています。

では、優先座席にペースメーカー装着者が座っていたとして、どのくらい配慮する必要があるのか考えてみましょう。
優先座席に座っている人と、その前に立っている人の距離って22cmより近い状態が長時間持続しますか?
はい、子供でも分かりますね。22cmなんてほぼ密着状態です。そんな距離になることなんてありません。、ペースメーカーは体の中心部に埋め込まれているものですから、横向きに並んで座っている限り、たとえ、隣に座っていたとしてもポケットに入っている携帯電話が22cmの距離内に入ることはまずありえません。

次に重要なのが、影響は一時的なものだというところですね。仮に影響が出たとしても、すぐに距離をとれば正常な状態に戻るわけです。ペースメーカーの誤作動ってつまるところ不整脈なわけで、数秒乱れる程度ならそこまで神経質に気にしないといけないものではないんですね。
だから、シチュエーションが、電波源が22cm以内に押し付けられたまま長時間離れない場合に限定されているわけです。それが、三つ目のポイントである「混雑した場所」というキーワードにつながります。
逆に言えば、混雑してない場所なら特に気にする必要はないんだ、ということになります。つまり、座席に座ってる人を気にする必要はないわけですね。

そして、混雑している時にペースメーカー装着者が優先座席に座れるかといわれるとそんなはずはなく、座席に座れずたっているのであれば優先座席付近ではない場所にもいらっしゃるわけです。座ってる人よりも立ってる人にこそ注意が必要なわけですから、優先座席付近というキーワードには何の意味もないということがわかりますね。

本当に気にするのであれば、混雑した車内に入る前に電源切っておけというアナウンスを、ホーム上で流すすべきだったのではないかと思います。
加えて言うなら、影響の出る機種自体が全体の19%とそんなに多い割合でもないので、本当に危険ならその19%の機種を販売停止にしておくべだったんですよね。実際には、そこまで気にする必要がない問題なので放置されているわけですが。

ちなみに、指針が今でも有効なのかというと、実はアップデートされています。
植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針

1 携帯電話端末の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針

平成24年7月25日以降サービスが行われている方式の携帯電話端末(スマートフォン等の無線LANを内蔵した携帯電話端末を含む。)による植込み型医療機器への影響を調査した結果、一部の植込み型医療機器について、携帯電話から最長で3cm程度の離隔距離で影響を受けることがあったことから、以下の通り取り扱うことが適切である。
なお、PHS端末については、影響を受けた植込み型医療機器はなかったが、携帯電話端末と外見上容易に区別がつきにくいため、PHS端末の所持者は、必要に応じて植込み型医療機器の装着者に配慮することが望ましい。

ア 植込み型医療機器の装着者は、携帯電話端末の使用及び携行に当たっては、植込み型医療機器の電磁耐性(EMC)に関する国際規格(ISO14117等)を踏まえ、携帯電話端末を植込み型医療機器の装着部位から15cm程度以上離すこと。
また、混雑した場所では、付近で携帯電話端末が使用されている可能性があるため、注意を払うこと。

イ 携帯電話端末の所持者は、植込み型医療機器の装着者と近接した状態となる可能性がある場所では、携帯電話端末と植込み型医療機器の装着部位との距離が15cm程度以下になることがないよう注意を払うこと。なお、身動きが自由に取れない状況下等、15cm程度の離隔距離が確保できないおそれがある場合には、事前に携帯電話端末が電波を発射しない状態に切り替えるなどの対処をすることが望ましい。

平成8年の調査では14cmあった影響距離が今や3cmにまでになっています。19%あった影響を受ける機種の割合も激減しているはずです。
規格上出力の大きかったPDCがとっくの昔に停波しているというのもありますが、技術の進歩でペースメーカーの安全性が高まっているというのも影響しているんじゃないかと思います。
3cmと言えば、もはや密着した状態でも埋め込み部分がその距離になることは事実上ないと考えていいでしょう。ペースメーカーはバッテリー交換が必要なので古いものがいつまでも使われるということがありませんので、携帯電話の電波でペースメーカーが誤動作するのは過去の話、都市伝説同然であると考えてよいかと思います。
しかし、影響距離15cmで22cm以内という指針だったものが、なんで3cmにまで減少してるのに、15cmとなっているかは数値としておかしいだろうという気がしないでもないですな……。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by Anonymous Coward on 2015年06月29日 15時26分 (#2838841)

    調査したのは日本国内の機器だと思われますが、『国際規格の電磁耐性を踏まえ』とあるので海外製のものも大丈夫な距離ということでしょう。

    ついでにPHSについても『装着者に配慮することが望ましい。』とあるので、
    どちらかというと安全性についてというよりも注意されないためにはどうしたらいいかに主眼がおかれていると思います。

  • by Anonymous Coward on 2015年06月29日 18時56分 (#2838934)

    キャズムと同じようなもので、状況が変わったことが広く行き渡るのには途中で情報の谷を越えなければいけなかったり、
    広く周知されるには(よく知ってる人間からすると)相当に長い時間がかかるもの、なんだろうと。

    また、この話の場合、実際の装着者以上に「社会正義欲求を満たしたい周囲の人」が文句付けてくるというのもありますね。
    鉄道会社の動きが鈍いのも、そういう人{が|と}トラブル起こすのを避けたいというのがあるのかも。

    • by Anonymous Coward

      まぁ、携帯電話のモックアップを見ただけで、人工心臓に誤動作が起きたと主張する人がいますからねぇ。

      • by Anonymous Coward

        電卓を使っていたらスマホを叩きたいだけの老人に絡まれた、とかな。
        ペースメーカーっていう装置のイメージが鉄道会社の体質と案外合ってるんじゃね?
        それっぽいルールを日常的に執行できるのが楽しいのかもしれない。

      • by Anonymous Coward
        あんなに大きな声で恫喝できる程元気なら、ペースメーカーなんかいらないだろと思う。
        本当に思い上がりにも程があるわ。
  • by Anonymous Coward on 2015年06月29日 22時44分 (#2839060)

    とはいえ今そういうルールになっているのだから、
    がらがらの車内で優先席に座るのはまったく構わないので、
    そんな時ぐらいはケータイ・スマホは我慢しようよ、
    とは思う

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クラックを法規制強化で止められると思ってる奴は頭がおかしい -- あるアレゲ人

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