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日記

akiraaniの日記: アンチコモンズの悲劇回避とフリーライダー対策 2

日記 by akiraani

 なんか気分で専門用語並べてみたら経済学者のコラムみたいなタイトルになったけど、内容的には昨日の続きです。

 参考:【MMD】スマホ向けサービス「IJIRO」公開から終了までのまとめ

 昨日の日記にも書いたように、3Dモデルを使った動画の著作権利関係というのはどうしても複雑になる。そのまま何の対策もしなければ権利許諾を取らなければいけない人間の数が多くなりすぎて身動きが取れなくなる、いわゆるアンチコモンズの悲劇に陥ってしまうわけです。
 MMDのコミュニティはルールがめんどくさいと思っている人は、大きな勘違いをしている。多人数の著作物を統合して何か作るという作業は本来もっともっと面倒なもので、MMDコミュニティの暗黙の了解という柔軟で弾力性にとんだ運用のおかげで、権利処理にまつわる多くの面倒事から解放されているのである。公開されている素材のほとんどが、ダウンロードするだけで利用できるというのは、普通はあり得ない。

 さて、そのおかげで上質な素材が大量に提供される環境が出来上がったわけだが、次に問題なるのかフリーライダーである。暗黙のルールを守ることで面倒事が免除されているわけだが、ルールを守らず成果物だけがめようと考えるものは後を絶たない。商用利用はもちろん、作者のふりをして転載をするといった、ルールを守らずコンテンツを利用するフリーライダーがどうしても出てくる。そういう連中が一定数以上いるといるとコミュニティは崩壊する。
 ニコニコ動画運営はそういったフリーライダーを防ぐため様々な施策を実施している。それが昨日の日記にも書いたニコニコモンズやコンテンツツリーのシステムであり、ニコニコ動画の運営が相当な人出を費やして行っている不適切なコンテンツの巡回削除である。

 MMDの各種素材を利用するためのルールは、作者である樋口氏のポリシーを継承している部分が強く、その意味ではMMD文化と呼んでもかまわないと思う。が、なまじ有名になりすぎてしまったがために知らない人も多いと思うが、MMDは無償公開されてはいるが、DirectX上という極めて限られたプラットフォームでのみ動作する個人作成の動画出力ツールでしかない。フリーウェアではあってもオープンソースでもフリーソフトでもない。
 それはMMD関連の他のツールも同じ。というか、AviUtl、つんでれんこ、ゆっくりMovieMakerといったニコニコ動画というプラットフォームで育ったツールはほとんどが個人作成のフリーウェアで、オープンソースではない。
 どのソフトウェアも公開時に悪意ある利用や盗用を想定した対策は行われていない。それらの対策を行っているのがニコニコ動画というプラットフォームとニコニコ動画上で作られたコミュニティであるというところまで共通している。なので、個人的にはニコ動文化と呼ぶべきものではないかと思う。

 さて、ここまでおさらいしたところで、IJIROの何がいけなかったのかという話を。
 IJIROの何が問題かというと、以下の2点だと思う
 ・盗作対策が皆無で、むしろ助長しているとしか思えない告知を行っていた
 ・MMDのコミュニティ内で蓄積された知財資産にフリーライドしようという魂胆があまりにあからさまだった

 サービスの事前告知で、MMDモデルであるニコニ立体ちゃんを使った面白画像を使い、優秀なモデル投稿者には賞金を出すということでモデルを集めようとしていたわけだけど、そんなことしたらMMDの人気モデルを違法にアップするパクリユーザーが出てくることは容易に予想される。本来であれば実効性と説得力をもった盗作対策を提示しておかなければいけなかったのに、むしろ借りたモデルで好き勝手やりましょうって宣伝してたわけです。この告知が盗作を助長することはだれの目にも明らかで、これで反感を買わないわけがない。

 というわけで、モデラーからは警戒され、IJIROへのモデル投稿を規約で明示的に禁止する作者が出始めた。ただ、これ自体はIJIROというサービスに対してなんら影響を与えるものではない。
 なぜかというと、IJIROへ投稿するモデルは規約上では作者が自分で作成したものか個別に許諾を得ている場合に限られているから。そもそも無許諾のモデルを投稿してはいけないことに「規約上では」なっていたからだ。IJIROに参加するつもりがないモデラーがいること自体は本来なら問題でも何でもないはずなのだ。
 それなのに中止されたということは、IJIROがシステム側で無許可モデルのアップロードを防ぐ方法も、無許可モデルにあとから対処する手段も用意できなかったものと思われる。

 あともう一つ重要な事実がある。別にMMDモデルをインポートできるというのをやめてしまえばサービス継続は可能だったはずだが、それも行われなかったということである。IJIROの運営であるセルシスは3Dモデルを動かすソフトや、モデルを作成するソフトを販売している。それらの自社製品の形式だけを対象にサービスを継続することができない、という判断が行われたということだ。
 これは、MMDコミュニティやニコニコ動画運営の努力で蓄積されていたこれまでのMMD資産にフリーライドすることを前提にサービスが提供されていたということに他ならない。
 賞金まで出すということは、広告や、IJIROで作成されたコンテンツを流用するなどのなんらかの方法でマネタイズすることが考えられていたはず。それがMMDモデルのインポート機能なしには成立しないというのであれば、MMDコミュニティの資産にフリーライドするつもりだったと思われてもしょうがないかなぁ。
 この件を後に引かせないためにも、MMDモデルのインポート機能をなくしてサービスを再開すべきなんじゃないかと……。

 どうしてもMMDモデルを使わせて欲しいなら、ニコニコ動画上にIJIROの公式チャンネルでも作って、告知その他もニコ動の生放送とかでやってエンドユーザーの反応をリアルタイムで見て、きちんと盗作対策をするくらいしないと受け入れられないんじゃないかと思う。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by Anonymous Coward on 2016年05月20日 1時15分 (#3015685)

    ニコ動で艦これMMD動画を見まくっている身としては、あんまりモデルや動画製作者の方々のモチベーションが下がる
    状況が起きるのはありがたくないと思っています。

    表題に関して言うと、akiraaniさんも書かれていますが
    MMDは「規約を守ろう」という一見明白なルールがある割に
    ニコ動という枠の外に出てしまうとその規約はフリーライド抑止の役に立たない。
    そのフリーライドや規約違反がMMDアセットや製作者に対して脅威になりかねないという状況があると。
    (二次創作の同人誌の「頒布」のようなエクスキューズが成り立たない)

    スラドの反対意見を勝手にまとめると「目的達成の役に立たない規約に意味はあるのか」
    「状況の変化を受けて泥縄的に書き換わる規約を信用できるのか」というように見えましたが
    これ自体は意味のある指摘ではないかと考える次第です。

    私も同人誌を作るし二次創作好きなので、グレーはグレーのままみんなで上手いことやろうという
    現状には特に異論はないのですが、「白黒はっきりついてないと嫌だ」という人には
    収まりが悪いのでしょう。

    IJIROの件はMMDモデルのインポート不可としても、IJIROで読めるフォーマットに変換できてしまったらやっぱり同じなので
    違反アイテムの削除を厳格に行うことが担保されないとやはり難しいでしょう。

    • by Anonymous Coward

      重箱の隅ですが、つんでれんこは収録されている外部ツールをのぞけば実質オープンソースですよ。
      実体は全部バッチファイルですし。

      また全然別の話ですが、MMDではアセット製作者に対するリスペクトが非常に重視されているにもかかわらず
      商用作品の歌曲・BGMやSEなどをそのまま動画に使用することが極めてカジュアルに行われていることに
      強烈なダブルスタンダードを感じます。

      実際それも含めてニコ動文化/ネット文化ということなのかもしれないし、ちゃんと気を使って
      フリーBGMや許諾ありのBGMで固めている作品もありますが……

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長期的な見通しやビジョンはあえて持たないようにしてる -- Linus Torvalds

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