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日記

akiraaniの日記: 動画実況でだけクトゥルフ神話TRPGが盛況な理由を考える 13

日記 by akiraani

ネット文化における怪現象の一つに、ネット実況でのクトゥルフ神話TRPG(以下CoC)の異様な人気がある。
TRPGの実況動画では、一番人気と言うより、シェア的にはもはや大多数を占めているという感じらしい。

こう言うとなんだが、コンベンションなどでリアルに遊んでいる層を見ると、CoCは知る人ぞ知るかなり深いマニア向けのシステムである。RPGのメインストリームは今も昔もファンタジーであり、剣と魔法のの勇者の物語こそが王道なのである。コズミックホラーなどというホラーの中でもとんがったCoCは、一部の熱狂的ファンに愛されてはいたものの、知名度の大半はネタとしてのものでしかなかった。
スポーツに例えるとカバディのような存在なのである。

コロナ禍以降コンベンションなどにもあまり顔を出していないが、状況は変わっていないはず。それがどういうわけか、動画実況というフィールドにおいてはCoC一強とよばれるほどの隆盛を見せている。

きっかけは何かと言われると、おそらくは「這いよれ!ニャル子さん」のTVアニメシリーズ(2012年4月クール)の大ヒットであろう。状況証拠でしかないが、ほぼ間違いないというか、それ以外に理由が考えられない。
今をさかのぼること約10年、2012年頃になる。当時、アナログゲーム実況と言えば日本ではニコニコ動画の卓ゲと呼ばれる動画が主流だったのだが、そこで突如してCoCリプレイ動画が大量発生する。
2011年には存在が誤差の範囲だったCoC動画が、2012年に突如として最大勢力に躍り出て、さらに年を追うごとにシェアを拡大。気がつくとダントツのトップシェアを誇るまでになった。

そもそも、CoCはシステムとしてはかなり古いものだ。TRPGというホビーが日本に持ち込まれたのは1980年代後半なのだが、その頃にはすでに米国に発売されていて、日本でも翻訳版が発売されている。それだけの歴史があってなお、一部の熱狂的ファンがいる知名度だけはあるカルト作品でしかなかった。
ただ、アニメのブームに乗っかっただけであれば、アニメの流行が移り変われば投稿数は元に戻るはずで、今日まで生き残っているはずがない。それがなぜなのか、ということについて考えてみたい。

重ねて言うが、実際にTRPGの現場で遊ばれているかどうかは別で、これはTRPG実況動画というメディア限定の状況である。
動画が受けることで、昔に比べてユーザーは明らかに増えては居るのだけど、それ以上の状況にはなっていない。
と、言うことは、CoCには他のTRPGにはない”動画受け”する何かがある、と考えるのが自然だろう。

一般的なTRPGとCoCが異なる最大のポイントは正気度判定、通称SANチェックシステムであろう。詳細は調べたらすぐわかるので省くが、これは戦闘をしなくてもプレイヤーキャラクターが破滅するというルールである。
クトゥルフ神話の神々はファンタジーRPGに登場するモンスターとは一線を画す強さなので、戦ったら問答無用に死ぬ。このため、クライマックスは基本的に戦わずにどうにかしてゲームを盛り上げる必要がある。そこでSANチェックを絡めた謎解きをすることでクライマックスの緊張感を演出する。
この、クライマックスが戦闘で終わらないという特徴が、動画受けした一つの要素なのではないかと思う。
TRPGのクライマックスと言えばボスとの戦闘なのだが、動画でその様子を実況しても描写がかったるくていまいち盛り上りにくいが、CoCは戦闘ではなくて比較的シンプルな判定で状況が進展する。なので、肝心なところで動画がダレにくいというのはあるのではないだろうか。

もう一つ、動画にするに当たって影響を与えたであろうポイントとして、クトゥルフ神話という題材が元々シェアードワールドだというところも見過ごせない。
クトゥルフ神話体系を最初に提示したラブクラフトの作品が本格的に評価されたのは彼の没後。このため、アンソロジーという形で様々な作家がラブクラフトの世界観を元に作品を発表して、様々な派生作品を生み出してきた。このような世界観を共通のフリー素材として派生作品を生み出す形式を、シェアードワールドと呼ぶ。
有象無象のアマチュア作家が玉石混交で作品を投稿する動画投稿サイトにおいて、シェーアドワールドというのは大変相性が良い。実は、インターネットが生まれて、このようなシェアードワールドで成功した作品が実はすでに存在する。
ニコニコ御三家の一つ、東方Projectの幻想郷を舞台とする作品群である。他にもゲームなどを題材にしてシェアードワールドが形成されている作品群というのは複数あり、動画投稿サイトとシェアードワールドとの相性のよさは疑う余地がない。

それと、もう一つ、動画受けにするに当たって重要だと思われるポイントが、基本的に何をしても許される世界観である、という点だろうか。
だいたい原作であるクトゥルフ神話からして、アザトゥースの見る夢こそがこの世界であるみたいな究極の夢オチ設定がなされており、どんな無茶な設定も受け入れるだけの素養がある。いわゆる著作権的なものもとうの昔に切れていることもあって、どんな無茶な設定や要素を持ち込んでも、「この作品の設定だとこうなんだ」で許される。
「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌」とか商業作品でやって許されるのは、もともとそういう世界観だから、なのである。とにかく過激で無茶なことをやって受けを取ろうとする動画投稿サイトで非常に使いやすい設定であるし、作品人気にも一役買っているのではないだろうか。

以上の三点がCoCが動画受けした理由なのではないかと思う。

なお、本稿におけるニコ動におけるニャル子さんあたりのデータについては、以下の参考文献のデータに基づいています。
・電源不要同人クロニクル 総集編暫定版2 2016(CM81 -CM90)/サークルT・N・G

  • 5年くらい前。ゲームマーケットでTRPGのシナリオ集を出そう、ということになり、どのシステムが人気かざっくり調べたところ「クトゥルフ神話TRPG」が一番大きかったのを覚えています。おそらく今でもそうでしょう。
    思えば、実際、仲間内で初めて遊んだTRPGシステムも「クトゥルフ神話TRPG」でした。あれはなんでだろう? 時期的には2012年のアニメよりも前だった気がします。

    クトゥルフ神話TRPGのツイッターなどでの反応を見る限りでは、女性人気が圧倒的だと感じます。これは実際にゲームマーケットで確認した客層とも一致します。

    コンベンションに参加したことはないのですが、コンベンションの参加者とクトゥルフ神話TRPGの一般的なプレイ層は全くかぶっていないのかも。

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  • そんなにみんなクトゥルフTRPGやってるのか、
    ってビックリするぐらいルールブックが並んでる。

    現場で遊ばれているというより動画需要で売れている、というのはなるほどと思った。

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    • by Anonymous Coward

      結果動画にしやすいというのはありますが、動画需要でルールブックが売れている、というのはちょっと相関関係は薄いかもしれません。
      動画需要だけなら、将棋と同じくやる前の見る専が圧倒的に多いので、動画だけ見てれば十分です。
      というか、GMをやらないカジュアル層の7割はルールブックすら持ってないと思う。

      2010年代後半以降に置いて、現場(コンベンション/対面)というのは多く見積もって日本のTRPG人口の20%ぐらいだと思っており、
      大半は古くはSkype、今だとカジュアル層はLINE、ガチ層はDiscordとオンラインセッションツールを使用してオンラインでのTRPGセッション

  • by Anonymous Coward on 2021年10月03日 20時46分 (#4124392)

    ニャル子のちょっと前にボカロと旧支配者のキャロルが流行っていた記憶がある

    コンベンションだとそのころは光の巨人ネタとか仮面ライダーネタとかやってたよーな気が

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  • by Anonymous Coward on 2021年10月04日 0時04分 (#4124483)

    ・シナリオの終わらせ方に対するルール的なフォローが薄い
    ・KPが頑張って雰囲気作ろうとしても、他の卓から奇声が飛んでくる

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  • by Anonymous Coward on 2021年10月04日 0時28分 (#4124491)

    CoC 6thはルールが動画数度見れは90%カバーできるレベルぐらい簡単だし、シナリオが比較的短く且つ満足感がある。
    短いだけならサイコロフィクション系、簡単なだけならオマジナ系などあるが、両方をバランスしているのは少ない。
    (ちなみに、7th(新クトゥルフ神話TRPG)はルールが複雑化しているので、現在は6th/7thの比率は感覚値半々ぐらい。)

    また、オンラインセッションでは立場の違う人間が集まりやすく、一度中断すると再度時間調整して集まるのが難しいことから、
    誰もが知っている・簡単・短い(1回あたり3-5時間で最大でも分割2回ぐらいで終わる)が望ましいため、ことさらCoCが好まれる要因になる。
    次点でネクロニカや実質シノビガミのサブセット版であるインセインだが、ネクロニカは人口が少なく、インセインはいくらサブセットといってもまだ判定システムがちょっとややこしい側面がある。

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    • 高校のころいろいろやりましたがキャンペーンやりにくいCoCはあまり流行らなかった

      でもそれが実況的には良いのかもしれないですね

      • by Anonymous Coward

        高校のころいろいろやりましたがキャンペーンやりにくいCoCはあまり流行らなかった

        CoCのコンセプト的に「一生に一度あるかないかの出来事に巻き込まれる」なのでキャンペーンはやりにくいようになってる。
        そのため"本来は"継続PCを使用させるのは避けるべきだし、一つのシナリオ終了時にPCにはマイナスペナルティ(クトゥルフ神話技能の付与や正気度の回復はさせないか少量に抑える等)が付くようにするのが望ましい。

        なので、基本一期一会・一話完結であるが故、CoCはがっつり顔が見える友人と年単位でやる環境にない実況(というよりオンラインセッション)向けのシステムとなる。
        逆に継続PCを使ってがっつり成長を楽しむのに向いているのはD&Dやソードワールドといった創成期からあるものやシノビガミあたりが向いている。

  • by Anonymous Coward on 2021年10月04日 8時58分 (#4124571)

    プレイしている人のSNS等でのコメントを見ると、
    「(シナリオタイトル)のネタバレはやめてー」
    「今度(シナリオタイトル)をやるから楽しみ!」
    のようなものが多く見られます。

    旧来は(サンプルシナリオ等はあるにせよ)TRPGのシナリオはGM(KP)が用意するものではあったのですが、ここ最近のCoCブームでは既製シナリオ(ときに有名なもの)をプレイするという形になっているようです。
    ボードゲームやコンピューターRPGに近いような感覚でプレイしている人が多いのではないかと推測され、プレイスタイルの変化やシナリオ流通の活発化が起きているのがこれまでのTRPGとの大きな違いではないかと思われます。

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  • by Anonymous Coward on 2021年10月04日 9時36分 (#4124583)

    個人的な感覚だがシェアードワールドは世界観が共通するストーリー群だと思う。

    対してクトゥルフは様々な世界観で登場するアイテムやキャラ等の名称が共通するものだと思う。

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    • by Anonymous Coward

      東方もシェアード・ワールドか?と言われると、もともと二次創作は盛んですけど、それをZUN作品以外のシェアード・ワールド作品群が牽引している印象はあまりないですね。

      ゆるくて広い設定があると、二次創作しやすい、ということだけではないでしょうか。

      # 歴史的経緯を含めて理由を考えるなら、広く動画投稿サイトで、というよりニコニコ動画で、という文脈で見るべきな気もする

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犯人は巨人ファンでA型で眼鏡をかけている -- あるハッカー

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