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日記

aruto250の日記: やっと観られた「この世界の片隅に」

日記 by aruto250

昨日ようやく「この世界の片隅に」を観てきた。とりあえず最初の感想としては、「絵が上手いこと」をアイデンティティの中心に据えている人には非常に刺さるだろうなあと言うところ。絵に夢中になって失敗してしまったり、頭上に戦闘機が飛来して逃げなければいけない場面での「今ここに筆があれば、と思ってしまった」みたいなシーンなどは、若干のナルシズムと共によく刺さりそうではある。もし自分が絵が描けるタイプの人間で、10代の頃にこの映画を観たらどはまりしていたのではないかという気はする。いずれにしても、クリエイターを唸らせる完成度に加えて、ネット上での発信力が強い絵師タイプの人間によく刺さったことは、口コミ効果を高めることに貢献したのではないかなという気がするんだけどどうだろう。
で、こういう斜に構えてない感想については、もう語り尽くされてて言うこともないのだけど、まあ完成度は素晴らしくて、少なくとも戦時中の生活の世俗に疎い人間としては違和感を覚えるところもなく、むしろその完璧な考証を感じ取れるだけの知識も何も持っていないことが残念に思われるレベル。強いて言えば嫁入り先の北條さんが、家には大きな本棚があり海軍では事務方という、明らかに知的な層であり、すずさんの「変人」ぶりと相まって、当時の世相を一歩引いて見える立場からの叙述であるところ。まあ、そうでなければ現代の視聴者との解離が激しくて作品にならないのかも知れないし、作り手としても、自分とあまりにも異なるタイプの人間の視点は持てないのだから仕方ないし、これらは映画のと言うより原作に対する話になってしまうけれど。
しかしこの映画を見ると、昔買っていたこうの文代の漫画を処分してしまったのが惜しかったかなという気になってくるなあ。「こっこさん」が気になって買ったけど、「夕凪の街 桜の国」で不満を感じて、そのうち他の漫画と一緒に手放してしまった。「夕凪の街 桜の国」については、過去の日記で不満を書いていて、その感想は今でも変わっていないのだけど、「この世界の片隅に」の原作ラストのモノローグには感じるところがあり、やはり手元に置いておきたい作家だなと思わされた。

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あと、僕は馬鹿なことをするのは嫌いですよ (わざとやるとき以外は)。-- Larry Wall

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