インターネットを利用したアンケートは信用できるか?
INTERNET Watch の記事および Asahi.com の記事より.
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が, 『インターネット調査は社会調査に利用できるか』 (pdf)という報告書を公開しています(概要(pdf),プレスリリース).
近年,無作為抽出した対象者に面接を行うという,従来からの社会調査の実施が難しくなっており,マーケティングなどでモニターを利用したインターネット調査が盛んに行われるようになっています./.J でも時折そのような調査結果がタレコまれていますが,調査対象集団の代表性に疑問がある,というのはここでも指摘されてきた通りです.
労働政策研究・研修機構では,従来型の面接調査と,5件のモニター調査(インターネットでの調査4件,郵送による調査1件)とを比較し,モニター調査,とくにインターネットを通じたものの特性を明らかにしようと試みています.
結果は,面接調査とモニター調査とでは「調査結果の大半が有意に異なっ」ており,「インターネット調査は、現段階では従来型調査の代用として何の留保もなくそのまま用いることは不適切」というものでした.今後多くのデータが蓄積される必要がありますが,これまで予想されてきたことを実証して見せたという点で意義ある研究だと思います.
この調査では労働に関する意識を尋ねていますが,労働意識面に関する結果は INTERNET Watch などの記事に譲ります.タレコミ人にとって興味深かったのは,
- 全国を対象地域としたインターネット調査3種では,「調査に答えるのが楽しいから、自分の意見や主張を書けるから、調査に協力するという層が比較的多い」
- モニター型調査の回答者がインターネット調査に協力する理由の上位3位は、「謝礼・景品がもらえる」、「時間の余裕がある」、「調査の主題に関心がある」であった
- インターネット調査のモニター回答者は、複数の調査会社にモニター登録し、毎週のように調査に解答しているものが多い
という結果です.特に1,2番目からは,「モニター調査では,調査の主題について世の中に言いたいことがある人の回答が多くなる」という傾向が想像されます.実際には,面接調査でもある程度そういう傾向は出るはずですが,それがさらに強くなっているとすると,モニター調査は,とくに世論調査と相性が悪いのではないかと思われます.