bugbirdの日記: 読書感想 「セキュリティはなぜやぶられたのか」
原題 "Beyond Fear"
副題 "Thinking Sensibly about Security in an Uncertain World"
井口耕二訳 日経BP ISBN978-4-8222-8310-0
基本的にはあの名著 "Secrets & Lies"(邦題「暗号の秘密とウソ」)の 2001/9/11 対応版と言えると思う。そして、あの事件を通して問題を語ることによって、読者との間で非常に具体的な意識の共有が可能となっているために、大変効率よく論拠をまとめあげることに成功している。
また ITF(情報技術基盤)の普及によって、かつては一部の専門家だけが意識していれば良かったセキュリティが、いかに普通の生活の中に入り込んできてしまっているか… そして、恐ろしいことに大半の人はその事実をきちんと認識できていない… ということも指摘している。
しかし、この本が語ろうとしている最大の要旨は
『「セキュリティ」とは日常そのものなのであり、それを的確に意識できる事こそが、(2001/9/11以降の)今、一番重要なことなのだ』
ということに尽きるだろう。
セキュリティは対象となる資産に対して「機密性」「同一性」「可用性」という三つの要素を担保する。また、そのために「予防」「検出」「対応」三つのフレームワークを用いる。
ところが、筆者は一般の人が「セキュリティ」という言葉から真っ先に連想する「予防」と「検出」は、一般の人が必要としているようなセキュリティについて、実は大して役に立っていないということを看破する。そして、残された「対応」こそが一般の人のセキュリティにとっては最も大事な事なのだとも説く。
しかも、その「対応」ですらも、多くの場合、いかにトンチンカンで間違いだらけであるのかを、あの事件に対する「対応」の実例を次々とやり玉に揚げて説明する。…要するに人間の直感的なセキュリティ感覚は、今の世の中のありかたにはぜんぜんついて行けていないのだ。だからこそセキュリティは破綻すると。
ただし、その問題は人間の理性できちんと補完する事が可能であるということも筆者は述べている。それは識ること、考えること(「コピペ」で安心してちゃダメ)を継続的に努力する、そのための(社会的)環境を確保する為に努力するという、しごくあたりまえのことだけで充分なのだ。
# 社会をインセキュアにする元凶は貧困と情報の秘匿であると筆者は喝破する
この筋の多くの専門家は、この本によって自らの努力が何故無駄に終わったのか、その原因を見いだすことになるだろう。しかし、これはもっとより多くの一般の人にこそ、きちんと読んでもらいたい名著なのである。
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