cooperの日記: 教育ネタ
NHK スペシャル「討論.学力 No.1 に学べ」を見た。
民間の学力テストで高い成績を上げる京都御所南小学校における取り組みと、応用的学力世界一のフィンランドの教育制度を題材に、保護者、教師、学者、政治家、役人など様々な立場から、これからの教育について熱い討論が展開された。
御所南小学校における取り組みで興味深いのは、基礎ティーチャーの存在である。基礎ティーチャーとは、自分のクラスを持たずに 3 ~ 4 クラスぶんの生徒について宿題を見る専門の教師である。基礎ティーチャーの大きな役割は、担任が気づかないような生徒一人一人の細かなつまずきを感じ取り、それを担任に伝えて授業改善などの迅速なフォローに繋げることだと言える。学年全体で共通するつまずきがあれば、基礎ティーチャーも交え、教師のチームが協力しながら問題解決に努める。
また、学習効果の高い午前中に「読み書き計算」の自習を取り入れることで、基礎学力の向上も狙っている点も興味深い。さらに、こうして向上した基礎の上に、応用学力を養うための時間として、「ゆとり教育」による総合学習を活用しているのが面白い。「うんち」を題材に、便意を催すきっかけや、排便の理由と目的を考え、推論と発見、応用といった考える力を養う。10 時間に及ぶこの総合学習は、複数の教師が協力して練り上げたもので、教師ごとの偏りやムラを減らし、密度の濃い授業を可能にした。
一方のフィンランドでは「起業家を育てる」をスローガンに、11 年前から「なぜそうなるのか」を考える授業へと変貌と遂げてきた。その結果、指導要領は従来の 1/3 に減り、教育現場により大きな責任と権限を与えることになる。学力低下に対する国民不安に対しては、年一回実施する全国統一学力テストによって、教育方針が正しいかどうかをチェックする仕組みになっている。
また、保護者の意見を吸い上げる基盤があり、カリキュラムや時間の変更などにも柔軟に対応する。つまり法律によって保護者には教育に参加する「権利」が保証されており、学校サイドはこれに協力する「義務」がある。さらに学校側は、教育の成果について保護者に説明責任があるなど、一般の営利企業なみに成果が求められると言える。
討論ではまず、校長の役割について意見が割れた。一方では「トップダウンのために強力な権限と責任が必要」であり、他方では「役人の手先、末端に過ぎないため、強力な人事権は危険」というもの。また、京都市では「地域教育専門主事」というベテラン教師かつ優秀なオブザーバーがおり、校長に対するフォローや、教育に不向きな教師について指導を行なっている。
オブザーバーによる指導を経ても改善が見られない場合には退職を勧めることもあるなど、教師に対する評価と処遇についても、その正当性や妥当性を含め議論された。
こういった討論を通してわかるのは、現場と上層部の「バカの壁」である。現場では目に見える「成果」を目指すにはほど遠い状況が多々ある。つまり、授業中に生徒が出歩く、おしゃべりする、居眠りする、奇声を上げるといった「教える場が整っていない」状況において、果たして教師の評価などできるのであろうか、という極めてまともな意見である。しかし、現場のしがらみに拘泥するだけでは大胆な改革はありえない。
もちろん上層部が現場の痛みをわからないようでは、やはりまともな教育改革などできないのであるが、教育委員会と、学校と、保護者とがそれぞれに考え、意見を持ち寄り、よりよい道を模索するインフラが整備されていない現状では仕方がないとも思う。それぞれがそれぞれに忙しく、それぞれに無関心で、それぞれに利己的で、それぞれに傲慢なのだ。
事態はとても混沌としているが、企業における人事考課の問題と類似していることだし、次回にも期待したい。
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