cooperの日記: 蜥蜴
日記 by
cooper
僕の部屋には、よく蜥蜴が出る。
掃除をすると、窓際でじっとしているのに気付いたり、ガスコンロの近くでチロリと舌を出すのを見たりする。名前はつけないまでも、勝手に♂と決めつけ、『蜥蜴の彼』と呼ぶことにしている。
蜥蜴の一般的な習性なのかもしれないけれど、『彼』はきわめて冷静(あるいは愚鈍)であり、何事にも動じないように見える。何か難しいことを考えてそうな、あるいは、何も考えてなさそうな、そんな『彼』を僕は秘かに気に入っていた。
# もっとも、『彼』が一匹とも限らないのだけれど...
ある日、ヒゲを剃りにトイレの扉を開けると、便器のそばに『彼』がいた。思わずギョっとしたけど、妙な親近感を持っている旧知の仲(?)なので、その場では儀礼的無関心を装うことに決めた。『彼』を刺激しないように普通に、普通に。トイレの扉も半開きにしておく。
ところが翌日トイレに入ると、昨日と同じポーズで、同じ場所に佇んでいる『彼』がいた。そして、その翌日も、その次の日も。
僕が用を足している時以外は明かりもない真っ暗な闇の中で、『彼』は何を思っていたのか。第一、食事はどうするのだ。排泄は。睡眠は。まるでヒキコモリではないか。だけど僕はそれ以上、『彼』に近づこうとは思わない。『彼』に触れるのは、なにか違うと思ったから。
ブレーキフルードを交換した後、竹橋から近代美術館前を抜け、皇居をグルリと一周するコースから帰り、顔を洗いにトイレに入ると、『彼』はいなくなっていた。寂しさと同時にどこかホっとしたような気持になった。でもいつかまた、会えるに違いない。そんな気がする。
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