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cyber205の日記: エピタキシャルなトランジスタはいかに画期的であったか

日記 by cyber205

個人的には、2SC372なんかには、電子ブロックを使ったロクでもない実験で燃やしてしまい、
貴重なトランジスタ入りモジュールが使えなくなって後々大変な思いをしたりしたことから
特別な思い入れがあるのだが、このテのトランジスタがいかに画期的な存在であったかは、
初歩のラジオのちょっとしたコラムで知ったような気がする。

初期のトランジスタってのはベースになる結晶をいろいろいじって、その中に素子を作りこむのだが、
耐圧を確保するため、コレクタ側に抵抗率の高い高純度な半導体をもってきていたため、出力インピーダンスが高かった。
苦肉の策で、裏側を削って金属で埋めることで抵抗を下げる「中ぐり法」といった工夫が行われていたが、
それでも究極の解とは言い難かった。

エピタキシャル法で作るトランジスタは、シリコン結晶を単なる土台としてしか使わず、トランジスタ本体は
その土台の上に、エピタキシャル法で作った抵抗値の高い高純度シリコンの中へ全て作りこんでしまうというものだ。
土台になるコレクター側に不純物の多い、低い抵抗の結晶を使うことができ、
電力を取り出すために重要なコレクタ側の内部抵抗は大幅に低くできるという特徴がある。
出力インピーダンスが大幅に低くなるから結果的に大電力が取り出せる。

これは、当時のトランジスタに比較して、耐圧の割に物凄い電流が取り出せる画期的な技術だった。
いかに画期的だったか、その時の感動については、実際に研究していた人の声がいちばんわかりやすい。
東京通信工業[現ソニー]で、はじめてエピタキシャルトランジスタを試作した時の話が
ここにある[PDF注意] 41ページから読んでみてほしい。
> 1)新聞でエピタキシャルトランジスタを知り試作して驚いた
という項目があり、こう書かれている。

> すごいトランジスタができた。もちろんエピタキシーの結晶だから、耐圧は出なかったが、
> それは従来自分達がやっていたランジスタとは、もう似ても似つかないような
> 大きな電流をコントロールできるトランジスタができたので、みんなびっくりした。
> その間わずか、1 ヶ月か2 ヶ月位の間のことだった。
> それはもう、電流がびっくりするほどたくさん採れた。
> 例えば、入り口と出口に電圧を一定に10 ボルトをかけ、それを制御するためにベース電流を
> 一定量入れたとき、従来は10 アンペアの電流が得られたとする。
> このベース電流を2 倍、3 倍と増やして行く。すると従来のものでは、
> このベース電流をいくら増やしても、直ぐに出力電流は飽和してしまい増加しなくなる。
> ところがエピタキシーを使うと断然違う。それがどんどん伸びてきて動作領域がびっくりするほど広くなった。
> いわば、それまでは、いくら水道の栓を捻っても、10%か20%と、ちょろちょろとしか出なかった水が、
> どーと、90%以上も勢い良く出て来るようになったようなものだった。

東京通信工業では、この新しい技術をテレビのブラウン管偏向コイルのドライバに使う応用を想定し、
ブラウン管以外は真空管を使わないソリッドステートなマイクロテレビを実用化した。

エピタキシャル技術そのものは、ベル研の開発した技術だが、それを目的をもって改良して実用化したのは
日本の技術者で、ベル研の連中にもそれを持っていくと「こんな凄いのが作れるのか!」と驚かれたとか。

P.S
このPDFは他にも興味深い情報がいろいろ書かれているので是非ご覧あれ。
初期のトランジスタテレビ開発がいかに苦労するものだったか、技術を盗もうとする競合他社から
機密保持のためにどんな苦労をしたか等、なかなか他では聞けない面白い話がたくさん書いてある。
当時、東京通信工業で働いていた技術者でベル研に引き抜かれた人も何人か居たらしいね。

初のトランジスタテレビ、TV8-301がどんなものだったかというのも興味深い。
あれはTV画像テストパターンの丸い画像が丸く映らないというとんでもないシロモノだったのだな。
しかも、垂直偏向用トランジスタはシリコンで作ることができなくて、ゲルマニウムで作っていたのだけど
劣化が激しくて、使っているとそのうちダメになるようなシロモノだったという。それ、欠陥品ぢゃん…

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犯人は巨人ファンでA型で眼鏡をかけている -- あるハッカー

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