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diglの日記: 百万人のランボー……セキュリティ&プログラミングキャンプ:キャラバン2008@SFC雑感

日記 by digl
某所の転載。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
さて、昨日行ってきた「セキュリティ&プログラミングキャンプ:キャラバン」について、整理してみる。
当日は、主催者側としては学生や生徒、児童に興味を持って欲しいと言う意図であったらしい。残念だが、実際の参加者は半分が業界に勤める社会人だった。また、参加した学生の三分の一も、元のイベントの修了者だったようだ。
このイベントの元になるものは五年続いているようで、開始時にその説明やら記録映像やらを半時間ほどタイムテーブルを片手に見せられた。中学生から大学生までを五十人弱一カ所に集めて、集中してその筋の話をし、叩き込む。即戦力にはならんだろうが、後々じわじわと効果がでてくるかもしれないと言う意味では非常によい。トンガッっている奴やヘンな奴が、化けるかもしれない。実際、講師や関係者的には嬉しい結果な奴が出ているらしい。なので、スケジュールとしては悪くないどころか、研修としてみると非常に出来がいい。BootCampとして、と言う意味だが。
最後にフリーディスカッションが設けられていたのだが、学生の発言はそれほど活発ではなく、どちらかと言えば社会人からの発言が目立っていた。その中で一番興味を引いたのは、「プログラミングが好きではないプログラマに、プログラミングを好きにならせる方法はないのか」と言う質問で、講師陣からの「業務時間中に、何か好きなものを作らせる時間を割り当ててみてはどうだろうか。実績はあちこちで報告されている」と言う回答が私の郷愁を誘った。
さて、本題だ。
この元になったイベントの趣旨に対して、そこはかとない違和感を感じる。 IPAの後ろにいる経産省は、ものの見事に日本の経済・産業の現在と未来を考えなければならない役所だ。そこの意向が反映されているこのイベントで作り出される人材は、情報産業としては未来を担うスゲェ奴なんだろう。セキュリティに詳しいとかプログラミングで他者の追従を許さないとか、そんな人材なんだろう。いわば、[ランボー]だ。
そんな、[ランボー]が毎年五十人くらい量産できるとすれば、凄いよな。十年続けば五百人。小さな会社一つ分になる。これだけいれば、みかかでーたの某事業部半分を占めることができる。みかかでーた万歳!
で、だ。みかかでーたの一事業部がスゲェ強さ発揮して、日本の情報産業は立て直されるんだろうか。
その昔、[ランボー]って洋画が公開されたとき、「ランボーが十万人いれば、ベトナムから逃げ出すことはなかったよな」ってな自嘲ネタがあった気がする。百万人いれば、世界と戦争ができる。でも、戦争って[ランボー]で戦える訳じゃない。[ランボー]には、解ってくれる上官がいた。あの上官も[ランボー]なのか? [ランボー]を渇望するのは日本の悪い癖だ。一人の英雄がいれば戦況が変わるなんてのはドラマの中の話でしかない。戦争って、ガンダムじゃないんだ。東郷平八郎がいれば海戦で連戦連勝できるわけじゃない。太平洋戦争で問題になったのは、何か思い返してほしい。現代の戦争ってのは、兵站だ。伸びきった補給線が途切れれば、最前線の[ランボー]だって即死する。兵站に[ランボー]を配置するのか?
話を[ランボー]から元に戻す。
ディスカッションの話題は、質問者の職場の固有の問題だとは思っていない。私も同様の感想を持っている。現代では、プログラミング言語に求められる技術の閾値が講師陣が学んできた時代に比べて遙かに低下している。その昔は、アセンブラとかC言語を学ばなければ、即戦力にはなり得なかった。教育を受けるか、自学なのかと言うことは抜きにして、である。講師が「OSってものは」なんて世界で考えているかもしれないけれど、情報産業の大勢を占めている分野はなんなのか。「OS」じゃない。「OS」も重要なのは間違いないけど、その上で動いているアプリだろう。試しに「Excel プログラム」とか「ホームページプログラム」でググって欲しい。幾らでも説明ページが見つかるはずだ。「こんなことしたいな」ってなものを思い浮かべて、表示された結果を一つ一つ見て行けば、大体望むものが出来上がるはずだ。
今の[プログラマ]を養成する教育課程では、そこまで踏み込んだ内容を詰め込んでいたりはしない。小器用に組み合わせることを刷り込むことで手一杯になっている感がある。それを受け入れる業界側も神の如き大手ベンダが仕切る[人月の神話]から抜け出せず、[ランボー]よりは一兵卒を求めて各地をさまよっている。[人月の神話]に依存するなら、支払は安ければ安い方がいい。かくして錬度の低い一兵卒が量産される構造から抜け出せない。
「OSのために、ランボーが欲しい」
よく分かった。ランボーを作ればいい。ランボーだけの開発チームという軍隊で、他の国と情報戦争をすればいい。恐らく、ランボーの死体があちこちに転がるだけだ。OSと言う墓標と共に。
今必要なのはランボーとそれを支える練度の高い一兵卒なんだ。ランボーが切り開いたOSがあり、OSの上で一兵卒が作った無数のアプリが、家庭や職場に普及して、初めて戦争になるんだ。
日本の高度経済成長をさせたのはなんだったのかを思い出さなければならない。著しく高度な教育を受けた少数の兵隊たちだったのか。それとも高度とはいいかねるが、しっかりとした基礎に若干の高度教育を与えられた多数の兵隊たちだったのか。
太平洋戦争で勝利した米国は徹底した標準化を行い、それにフォーカスした高度な教育を施した大量の兵隊で海を、空を、陸を席捲したのだ。他山の石にするべきなのだろうか。

とまぁ、こんなことを帰りの神奈中バスと相鉄線の中で考えていたわけだが、正直無理だろうな。どだい、一部のエリートと官僚が考えているんだから。業界の底辺で雀の涙みたいな収入で仕事している奴らは技術者じゃないんだよな(涙笑

一応フォローしておくと、講師陣の中で前述の参加者の状況を一番よく理解できているのは、SFCの先生だったように見受けられた。あんな先生がいる間は、一厘程度の確率かもかしれないけど希望はあるのかもな。
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皆さんもソースを読むときに、行と行の間を読むような気持ちで見てほしい -- あるハッカー

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