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etsavの日記: [公開推敲中] うそじゃないわ ほんとよ 03

日記 by etsav

01 - 02 - の続き。 随時更新の可能性あり。

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■ ゆびさきから 白い糸を 紡いでたあなた
■ 遊離導爆弦

鎧袖一触の前進を続けながらも、青軍[代表戦士\チャンピオン]は次第に焦りつつあった。

灰軍[代表戦士\チャンピオン]自身を除けば最大の障壁として立ちはだかるはずの大型無人兵器、多脚機動砲台 1E-2C が、彼女との直接交戦を避けて逃げ回っていた。無論、大型地上兵器である 1E-2C が単独で逃げ切れるわけではない。小型無人兵器群が次から次へと薄い防衛線を布いて、時間稼ぎをしてくる。

自軍無人機群を率いながら摩天楼の谷底の回廊を巡り、既に三十近くの防衛線を貫いている。にもかかわらず、未だ 1E-2C を可戦圏内に捉えられないでいた。拠点防御の布陣としてはその防衛線数は尋常ではない。母艦防衛戦での機動漸減を意図しているならばまだしも……

灰軍[代表戦士\チャンピオン]に至っては全く姿を現さず、その位置を掴めない。索敵機は可能な限り出し、存在可能範囲を絞ろうとはしている。しかし、情報集約のための微弱近傍場指向性通信[連携伝達\リレー]は、秘匿性が高いのだが、実時間性に欠ける。その遅延特性を敵方に利用されて、欺瞞されているのではないかと、敢えて索敵パターンを乱してみる。特に収穫は得られなかった。

意図はともかく、灰軍がなんらかの撹乱戦術を採っているのは間違いない。と言って、このまま都市中枢を陥としに掛かれば、1E-2C との連携で灰軍[代表戦士\チャンピオン]に背後を突かれるのは必至。もう一度上昇し、自身で光学索敵するべきか否か――

その迷いの一瞬を、正確に読まれた。

    [脅威警報\WRN THRT]
    [照準波被照\EXP'D STWV]

索敵波無しに、いきなりの照準波被照警報。それは既に敵から至近距離で視認されていた事を意味する。

突如出現する糸の様に細い白い輝線。滑らかに蛇行する曲線を描きながら、金切り声を上げて宙を切り裂き、亜光速で絡み付いてくるその四条を、皮質加速中の彼女の一次視覚野は全て[追跡\トラック]できていたが、回避機動まではとれず、咄嗟に[慣性平準化防盾\IAS]を展開するのみ。効果無し。

第五から第八の下側四腕が同時に被弾。光子爆発。[零次元転送\ZDT]逆伝播で母機にまで及びかねない誘爆を、被弾した腕を[投棄\パージ]して防ぐも、輻射光圧に背中から蹴り墜とされる。

[遊離導爆弦\プラズマデトネーターストリング]――灰軍の[代表戦士\チャンピオン]専用主力兵装。実戦投入されてからかなりの時間を経たが、青軍ではその正体がまだ掴めていなかった。観測上は随意軌道制御可能な[遊離粒子束\プラズマフラックス]と同定しているが、それならば固体弾体に準じて[慣性平準化防盾\IAS]による防御が有効なはずであり、また着弾時の強力な連鎖光子爆発の説明がつかない。慣性結合技術による存在確率制御により、遊離粒子束が光子爆発をもたらす何かを『輸送』しているものとの推測が有力だった。

――一体どこから!?

相手から見えるならこちらからも見えるはず――1G 加速で急速に失われる高度を無視し、[脚部補助推進器\レッグバーニアスラスター]と残存四腕のモーメントを使って[反転\ハーフロール]。頭から墜ちていく上下逆さの視界を視覚索敵系が[走査\スキャン]。敵影視認――[追跡\トラッキング]開始。

――そんな……!

[目標指標\ターゲットデジグネーター]の指す先には、つい先程彼女自身が推進器を破壊して無力化した、敵航空型無人機があった。ビル壁面に半分突っ込んだ状態で放置された機体の、破壊していなかったはずの装甲の巨大な破口、内側から破られたと思しきその縁に立つ、捜し求めていた灰軍[代表戦士\チャンピオン]の姿。

余裕を失っていった彼女は、可能な限り短時間に防衛線を貫こうと、必要最小限の敵機を撃破、しかも無力化さえすれば小破させるだけで済ますようになっていた。灰軍[代表戦士\チャンピオン]はそうした彼女の癖を読み切り、無人機の内部に身を潜め、無力化に至る最小限の損害を受けたのみで放置されるであろう戦術機動をとらせて、本来ならば侵攻側が採る戦術であるはずの浸透をやってのけたのだ。

最早高度はほとんど無く、地面が迫っていた。前転して頭を上に。[脚部補助推進器\レッグバーニアスラスター]で着地緩衝、舗装面を凹ませるかなりの[硬着陸\ハードランディング]だったが辛うじて墜落は回避。だがそこから迂闊に動けない。失った推進器セットの再装備も出来ぬまま、蹲るように[被弾面積\クロスセクション]を小さくする姿勢をとり、状況脱出の機会を窺う。

照準波被照警報は発報されたまま解除されない。墜ちる彼女を追って地面に降り立った灰軍[代表戦士\チャンピオン]の、[手袋\グラブ]型統合制御ユニットと一体の[遊離導爆弦紡績器\PDSS]二基の内、右手側の指先の連装射出口は、四門共に真っ直ぐこちらを照準していた。だが、俯き加減の、半身と言うには横を向き過ぎのその構えは、前面被弾面積を小さくする為とは思えず、投げやりな様をわざとらしく演じているように、そしてそれをはっきり悟らせようとしているように見える。

――退け、っての!?

[会戦\キャンペーン]初期の交戦が一方的な結果になった場合、勝者が敗者を意図的に見逃すことは、それが『[実行等価偽装会戦\エミュレーションキャンペーン]』の趣旨にも合致する為、黙認されていた。

しかし、素直に従うのは、矜持が許さなかった。せめて一太刀なりとも返してからでなければ……

双方ほぼ同時に[皮質加速剤\コーテクスアクセラレーター]を分泌開始。使用経験者ならば判る隠微な表情の変化で互いにそれを知る。

先に動いたのは、意外にも優位にあるはずの灰軍[代表戦士\チャンピオン]の方だった。[遊離導爆弦紡績器\PDSS]の連装射出口から三原色の光条が放射され、ゆっくりと縒り合わさっていく。これ程間近で[遊離導爆弦\PDS]が紡がれ始める様が観測できたのは、青軍側にとっては初めてだった。その正体を知りたがっている青軍[工廠\アーセナル]の[研究開発部\R&D]が、驚喜して見入っている映像だろう。

三色の光条が完全に合わさり、白い輝線と化す直前、彼女は動いた。[脚部補助推進器\LVT]で左斜め前へ加速。灰軍[代表戦士\チャンピオン]は反応できていないように見える。連装射出口は彼女が元居た場所を向いたまま、彼自身もほとんど動いていない。そのまま背後へ回り肉薄すべく、推進器セットを再装備しようと、右手を出す。

一瞬の激痛。痛覚[減衰器\アッテネーター]自動反応、減殺。被弾部位粗標定――全て右手に集中。出力が絞られていたらしく、手首から上への誘爆は無し。[循環系調整機構\サーキュレーションレギュレーター]が出血によるショック状態を回避。推進器セットの再装備は失敗、まともな戦術機動がとれず、そのまま距離をとって着地。

四条の[遊離導爆弦\PDS]は、射出直後、鋭角を描いて折れ曲がり、彼女の右手を狙撃。しかもそれを灰軍[代表戦士\チャンピオン]は、振り返る事すらせずに成功させていた。これでは、上半身、特に手の動きによる[身振り命令\ジェスチャーコマンド]で操作する MAMAF は、事実上無力化されている事になる。

追い打ちを掛けるように、自軍戦術管制からの指令。

    [戦況評価\ASMT]
    [戦域制御喪失\THTR CTRL LST]

    [最優先指令\PRT CMD]
    [即時退却せよ\WD;IMDT]

対峙している間に指揮が疎かになっていた青軍無人機部隊は、戦線を維持できずに潰走を始めていた。戦術管制からの直接制御で、支援母機は既に緊急退避シーケンスに入り、後方からこちらに急行している。今、決断するしかなかった。

無事な左手で MAMAF に全兵装支持腕[投棄\パージ]を命じ、[腕部駆動配列\アームドライブアレイ]を格納位置へ。[生存性向上\サバイバビリティー]ユニットより[緊急退避錨\イバキュエーションアンカー]を上空へ投錨。MAMAF との慣性結合質量共軛による制約を受ける支援モジュールを切り捨てて身軽になった母機が、回収フックを出してそれ吊り上げ、直後に[垂直上昇回頭\インメルマンターン]に入る。最速退避を目的とし、追撃に対する反撃は想定していない緊急退避シーケンスは、加速度制御も考慮外だった。[慣性結合単粒子径糸\ICSPT]に曳かれて離陸する瞬間、短時間だが最大加速度 180G が掛かる――[高加速度による意識喪失\G-LOC]。

[循環系調整機構\サーキュレーションレギュレーター]の働きで、まず意識が、次いでブラックアウトしていた視覚が回復。

しばらくの間[疑似視覚重畳表示\QVSID]しか見えず、まだはっきりしない意識でぼんやりと、失明でもしたのかと訝しむ。ややあって、自分が見ているのが星空だという事に気付いた。

支援母機に曳航されて、意識を失って仰向けに飛んだまま、随分時間が経っている。緊急退避シーケンスでは機内に戻れない上、MAMAF の自動防衛機能も凍結されるため、巡航速度はごく低速に制限されていた。往路では大気圏外弾道飛行でほんの数分だった道程も、帰投までまだかなり掛かる。

[疑似視覚重畳表示\QVSID]には、意識喪失中に行われた[再生機構\リジェネレーター]の動作報告が表示されたままになっている。右手人差し指から小指までを再生。右腕一本丸ごと飛ばせば済むところ、灰軍[代表戦士\チャンピオン]はわざわざ親指以外の四指を一本づつ同時に狙撃していたのだ。確かにそれだけの精密攻撃が可能なら、MAMAF への命令を確実に遮断するには最適の攻撃手段ではあったが。

初めて経験する[再生\リジェネレーション]――合理的とも思えぬ喪失感に、それが自らの身体の一部である事を確かめるように、生え変わった指に唇を触れる。

超越性能機 MAMAF-8F を自在に操れる自分ならば、十会戦勝ち抜きで退役も非現実的とは言えない――そんな夢が脆くも崩れ去った初陣だった。

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もちろんまだまだつづく~  次回 ゎおっそろしく陳腐なシチュエーションでふたりゎ再開するのだ。

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