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etsavの日記: [公開推敲中] うそじゃないわ ほんとよ 04

日記 by etsav

01 - 02 - 03 - の続き。 とりあえず出しちゃおう。 例によって随時更新の可能性あり。

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■ ときめきさえ 知らなかった――

寝坊して遅刻しかけている――などという状況は生まれて初めてだった。

一般人を装っている間は優等生で通していたし、秘匿されているとは言え軍籍にある彼女は、特殊な訓練中でもない限り、極めて規則正しい生活を厳格に守っていた。人工的に遺伝子レベルから徹底的に強化され、代謝に伴う摂取・排泄元素の全量までも記録管理されているその身体は病気知らずでもある。

明け方まで一睡も出来なかったのだ。悔しくて。

どんなに厳しい条件のシミュレーション訓練でも、あれほどの惨敗は無かった。敵方[代表戦士\チャンピオン]を視認した時には既に無力化されていた、などというのは……

ふっと落ちた浅い眠りは、主観的に感じられたよりもはるかに長かったらしい。予め状況設定された戦場で戦うという[実行等価偽装会戦\エミュレーションキャンペーン]の性質上、全くの無駄かと思っていた野営時の対奇襲即応訓練が、皮肉にもこんなところで役立った。[皮質加速剤\コーテクスアクセラレーター]の助けも借りて、布団を撥ね除けてから九十秒後には、身繕いを整えて玄関から飛び出していた。

もどかしいのは、[軍籍秘匿指令\コンシールメントディレクティブ]により『一般人を装う』事が義務づけられている事だった。本来の彼女の脚力なら、特に無理せずとも一キロメートルを二十秒で走破して、汗もかかずにすましていられるだろう。だがそれを一般人に見せる事は許されていない。普通(彼女にとって)に軽く走れば余裕をもって間に合うところを、心理抑制で筋出力に枷をはめ、ふわふわとまるで意に添わぬ身体を操らねばならない。

こっそりと索敵系情報を使い、誰にも見られていないと確認できた時だけ、心理抑制を外して速度を上げる。どうにか間に合いそうだが、もう一度だけ距離を稼いでおこうか――そう思った時。

壁の向こう、右側から合流する道を行く気配に気付く。ほぼこちらと同速度、まだ常人の可聴域を下回るその靴音は、その特徴から同校生男子のものと同定。進路推定完了――[衝突進路\コリジョンコース]。

普通の女の子なら、全く気付かず出会い頭にぶつかったりして――などと、最早人類の歴史からも薄れる程太古に、疾うに陳腐化しているシチュエーションをぼんやり考えたのは、しかしそれが無自覚だった、数週間以内の高確率の死を覚悟したが故に顕在化した願望だったからだろうか。少なくともそれは身体制御に微妙な、しかし決定的な影響を及ぼした。

回避に僅かに失敗。右肩が接触、半回転。弾かれて勢いに乗ったまま、後ろ向きに倒れ始める。

『普通の女の子』を装った身体能力範囲内でも、予め観えていたのだ、避ければ避け切れるはずだった。かすった程度とは言え、接触を許した自分が信じられない。そして、自らの足が縺れるという珍しい現象を他人事のように眺めるなどという戯れをやめ、今から体勢を立て直して転倒を回避するのもまた、そう不自然ではない、のではあるが。

悪くない子ならこのまま可愛く尻餅の一つも搗いて見せようか――そんな気紛れを考えて、後ろ向きに跳ね飛ばされるにまかせたまま、ぶつかった相手の顔にちらりと視線を投げる。その途端――

    [脅威警報\WRN THRT]
    [視覚的敵味方識別反応\V-IFF RSP'D]:[敵性\HSTL]

    [自動防衛\AT DFC]
    [循環系調整機構\CRC REG]:   [活暖化\ACTV'D]
    [感覚器信号基底ゲイン\SNS BG]:[三段上昇\RSE+3]
    [痛覚減衰\PN ATN]:         [半減\-3dB]
    [皮質加速剤\CX ACC]:    [分泌準備完了\RDY]
    [増強戦闘運動系\CBT AXMTR]: [待命中\WT'G CMD]

警報表示が[疑似視覚重畳表示\QVSID]を埋め尽くす。視覚索敵系自動起動。[視神経測距儀\ONRF]作動。[目標指標\ターゲットデジグネーター]が相手を捕捉、[追跡\トラッキング]開始。[見越予測光学照準線\LCOS]表示。索敵系は[追跡走査並行\TWS]モードへ移行、伏兵の存在に備える。

――ふええぇぇ!?

IFF が敵性を示す人間など、この世にただ一人しか存在しない。それが、こんな身近に居るわけが――『日常モード』の顕在意識の方は、いきなりの戦闘機能自動活暖化に泡を食って狼狽えていたが、いやそれ故に却って、戦闘体として設計され極限まで鍛え上げられた潜在意識と身体反射とが鮮鋭に反応していた。

[皮質加速剤\コーテクスアクセラレーター]分泌開始。転倒回避[既定動作\モーターシーケンス]起動、両脚を思い切り地面に叩きつけ、反動で振り上げて後方屈伸回転しつつ、低弾道で距離を取り、一瞬伸身に移行し回転を止め着地、[前面被弾面積\クロスセクション]を小さくとった低姿勢で大きく後ろに引いた片膝を突く。そのまま思わず全腕[慣性平準化防盾\IAS]展開の[身振り命令\ジェスチャーコマンド]を[多碗可動兵装支持架\MAMAF]に出してしまう。

    [兵装活暖化要求棄却\N'ACK WRM CMD]
    [主兵装遮断中\Z{MSTR ARM OFF}]

意志とは無関係の反射行動それ自体によって更に混乱、自分の置かれた状況を冷静に把握できず、彼女は命令の最後、両腕を交差した所で固まっていた。一般人を装って登校中である今、勿論 MAMAF など装備しているわけがない。だったら脅威警報なんか発報するな――後付け[神経情報処理系\NSP]のちぐはぐな反応に文句の一つもつけたいところだが、どうやらそちらも想定外の事態に混乱、適切な反応がとれずにいるらしい。

「……奇遇だね」

軽く片手を挙げ、憎らしい程に余裕の態度でそう声を掛けた灰軍[代表戦士\チャンピオン]――そう、それは、灰軍代表戦士まさにその人であった。

眼鏡(伊達眼鏡に決まってる――目の悪い[代表戦士\チャンピオン]など居るものか!)のずれなど指先で直してから、そのまま何事も無かったかの様に走り去る後姿を、未だに固まったままの彼女は、怨嗟の声を上げながら見送っていた――

「な、なななななんであいつがうちの学校に居るのよぉ!?」

だが、勿論彼にも心の余裕など無かった。冷静さを装ったままそれ以上の事が出来なかったからこそ、素っ気無くその場を去ったのだった。

――まさに『奇遇』だ。確かに確率は零ではない。しかし同じ生活圏内から両軍の[代表戦士\チャンピオン]が同時に選ばれようとは……!

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実ゎこのシーンでトースト咥えさせるかどーかで未だに迷ってたりして〔笑〕。

そりゎともかく次回予告。 二人が[代表戦士\チャンピオン]として戦う理由――『[実効等価偽装会戦\エミュレーションキャンペーン]』とは何か?

TO BE CONTINUED...

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typodupeerror

吾輩はリファレンスである。名前はまだ無い -- perlの中の人

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