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etsavの日記: [公開推敲中] うそじゃないわ ほんとよ 07

日記 by etsav

01 - 02 - 03 - 04 - 05 - 06 - の続き。 一番難航してるとこ急いでやっつけただけに、 輪を掛けて推敲不足……

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いつもの癖で一次視覚野を[追跡走査並行\TWS]モードに入れてしまう。戦場ならぬここで伏兵に備える必要は無い。最大ズーム倍率をより大きくできる[単一目標追跡\シングルトラック]モードに入れ直す。

――[旅球\トラベルボール]か……

灰軍[代表戦士\チャンピオン]を見付けて、それからどうするかまではまだ考えていなかった。敵軍関係者との接触を禁じた[両軍絶縁指令\インシュレーションディレクティブ]が在る以上、不用意に会いに行くわけにはいかない。同順の最優先指令である[軍籍秘匿指令\コンシールメントディレクティブ]が不自然な接触回避を戒め、『偶然』に遭う事を避けられない状況は在り得るかもしれないが。だが『遭った』ところで、何を話せばいいのかもわからない――何しろ殺し合いの相手なのだから。

それでも、届くと判ったからには、少しでも彼の事を知りたかった。自分を殺すかもしれない者の事を。自分が殺すかもしれない者の事を。

それ故、彼が球技に興じているというこの状況は、実に都合のよい事だった。起伏の激しい[旅球\トラベルボール]のフィールドだが、この高さからなら全体を俯瞰できる。窓枠に半ば体重を預け、観戦する事にした。

試合開始直後の第一[六分期\セクステュプリット]表――彼がリーダーとして率いるチームが攻撃側。[全球前投\バリスティクシェブロン]から始まる速攻戦術。

その指揮の的確さに眼を見張る。麾下は生身の人間、訓練を積んだわけでもない一般人。忠実無比の無人機と同じというわけにはいくまいに。

[主球全走\フルラダー]、[副球水平交換\ホリゾンタルスワップ]、[主球半走\ハーフラダー]と見せかけて[偽装後送\フェインティドドロップ]から[左半回\ロールレフト]、[右主副換球\ジャグルライト]で早くも敵方[終点\ターミナル]を脅かす。

常人とは桁違いに強化高速化された身体・感覚・思考の能力を、[軍籍秘匿指令\コンシールメントディレクティブ]は隠す事を要求していたが、『成績優秀・スポーツ万能で学年一』程度の役得を享受するのは黙認されていたし、彼女もそうしてきた。並み居る敵チームの[級友\クラスメイト]を彼が軽くあしらっているのも当り前の事だし、それも大幅な手加減、手抜きの結果のはずなのだ。いつでも随意分泌可能な[皮質加速剤\コーテクスアクセラレーター]を使おうものなら、たとえ戦術機動ユニットの助けが無くとも、本人の意思なくして常人の視野に捉えられ続ける事などありえない。ゲームになるわけがない。

――だけど、それでもあの動きは、綺麗かも。

[全球到達\フルデスティネーション]――八十点先取。

こうして見つめている事も、彼は疾うに気付いていることだろう――それだけの鋭敏な感覚能力が自分達には在る。同じ校内に居る、互いにそれが判ってしまった今、[遮蔽\カバー]越しの覗き見などいずれは見つかりばつが悪いだけ。だからこそ特に隠れるでもなく、堂々と視線を遣っていたのだから。

だが、その心中で何を思っているのか、素知らぬふりで競技に没頭しているように装っている。全球到達の特典の内、再攻撃権を選択。

[全球前投\バリスティクシェブロン]からの[主球全走\フルラダー]、[副球水平交換\ホリゾンタルスワップ]、[主球半送\ハーフラダー]と見せかけて[偽装後送\フェインティドドロップ]から[左半回\ロールレフト]――

――ちょっと待って、いくら相手が『一般人』でも同じ事繰り返したら――!

そして[右主副換球\ジャグルライト]――果たして、被[邀撃\インターセプト]。[主球\マスターボール]を奪われる。攻守切り替えの指令を味方に出してから、彼は僅かに苦笑して見せた――明らかに[皮質加速剤\コーテクスアクセラレーター]分泌下で。即ち、彼女にしか判らない極めて短時間だけ。

敢えて繰り返していたのだ、同じ戦術を。彼女に見せる為に。そしてその言わんとする意味は――

――あたしは何をした!? 薄い『防衛線』を何度も貫く内に、戦術機動が等閑になって、同じパターンを繰り返し始めて――!

そうして、完璧に動きを読まれた。

次はもっと巧くやってみせろ、お前なら出来るはずだろう――と。

両軍[代表戦士\チャンピオン]同士の密やかな意思伝達。発覚すれば[両軍絶縁指令\インシュレーションディレクティブ]に抵触するメッセージの授受。突然の、綱渡りめいた、危うい秘め事の共有に、思わず息を――

  [生命徴候異常検出\DTC'D VITSGN A'NML]
  [血圧上昇\RSE'D BLDPRS]
  [心拍過剰\EXS'D HRTBT]
  [呼吸擾乱\DTB'D BRTH]

  [脅威警戒\CTN THRT]
  [心理対抗手段被照の可能性あり\PSBL EXP'D PSYCM]

――…………。

呑み込み掛けた息をどうするか、しばらく迷った。脅威警戒系が何を勘違いしたのか、理解するのに数秒。

「いきなりネタばれしないでよ、この馬鹿[診断機構\ダイアグノシス]!」

溜息と一緒に思わず吐き出したそれは、小声のつもりだったが、聞き取れずとも周囲の注意を引く程度には大きかったらしい。

常の彼女には無い荒い語気に興味を惹かれたか、あるいは『馬鹿』辺りだけは聞き取られたか。八時方向から級友の女子二人が近寄ってきていたのが視界の隅に入る。一次視覚野が[単一目標追跡\シングルトラック]モードに入っていたので、気付くのがやや遅れた――[多重追跡走査並行\MTWS]モードへ移行。[目標指標\ターゲットデジグネーター]に囲われた二人は、彼女の視線の先を見遣って、良さげな男でも居たかといともあっさり図星を指し、笑いながらからかってくる。見ていたのは『一般人』の視力では米粒ほどの生徒の群れ、体表電界分布走査による感情解析も当然できないはずなのだが、こうまで察しがいいのは何故なのだか。

二人とも『日常モード』では親友だったし、揶揄に悪意が無いのも判っている(体表電界分布解析で一目瞭然)。が、今だけは煩わしい。[客観\ニュートン]時間で一秒半後に我に返って狼狽えるふりをするとして、それまで[主観\ベルグソン]時間百八十秒を二人には停まっていてもらうことにする――[皮質加速剤\コーテクスアクセラレーター]分泌開始、加速率百二十。

教室のざわめき、校庭からの喚声が小さくなる。聴覚よりも優勢になる体表振動感覚。晴れたままに陰る高い陽光、じりじりと滲むように変化する視界。この白昼の黄昏に閉じ込められた[主観\ベルグソン]時間の澱みこそは、[代表戦士\チャンピオン]の統べる孤独な王国にして牢獄――彼等の肉体とて[客観\ニュートン]時間の軛から逃れられるわけではない。

脅威警戒発報事由のバックトラック――常時稼働している[生命徴候監視装置\バイタルサインモニター]は、監視対象器官のこれまでに学習した特徴パターン群からの逸脱を検出し、上位の[診断機構\ダイアグノシス]がそれを心理状態由来の事象と判断。心理深層走査を実行、その結果、これも『通常パターン群からの逸脱』を検出。そこまでは正しかったが、人探しに索敵機能を流用した為に活暖化していた脅威警戒系が、心理対抗手段を受けている可能性を疑った。

無性に悔しかった。

――そりゃ確かに、こんなのは初めてだけども、さ。

自分で気付く前に指摘されてしまった事――それも[神経回路網\ニューラルネットワーク]としては線虫と同程度の規模の診断機構に。『吊橋効果』以外の何物でも無い、単純なシチュエーションにあっさり酩酊している事。

それでも、こんなときめきさえ知らずに戦場に散る事を思えば――

――素直に乗ってみる?

自問。即座に返る[応\いら]え。

――どうかしてる。殺し合いの相手になんて。

第一[六分期\セクステュプリット]裏の終了後、級友と談笑している(状態で止まっている)彼は、既に四名の青軍[代表戦士\チャンピオン]を斃している。爽やかな笑顔の向こうに彼が負っているものを、知っているのは今この場には自分だけ。

自分で五人目――長期的には両軍が拮抗するように調整されている(そして揺らぎの設定については知ることができない)のだから、十会戦を生き残る確率は単純計算で二の十乗分の一、ほぼ千に一つ。それを覆せると思うだけの自信は、今やかけらも無い。余人ならぬ彼に打ち砕かれた。

いずれ遠からず、戦の庭に斃れる運命ならば……

――それなら、彼の手に掛かるのも、それはそれで悪くないかも。

少なくとも、誰とも知らぬ他の[代表戦士\チャンピオン]に殺されるよりは、今そこに、『日常』の片鱗を見せている彼の方がましかもしれない。そして、彼こそは、今の彼女の立場に最も近い存在だった。相反する二つの虚構の狭間で辛うじて生き永らえている脆弱なこの世界を維持する為に、人類の範疇を超越した戦闘能力を与えられた、そしてそれに恐怖されたが故の、殖える事無き短命の一代死滅種。

であれば――産む事能わざる身体に宿る、戦う性のこの魂ならば、殺め斃し合う者へ想いを懸けるに、何を憚ろう?

殺到する多数の白い輝線に絡み取られ、次の瞬間、爆散して塵も残さず消え果てる――[代表戦士\チャンピオン]候補である事を自覚して以来、無数の夜を苛んで来た馴染み深い死の幻影に、半ば陶酔しかけ……

しかし、その幻影を脳裡から追い払った。

――違う、そうじゃない……

何故だか寂しそうだった、あの灰軍[代表戦士\チャンピオン]の俯き加減の横顔――急に想起された第一交戦最後の映像記憶。その真意を、悟ったような気がした。

皮質加速終了。

ふっと教室のざわめきが戻ってくる。傍らの二人と主観時間を同期。狼狽して取り繕うふり。[循環系調整機構\サーキュレーションレギュレーター]の設定を弄って、頬など仄かに赤らめてみたり。

――あれ……?

[循環系調整機構\サーキュレーションレギュレーター]が真面に働いていない。火照る程まで頬を染めるのは、意図していなかったはずなのだが。

――――――――――――――――――――

なんか、 心理描写が[位相追従不良\エイリアシング]起こしてるよなぁ……  と言って、 [標本化頻度\サンプリングレート]上げると、 ただでさえ長過ぎのとこ更に……〔大悩〕

まぁそれはともかく次回はナナフシ塩漬けっっ

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犯人はmoriwaka -- Anonymous Coward

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