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etsavの日記: [公開推敲中] うそじゃないわ ほんとよ 11

日記 by etsav

01 - 02 - 03 - 04 - 05 - 06 - 07 - 08 - 09 - 10 の続き。 このシーンゎですね、 そもそも聴いて即座に頭に浮かんだイメージでもあり、 一番書きたかったシーンでもありますので、 最初にコアの部分は書いちゃってたのです。 ところが、 それを繋ぐ間がまぁえらぃ難航して。 思いあぐねて主役キャラ二人を(脳内で)呼び出して、 既に書いた部分を概ね辿ってくれさえすりゃいーから、 あとは好きに演れ、 って。 そしたらね……

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■ ――土瓶蒸し作ったの
■ 絶縁破戒

そこまできれいに[待ち伏せ\アンブッシュ]をきめられたのは初めてだった。

青軍[代表戦士\チャンピオン]は完全な[放射遮蔽\EMCON]を掛けてセンサーに捕捉されるのを防いだ上で、気配をも断って、初回交戦翌日にぶつかったあの辻の壁の陰で待っていた。

完全な不意打ち。平静を装う。直接会いに来てくれる事は予期していなかった――願望は確かにあったが、妄想として片付けたつもりだった。

しかしそこまでならば彼も、全く不可能というわけではないと考えていた。生活圏が同じである以上、初めてここでぶつかった時の様に、『偶然』遭ってそのまま直ぐに別れるくらいの事は。両軍絶縁原則に悪影響がある事を承知でなお、通学路を変更する気になれなかったのは、だからこそかもしれない。

無言で捧げ出された、朱塗りの盆の上に乗っている物に目を落とす。それがまだ湯気を立ち上らせている土瓶蒸しだったからではなかった――ついに隠しおおせる事能わず、微かに驚愕を[面\おもて]に現してしまったのは。

――突破したのか、[両軍絶縁指令\インシュレーションディレクティブ]を!

同一生活圏から同時に両軍の[代表戦士\チャンピオン]が選出されるなどという事態は、両軍絶縁の原則に対して有害でしかなく、[実効等価偽装会戦\エミュレーションキャンペーン]の根幹を揺るがしかねない。しかし、予め想定して予防措置をとっていれば、容易に避けられるはずの事である。にもかかわらずそれが現に起きている以上、『TOM PILLIPI』設計者は、生起確率がほぼ皆無に等しいが故にその対策を怠ったわけだ。現状が想定外の事態にあるのならば、他にも顕現している齟齬や見落としがあってもおかしくはない。そもそも[両軍絶縁指令\インシュレーションディレクティブ]に厳密に従えば、日常においても接触を避け続けねばならず、そういった不自然な行動は同等の優先度を持つ[軍籍秘匿指令\コンシールメントディレクティブ]と衝突するではないか――そう考えて、あらゆる抜け道の可能性を虱潰しに走査していったのだろう。元々、両軍絶縁指令は『全世界は全面戦争状態にある』、軍籍秘匿指令は『全世界は恒久平和を獲得した』、それぞれ相矛盾する嘘を固めるためのもの。同時に遵守しようとすればどこかに破綻を来す。

あるいはそれは、『[実効等価再現\エミュレート]された戦争』を要求し、『[実効等価再現\エミュレート]された戦死者』を衛生軌道の機械神への贄に捧げて辛うじて成り立つ、この馬鹿げた『[実効等価再現\エミュレート]された平和』が、いつの日か崩れる事を望んで残された、論理爆弾だったのかもしれないとも思う。そう思う事で、観えてはいてもそれを起爆させる[術\すべ]を持たない、体制から逃れられない自分を慰めているだけなのかもしれないが。

こうして目前で見るといっそ華奢と言ってもいい、自分の肩までしか背の届かぬ年下の子が今、少なくともこっそり導火線に火を点けるくらいの事は、してのけているというのに。

同じく無言で、盆の縁を両手で受ける。僅かな言葉がこの危うい綱渡りの均衡を崩しかねない。ほぼ同時に、二人は[皮質加速剤\コーテクスアクセラレーター]の分泌を開始した――このあまりに貴重な一瞬を、能う限り引き延ばす為に。

外界から音が消える――それは構わない。もとより会話は交わし得ない。暗くなる視界に、網膜[補償機構\コンペンセイター]と感覚器信号ゲイン調整で可能な限り対抗。嗅覚と電界分布走査とが原始的な生の感情を直接伝えて来る。そして鋭敏になる体表振動感覚。鼓動と息遣い、身じろぎに骨格と腱、筋繊維が僅かに擦れ合い、湿潤循環が[小波\さざなみ]をたて続ける――互いが今、確かにそこに在る事を、全身で受け止める。

更に加速率を上げる。上げ続ける。加速剤酔いが始まるのを自覚。構うものか。戦闘中ならともかく、ただ立って居るくらいならば、多少正気を失おうとも。

[主観\ベルグソン]時間の高度圧縮に伴う感覚域の異常拡張。朱塗りの盆越しの互いの両手、その体表振動感覚が入り混じる。堅さと柔らかさ、暖かさと冷たさ、矛盾する感覚が交錯し、同時に伝わってくる。しかしそれもいつしか同期、同じ感覚を共有。

更に加速。経験上の最速思考領域。際限なく拡散する感覚、自我の境界が鈍る。何もかもを置き捨てて疾走する純粋な思考、その過程の健全性は最早保証出来ない。それでもおさまらない、森羅万象を静止させ、この一瞬を永遠たらしめんとする叶い得ぬ欲求。

構うものか。

人の世の総ての矛盾の焦点を、その身に負って死んで行けと命ぜられた二人に、僅かばかりの狂気との戯れをも禁ずる謂れがどこにある?

構う・もの・か。

何をもって正気と做す? 虚構を絡めて表面だけ取り繕った、この世界に合わせた思考を? 

共に加速。

薄く微笑み合った――見ていれば判る、歩調を合わせ、限界を超え、極限を目指し思考を速める二人。

……見ていれば判る?

……微笑み合う?

正確には計測できないが、今の加速状態では[主観\ベルグソン]時間一秒が[客観\ニュートン]時間で一ナノ秒オーダーに相当するはず――表情筋を動かすどころか、顔で反射した陽光が互いの網膜に至るか至らぬか。知覚し得ぬはずのこの視覚は幻覚としか考えられない。そもそも、自らの姿を含めた相対する二人が観えるのはどういう事だ?

それがどうした――幻覚が真実を映しているのならば、事実と反していようとも、最早それは幻覚ではない。

歩調を合わせて――そう、同じ道程を共に歩む事の出来る仲間が欲しかった。自軍では孤高の存在、ならば敵方である青軍[代表戦士\チャンピオン]にそれを求めざるを得まい。未だ届かぬのであればと、差し伸べた手はしかし三人目までは引き上げるを能わず。

初めて彼の導き手に応え、それ以上を返してきた彼女がいとおしかった。伊達眼鏡など掛けている自分の愚かしさを呪う。夾雑物無しに今の彼女を見ておきたかった。その天啓に感謝する。我を忘れて抱き締めてしまう事、ただの硝子の板二枚が、辛うじてその衝動を押さえていた。

――親代わりの、大好きだった[幼時教導官\コンサルタント]が、よく似た眼鏡を掛けてたっけ……

ふと思い出す、幼少期の記憶。

――しかしそれは俺の記憶ではなく、そうあたしの記憶。

混線する思考。僅かな戸惑い。

――意識が入り混じっている? みたいだね、感覚域異常拡張の相互作用? 脳への意識局在性が崩れた結果か。

秘められていた意識の襞が擦れて擽り合う、愛撫にも似た心地良さ。

――しかしこの頃の記憶は想起抑制処置を受けたはずだが、でも『互いの脳を知覚した互いの脳の知覚』ならできてるよ? なるほど、それには抑制はかからないな。

閉ざされていた扉が開く。抗い難い欲求――加速。

触れ合う二つの自我が細かく泡立って端から絡み合う。彼我の区別が、溶け、崩れ、薄れ、消えて行く。

貪り合う。相手の記憶を。封じられていた自らの記憶を。その向こうに在るものを。

感覚と非感覚の境界の崩壊。なだれ込む感覚外知覚。空間局在性と時間局在性、双方の束縛から思考が解き放たれる。先祖の記憶、前世の記憶、人類が直接間接に接触し得た総ての情報。過去を、未来を。深淵を、地底を――今ならば『指導者』等のマントル回遊シェルターも容易に観えたが、最早そんな物は地中の塵塊に過ぎなかった。微はクォークを越え空間を紡ぐ[絶対空間粒子\エーテル]をそして慣性結合の網目を観るに至った赤道加速器、果ては宇宙の深遠を見詰めたニュートリノ望遠鏡の眼、今なお恒星間空間を飛翔する惑星探査機達、かつて銀河系が通過してきた宇宙の道程すらも。

森羅万象の絶えざる連環の末に『我』が今此処に在る理を――!

    *

急激に襲う喪失感――まるで半身を引き剥がされるような……

盆がゆっくりと押され始めるのを感じて初めて、彼女が先に加速状態から脱しているのに気づいた。少し慌てて、[主観\ベルグソン]時間を同期。『ゆっくり押される』と感じたのは、加速された意識での主観。実際は、やや乱暴に突き出すように、盆を押し付けてきていた。

そのまま、その反動を使って踵を返し、振り返る事もなく駆け去って行く。

加速剤酔いから抜け切れぬ、僅かにふらつくその歩調を、同じくゆっくりと波打つ視界の中で見送ってから、手元に残った土瓶蒸しに目を落とす。未だに湯気を立ち上らせている――差し出されてから、[客観\ニュートン]時間では一秒余りだった。

街角で何とも場違いな土瓶蒸しの受け渡し、ただそれだけで別れていく男女――目撃者が居たとして、その一瞬に、宇宙開闢以来何者も成し得なかった高密度情報交換が在った事など、想像し得ようか。

靡く湯気に香るは米と水のみ。恐らく味は全くついていないだろう――調味料など真面に使えるはずもないのだ。

――いや…… 薄い塩味ならついているかもな。

極限まで強化された彼の視覚は見逃す事は無かった――振り向きざまに睫から散った、微かな、地面に落ちる前に乾いて消えてしまった雫一粒を。

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………………にゃんですか、 このでんぱゆんゆんな展開ゎ〔呆〕。

まぁいーけど。 でも今まで書いた部分との整合性は再チェックしないと。

とゅわけで残すところ二回、 次はついに出るよっ、 文化包丁っっ!!

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typodupeerror

Stableって古いって意味だっけ? -- Debian初級

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