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gatinhoの日記: 最後の富士ぶさ 1

日記 by gatinho

子供のころから乗るのが憧れであり、夢だったブルートレインに乗っ
てきました。

先月に「富士」号で大分から東京へ、3月12日に「はやぶさ」号で
東京から熊本へと。3月13日の「富士ぶさ」最終便は臨時列車扱い
だったらしく、どうやら12日に乗車したブルートレインは定期列車
としてはまさしく最終便だったようです。

東京駅では午後5時前から鉄道ファンやブルートレインに深い思い入
れを持った方々がすでに東京駅10番ホームにたくさんいらっしゃいま
した。まだかまだかと「富士ぶさ」が到着するのを、まるで恋人を待
ち焦がれているかの如く辛抱強くそして様々な思いを胸に秘めながら
待っていたように映りました。
途中、停車する駅だけでなく、通過する駅や沿線で撮影をする人や、
手を振る人たち、そして手作りの横断幕を持って田んぼのど真ん中で
必死に手を振ってくれた人たち。様々な人々の思いを乗せてブルート
レインは走ってきたんだと実感すると、自然と鳥肌が立ち、涙腺がゆ
るんできてしまいました。これは乗務していた運転士や車掌・そして
最後だからと精一杯のお化粧をしていた車内販売のおばちゃんたちは
人生と共にした列車の廃止を人一倍、言葉に出来ない感情が胸を支配
していたのかもしれません。
終点、熊本駅到着数分前に車掌によるアナウンスがありました。誰も
が耳をすまして聞き入っていたと思います。JR西日本の車掌はしっか
りとした口調でブルートレインへの思いを込めた、乗車のお礼をしま
したが、JR九州の車掌は「はやぶさは3月13日をもって・・・廃止しま
す」と短いアナウンスとなりました。ですが乗客の誰もがわずかに震
えていた声と、その言葉と言葉の間の永遠とも感じられた長い沈黙が
彼のブルートレイン乗務にかけた想いを物語っていたと感じ取ってい
たことだと思います。
おりしも発達しながら北東へ進んでいた低気圧もあり、道中雨が降り
しきっていました。ですが熊本駅に到着すると小雨になっていました。
役目を果たしたブルートレインを牽引する機関車が汽笛を鳴らし、回
送をはじめると突然の大雨。まるでそこにいた人だけでなく、日本中
のブルートレインファンやお世話になった人、そして関係者の号泣の
ようでした。

そういえば学生のころ、旅行といえば青春十八きっぷを最大限有効活
用して、夜行の快速や鈍行を乗り継いでいろんなところに行ってきた
のを思い出します。列車での移動も旅の一要素であったのですね。昼
行で一緒の席になった人たちと意気投合し、夜行が一緒だって言うん
でほかのお客さんにお願いをして席を交換してもらい、一晩中ひざを
合わせて語らいあったことがあったのを思い出しました。クロスシー
トで一緒になった人とのひと時の出会いや会話なんてとうの昔に忘れ
てきてしまったんだな、忘れてしまってはもったいないな。

午後6時に東京を出発して翌日正午前に熊本に到着するというなんと
も前世紀の乗り物ではあったけれど、学生のころ楽しんでいた旅の醍
醐味を思い出させてくれた貴重なきっかけになりました。

そして・・・
あまりにも速く・便利になった新幹線や飛行機での移動が旅行という
行程において、することがない…いや、何もできない時間なんだなと
思うと、時間と引き換えに楽しみを放棄していたんだともったいなく
思いました。

いつの日か、夕方、夜、深夜、早朝、朝、昼を駆け抜け、あの大きな
窓を通して見る風景のある優雅で贅沢な旅をまたしてみたいものです。

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日々是ハック也 -- あるハードコアバイナリアン

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