gedoの日記: 組込みクライシス
加えて、今日になって止めても止まらぬ電動自転車、転倒事故で22万台リコールである。メーカーのヤマハのリリース「ヤマハ発動機(製)後輪モーター型ドライブユニット搭載電動ハイブリッド自転車の自主改修についてご案内します。」では、「極稀に、トルクセンサーのスプリング座面が磨耗するものがあり、これによりトルクセンサーの精度が損なわれる」、「コントローラー基板に電流センサーを固定する半田(ハンダ)にひび割れが発生するものがあり、一時的にモータへの電流制御に異常を生ずる」としている。
今回はさすがに怒りモードなので過激な表現もあるけどご勘弁を。
つまり、この電動自転車はどっか故障したら簡単に暴走する代物ということか...
おそらく、前者はセンサーが摩耗して異常に周波数の高い信号を出し、それを真に受けたコントローラーがモーターを全速力で回し、 後者はモーター用のMOSFETかなんかの周辺か(数秒ってあたりが臭い)、電流センサの配線が切れたら、電流ゼロと同じ信号をコントローラーに与え、コントローラーはこれを真に受けモーター(を制御する素子)を全力駆動していたのかもしれない。
とにかく私が以前から指摘していた問題が段々と露見しまくっている感じがする。
一応、組込み系や制御系の人なら多重化については物にもよるが、ハードもソフトも問わず(システムトータルとして) フェイルセーフは当たり前だと思うのですが、ハード系ソフト系含めて、その辺の認識や技量の足りない者が多いようです。(私も昔は先輩にしつこく言われたものです)
特に大物や乗物系の場合、どこか故障とか事故で一部が壊れても極力安全サイドで止めなければならない宿命がある。暴走などというのは最悪の事態だ。(関連書籍とかにもモーターとかはコントローラーが積極的に駆動したら動くようにするとか、センサー類は壊れたら安全サイドに向かうように信号を出すなり、故障と区別できるようにするとか書いてある)
さらに困った背景として、現場でハード系や組込み系の技術者が見つからないとか、パソコン系の技術者に組込みをやらせて、 とんでもない物を作られて機械がおかしな動きをしたとか、そういう状況が発生しているという話を現場や就職サイトで良く聞く。(というか私にまでハード系の話が舞い込んでくるのが良い例だ)
さらに、特にコンシューマー製品に多いが、過度なコストダウンでカタログスペックには載らない、安全をコストカットの対象にせざるを得ない面まであったりしている。
さらに、システムの大規模化やパソコン系の人でもできるようにするため、組込みにパソコンOSを使用するケースが増えていますが、 そのうち特にATMとかがウィルスに感染して、犯罪に悪用されないか危惧している。
まあ、ようやく国も問題を認識し始めたということのようです。
外部から見ると何がいけないのかよくわからないと思いますが、パソコン系と組込み系は求められる物かなり違うことろがある。
- リアルタイム性:パソコン系であれば相手は人間であれば、砂時計出して待たせてもいいし、そうでなくてもリトライで 解決できる物も多いが、組込みの場合制御対象は待ってくれない、おくれたらまともに動かないとか最悪は暴走という物も珍しくない。 とにかく必ずシステムに必要な時間内に制御対象に処理結果を出さなければならない世界である。
- フェイルセーフ:何かあったら極力安全サイドにする。特に乗物系は、一部が故障とか事故で破損してもだ。
- バグに対する姿勢:上記とも関係するが、特に大物を制御する場合、バグで人が死ぬこともある。死ななくてもソフトのアップデートも インターネットでというわけにかいかず、人手のかかる世界であるので、バグには厳しく保守的な姿勢になる。
- ハードやメカの知識:これなくして組込みは勤まらない。制御対象やらプロセッサに関する知識は必要だ。リアルタイムOSなどを使えば、ある程度はカバーしてくれるが、パソコンのOSほどの抽象化は望めないことも多いし、そんなリソースはない物が大半である。
このようになった責任は、まず第一に技術者の生活や、下手をすれば人権すら無視した
デスマーチと言ったキーワードに代表される苛酷な労働環境や業界自体の派遣依存体質で、技術者を育てずに使い捨てにし、ベテラン不在な状況を作ってきたコンピューターやエレクトロニクス関連業界にある。補足しておくと、一般には収入が高いと誤解している人も多いが、それは大手メーカーとか派遣ツリーのトップにいる天上人だけであり、実際に現場を担っている末端の人貸し会社ともなると年収200万円台とか300万円台で頭打ちとかも多い。加えてその他諸々の事情で35歳が業界定年と言われる現状では、結婚して家庭を持つどころか、経済と自分の身の回りの両面でパラサイトシングルせざるを得ない人も多い。これでは勉強する時間も金もない、将来のキャリアパスとか希望を持てない。これでは有能な若者もこないだろう。
次に石原都政の下、エレキ、ハード系の故郷、子供たちが興味を持つきっかけを満たす場としての秋葉原を再開発を通じての希釈化、萌え化、警察を動員して称して凶器類はともかく、工具や電子部品を持っている人まで微罪逮捕してみたり(アキバ狩りというそうです)して破壊していったり(テレビで部品屋のオヤジがボヤいていた)、一時期には環境やオリンピック対策のための物作り系の産業に対する各種規制によって組込み系・ハード系の活躍の場を地方に追いやってきた(組込みに拘りたいから地方に移住なんて話も就職サイトや組込み系展示会などでは半年程前までは良く聞いた話でした)ことも大きい。
まあ、石原慎太郎都知事は、東京国際アニメフェアなんか始めて、成人向けゲームの関係者を「この知られざる才能は、世界に届く存在だ!」と発言していたりと、コンテンツ系にかかわる方向を向いているようですから、こうなるのもわかる気もしますが。
で、文句ばかり言ってないでどうすればいいかということを考えてみた。
とにかく法規制もいいけど、まずやるべきは組込み系・ハード系・メカ系など、工学系(とでも言おうか)の人材の育成である。そして、関連業界の大手術である。派遣依存体質(と派遣ツリー)を破壊し、デスマーチに代表される残業依存体質の改善、労働環境や待遇を改善し、一生続けられる職業にすることで技量を高められるようにすることである。
ただし、その結果として、人貸し(さらに言うなら多重派遣とか偽装請負とか)しかできない会社や、そういうレベルの会社にしか入社できない技術者には退場していただくより他にない。ただ、彼らの雇用の受け皿やら円滑な他産業への移動とかはどうにか考えなければならないだろう。闇雲に彼らを放り出すには、この業界は大きくなりすぎたのだ。(炭鉱労働者並みにやれとまでは言わないけど)
次に理系の故郷、入門の場の再生である。秋葉原を再開発もいいけど、もはや土地とかの権利関係がややこしくなりすぎて、仮にできたとしても手遅れになる公算が大である。もはやどこかまとまった土地に新秋葉原を作る方が現実的な気がする。
もっとも、これらをできるようにするには、理系エリートの政界・官界への登用により、文系優位体制を改めることと、理系に変な偏見をふりまく、マスゴミの再教育が必要となるだろう。
最後に私事だが、私も体を壊して療養中というかそんな感じであるが、たぶん次の仕事には技術者を選ばないと思う。
医者にも色々いわれて、命あっての物種だと思うし、親も永久に生きているわけじゃないし、生涯独身を望んでいるわけでもない。そして、この間に自分がこの業界にいた間にいかに人間として疲弊しダメになっていたかを思い知らされたからだ。そして、石原都知事がまた当選したのを見て、こりゃダメだと何かが切れたのだ。
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