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genkikkoさんのトモダチの日記。 過去1週間(やそれより前)のストーリは、ストーリアーカイブで確認できますよ。

13601816 journal
日記

phasonの日記: 硫化亜鉛の隠された性質:遮光下での塑性変形 4

日記 by phason

"Extraordinary plasticity of an inorganic semiconductor in darkness"
Y. Oshima, A. Nakamura and K. Matsunaga, Science, 360, 772-774 (2018).

名大のグループによる面白い研究成果である.
無機半導体は集積回路や光学素子,光電変換などさまざまな場所で利用されている.一般的な印象として,これら無機半導体材料は硬くて脆い物質であり,あまり柔軟な塑性変形は示さない.このため近年研究が進んでいるようなフレキシブルな電子回路などの用途には有機半導体などが用いられている.
今回の論文で扱われているZnSもそういった無機材料の一つであり,硬くて脆いという典型的な力学的挙動を示す……と思われていた.
今回報告された論文は,このZnSの力学的特性が,周辺の光によって大きな影響を受けている,という知られていなかった事実を明らかとした.

ほどほどのバンドギャップをもつ半導体に光を当てると,キャリアが励起され電動特性等が大きく変わることはよく知られている.例えば今回の論文で扱われているZnSをはじめ,CdSやPbSなど多くの物質で観測されている.
そのため光照射による伝導現象の変化などはよく調査されているのだが,一般的に力学的な特性,例えば硬さや塑性変形のしやすさ等は何とはなしに「光が有ろうと無かろうとそんなに変わらないだろう」と無意識に考えているのではないだろうか?
今回著者らは,角柱状のZnSの単結晶の上下方向から圧力をかけ変形させるという実験を,UVや可視光の照射下と,完全な暗状態とで比較した.
なぜそんなことを使用と思ったのかは謎ではあるが,得られた結果は驚くべきものであった.通常の条件下,つまり自然光やUVの照射下では,ZnSの結晶はせいぜい3%前後程度の変形を受けただけで砕けてしまった.ところが不思議なことに,完全に光を断った状態だとZnSは一段「柔らかい」特徴を示し,半分程度の力で変形を開始.しかも45%の変形を受けるまで柔軟に形を変え続けたのだ.つまり,ZnSは光が当たっているときは硬く砕けやすい一般的にイメージする無機塩的な挙動を示すが,光がないとプラスチックのように柔軟に形を変えられる,という事になる.
しかも変形に伴い,無色であったZnSは次第に薄黄色~褐色に呈色していくことも確認された.これは結晶中に生じた欠陥部分が不純物準位のように働き,バンドギャップを縮めていることに由来する.
なお,光を断って変形させた結晶に改めて光を当てると,その状態で硬さが増し,それ以上の変形を起こしにくくなるという挙動も確認された.その後にまた光を断てば柔らかくなるなど,この挙動は可逆的でもある.

日頃浴びている光を断つだけで柔らかくなるというのはなんとも不思議な結果であるが,何が起きているのであろうか?
著者らはミクロなメカニズムを明らかにするため,電顕による調査を行った.通常の環境下,つまり光を受けているときの変形では,外力により結晶の一部が滑ると,その部分からはっきりとした双晶変形が見られることが確認できた.結晶に力を加えていくと,あるところで欠陥が生じ,その部分で少し結晶が滑り,面状の欠陥が生じる.生じた欠陥が動きにくいと,ズレた部分では原子の並びが斜めになっているので,向きの違う結晶が接合されたような状況となる.

変形前
○-○-○-○-○
| | | | |外力→
○-○-○-○-○
| | | | |
○-○-○-○-○
| | | | |外力←
○-○-○-○-○

変形後(1. 二つの欠陥面が生じている)
  ○-○-○-○-○
  | | | | |
  ○-○-○-○-○ ←欠陥面
  / / / / / 
○-○-○-○-○ ←欠陥面
| | | | |
○-○-○-○-○

変形後(2. さらに変形が進み,上側の欠陥面のみが上方へと移動)
    ○-○-○-○-○ ←欠陥面
  / / / / / 
  ○-○-○-○-○ この部分,結晶の向きが違う(双晶)
  / / / / / 
○-○-○-○-○ ←欠陥面
| | | | |
○-○-○-○-○

この双晶変形を示すような場合は,欠陥面が動きにくく変形があまり自由ではないので,ある程度以上の変形は困難であり硬くて脆い特性が表れる.

一方,光を断った状態で変形させた結晶を観察すると,双晶変形は確認されず,欠陥面に挟まれた無数の細い領域が確認された.これは要するに,滑り変形が進んでいるような感じである.

変形前
○-○-○-○-○
| | | | |外力→
○-○-○-○-○
| | | | |
○-○-○-○-○
| | | | |
○-○-○-○-○
| | | | |外力←
○-○-○-○-○

変形後(1. 二つの欠陥面が生じている)
  ○-○-○-○-○
  | | | | |
  ○-○-○-○-○ ←欠陥面
  / / / / / 
○-○-○-○-○ ←欠陥面
| | | | |
○-○-○-○-○
| | | | |
○-○-○-○-○

変形後(2. さらに変形が進むが,欠陥面がペアで移動している)
  ○-○-○-○-○
  | | | | |
  ○-○-○-○-○
  | | | | |
  ○-○-○-○-○ ←欠陥面
  / / / / /
○-○-○-○-○ ←欠陥面
| | | | |
○-○-○-○-○

この場合,外力に対応して欠陥面のペアがスルスルと移動するだけで変形が伝播するため,結晶は柔軟に変形することが可能となる(変形による原子位置の移動が,どんどん連鎖して大きく移動することが出来る).

著者らは,このような欠陥面の移動のしやすさの違いの原因をキャリアと欠陥との間の相互作用に求めている.欠陥部分は半導体におけるある種の不純物準位のように働く.このため,電子やホールといったキャリアと欠陥の間には引力が働く.ZnSなどの光導電性のある物質に光が当たっているとある程度のキャリアが定常的に発生しており,このキャリアが外力によって生じた欠陥部分にトラップ,それにより結晶の欠陥が移動しにくくなり,結果として外力による自由な変形を妨げている,というわけだ.
光を断った状態ではキャリアがほとんど存在しないので,外力によって生じた欠陥は自由に結晶中を動き回ることが可能となり,柔軟な塑性変形を引き起こす.

何というか,環境光レベルの光の有無でこれほどまでに物質の柔軟性が変わってくる,というのは予想外で面白い結果であった.

13575786 journal
日記

phasonの日記: 合成生物学:遺伝子編集を用いた細胞のアナログメモリ化 2

日記 by phason

"Rewritable multi-event analog recording in bacterial and mammalian cells"

W. Tang and D. Liu, Science, 360, eaap8992(1-10) (2018).

遺伝子改変技術の進歩に伴い,さまざまな刺激に応じて何かのタンパク質を発現させたりする技術が急速に発展している.これを用いれば,例えば特定の環境下で発光して知らせる細胞であるとか,ある化学物質の濃度が高くなるとそれに応じた何らかの物質を生産する細胞などの作製が可能になることから,生きたセンサーや生きた化学工場,生きた医療デバイスなどとしての利用が可能になると期待されている.
さて,これらの研究の多くは「入力(化学的環境)に応じて(化学的な)出力を行う」という,ある種の計算機的なものと見なすことが出来るわけだが,計算機とするには重要な素子が欠けていた.それは「書き換え可能なメモリ」である.今回の著者らの報告は,細胞内/DNA内に外部環境に応じて情報を書き込んだり初期化したりする,というものになる.
これにより,例えば累積的な環境の以上をあとから読み出したり,各種のイベントがどういった順序で起こったのかを記録したりと,まさに細胞を生きて増殖する記録媒体(そして将来的には,それに応じて応答する生きる生命化学機械)として利用する事が可能になるわけだ.

今回著者らが用いたのは,生きた細胞としては大腸菌,情報の記録としては主にプラスミド,情報の書き込み手段としてはCRISPR-Cas9または一塩基エディタを用いている.

プラスミドというのは大腸菌などがもつ環状のDNAであり,大腸菌本体のDNAとは別個に存在しつつも大腸菌の生存にとって必要だったり有利になったりするタンパク質がエンコードされたDNAである.このプラスミド,細菌の接合などにより個体間で頻繁にやり取りをされており,これにより例えば特定の抗生物質に対抗できる能力が広く伝播したりする.工業的/生物学的には大腸菌等に発現させたい遺伝子をプラスミドに組み込み大腸菌に導入することで,さまざまなタンパク質を量産させたり,大腸菌に特定の機能を組み込んだりと活用されている.

CRISPR-Cas9系は,要するに「特定の配列を認識し,その場所でDNAを切断する」というタンパク質である.これを利用する事で,狙った配列だけを切断(そして,その部分に特定の配列を組み込んだり,削ったり)できる.標的を特定するガイドRNAを作る部分の配列を変えることで,任意の配列を標的とすることが可能だ.

最後の一塩基エディタは,CRISPR-Casによる「特定箇所の編集」を改善したもので,最近ホットな研究テーマだ.CRISPR-Casは特定の部分を切断できるという素晴らしい能力を持っているのだが,DNAの2本鎖を2本とも同時に切断してしまうため,組替え部分に意図しない変異などが入ることがあった.それに対し近年開発されている一塩基エディタなどでは,例えば2本鎖の片側だけを切ったり改編したりして,それを鋳型とすることで文字通り特定の一塩基のみを書き換えることを可能とした手法だ.今回の著者の一人,D. Liuはこの一塩基エディタの開発で素晴らしい結果を残している.

でまあ,そういったものを組み合わせてどうやって記録を実現したのかというと,以下のようになる.
まず,2種類のプラスミド,R1とR2とを用意する.この2つのプラスミドはほとんど同じ配列を持っているが,1箇所(3塩基分)だけ異なる配列となっている.大部分を同じ配列にしているのは,このプラスミドを保持することによるコストをほぼ同一にするためだ.例えばR1の方がコストがかかるとなると,R2のみを持っている大腸菌の方が増殖しやすくなるので,そういった差を無くしたわけだ.
そして大腸菌本体のDNAの方に,Cas9のシステムを組み込む.このときガイドRNAが標的とするのは,R1の配列である.ただもちろん,そのまま発現させてしまうと単純にR1がどんどん切断されて排除され全てR2になってしまうだけなので,このCas9のプロモーター(その先のDNAの発現を決めている部分.この部分に特定のタンパク質が結合すると,続く配列部分が翻訳され発現する)としてTetO配列を組み込んでいる.これはよく使われる「テトラサイクリン遺伝子発現調節システム」で,通常時は別の箇所に組み込んだR配列が作るTetリプレッサーと呼ばれるタンパク質がTetO配列に結合,これによりTetO下流の発現を抑制する.この状態で系中にテトラサイクリン(もしくはその前駆体のアンヒドロテトラサイクリン)が導入されると,こいつがTetRと結合してTetRを無効化,結果として自由になったTetOがプロモーターとして働くようになり,その結果下流の配列が発現する.要するに,テトラサイクリンを加えたときだけ特定の配列が発現し,それ以外のときには発現しないようなシステムを作れるわけだ.で,今回の系ではテトラサイクリンが存在するとCas9が発現,こいつがR1プラスミドを認識して切断する,という流れになる.

まず著者らは,大腸菌に組み込んだR1とR2の比率が世代交代で変化してしまわないかをチェックしている.その結果,もとの状態から1015ぐらいにまで増殖(実際にこれだけの膨大な数になったわけではなく,1000倍に増やし,その一部をとってきて1000倍に増やし……で実効的にこの希釈率という感じ)しても,当初のR1/R2比が維持されていることを確認している.R1/R2が60/40からスタートすれば1015倍状態でもR1/R2はほぼ60/40(1~2%以内の差),違う比率である29/71からスタートすれば最終的にも29/71(同様にわずかな誤差)が維持されていた.

では情報の書き込みである.R1/R2が58/42である大腸菌の培養系中にテトラサイクリン(のもとになるアンヒドロテトラサイクリン)を加えて培養する.すると当然ながらCas9が発現しR1プラスミドのみを切断するので,培養されている大腸菌群中ではR1の量が減っていく.3時間後ではR1/R2は21/79,6時間後には4/96にまでR1の比率が低下していた.要するに,テトラサイクリンという化学種の刺激の積算量を,R1プラスミドとR2プラスミドの比の変化という形でDNAに記録できている,というわけだ.しかも特定化学種がある/無いの二値化ではなく,どのぐらいの濃度・時間あったのか,という事をアナログ的に記録できている.

著者らはさらに記録の高度化として,先ほどの「下流側の発現を抑制するTetO」に加えて,「上流側の発現を抑制するLacO(IPTGがあると解除され,転写が可能になる)」をCas9配列の下流に導入した.要するに,カギを2つ付けたわけだ.先ほどまではテトラサイクリンがあればCas9が発現してR1を分解していたが,今度はテトラサイクリンとIPTGの「両方が同時に存在する」ときのみCas9が働きR1を減少させる,つまりANDゲートとして働く.この場合も先ほどと同様に,二つの刺激があるとR1の比率が顕著に減少する,という,目的通りの情報記録に成功している.

これだけだと「情報の記録」といってもWrite Onceであるので,著者らはもう一歩進めて情報の初期化も可能にした.1つ目の方法は,R1,R2に薬剤耐性遺伝子を同時に組み込む,という方法だ.例えばR1にのみ抗生物質に対する耐性遺伝子を組み込んでおく.すると,抗生物質による処理を行うと,R1をもつ大腸菌ほどより高い確率で生き残る,つまり大腸菌群におけるR1の比率を増やすことが出来る.Cas9は刺激でR1を減らし,情報を初期化したいときには適切な時間だけ抗生物質の存在下で培養を続ければR1を持たない大腸菌がどんどん死んでR1の比率がまた高くなる,というわけだ.
2つめの手法としては,Cas9の標的を選択性にする,というものも試みている.Cas9がどんな配列を切るのかはガイドRNAの配列に依存するわけだが,このガイドRNAのもとになる配列を2種類用意し,それぞれ違う刺激で発現するための異なるプロモーターを用意する.これにより,Aという刺激が加わるとガイドRNA-1が作られR1が切断され,Bという刺激が加わるとガイドRNA-2が作られR2が切断される.これにより,R1/R2比を自由に初期化できる.

プラスミドを使う手法では,プラスミドをもつ大腸菌などでしか利用できない.そこで著者らは別な情報記録手法として,著者の得意技である一塩基エディタを用いた系も開発した.まあこちらも基本的な考え方は一緒で,「特定の刺激があると一塩基エディタが翻訳され,特定の箇所の配列を書き換える」というものになる.
さらに発展系としては,「標的とする配列が異なる3箇所であるような一塩基エディタ×3を,それぞれ違う刺激で発現するようにしておいて,3種類の刺激をそれぞれ別個に記録する」などを開発している.
面白いのは,「二つの一塩基エディタだが,認識する配列が部分的に被っていて,最初にAという刺激を受けるとエディタ1によって配列の一部が書き換えられ,書き換えられた結果がエディタ2の標的となる」という系だ.単にエディタ2が起動されただけだと,標的配列が無いため書き換えが行われないのだが,「エディタ1が起動された後」だと「書き換えの結果,標的となる配列が生み出される」ためにエディタ2が活動,書き換えが起こる.つまり,二つの事象が,特定の順序で起こった場合にのみある部位の書き換えが起こる,というような複雑な情報処理が可能になっている.

発想は単純なのだが,実験は結構面倒くさそうである.あとはこれに様々なタンパク質の発現,発現したタンパク質による効果や抑制やなんだかんだと組み合わせると,非常に高度な化学的演算による生化学的処理が可能になりそうで面白くはある.

13564170 journal
日記

phasonの日記: 熱衝撃を用いた多成分合金ナノ粒子の合成法

日記 by phason

"Carbothermal shock synthesis of high-entropy-alloy nanoparticles"
Y. Yao et al., Science, 359, 1489-1494 (2018).

金属ナノ粒子は特に触媒としての利用が広く行われており,その特性の向上は化学工業における生産性や排ガス処理など非常に幅広い分野に大きな影響を与える.触媒用途という面から見ると,さまざまな金属元素を含んだナノ粒子,つまりナノ合金をどのようにして作製するかは特に重要なポイントとなる.触媒特性は粒子表面での原子の並びとその電子状態に依存しているのだが,複数の金属元素を合金化することでその電子状態を変化させたり,複数種類の金属元素が接している部分で特異的な反応が起こったりするためだ.
ところが,多数の金属元素を含むナノ粒子を作成する事には大きな困難が伴う.例えば製造が容易なウェットプロセス,つまり溶液中での金属イオンの還元を考えると,還元剤により最初に還元されるのは最もイオン化傾向の小さい金属(典型的には金,白金など)であり,溶液中に共存するもっと卑な金属(例えば鉄であるとかスズであるとか)を同時に還元することは出来ない.そのため複数種類の金属イオンが共存する溶液に還元剤を放り込んだからといって,合金が出来ることはそうそう無いわけだ.
一応,そういった難しさを解決する手法も色々と研究されてはいるのだが,複数回に分けたリソグラフィーを伴うな複雑なプロセスが必要であったり,生成する粒子の組成やサイズのばらつきが非常に大きい手法であったりと,なかなか決定打は存在しない.

今回報告されたのは,そんな作成が難しい「ナノ合金」を,いとも簡単に,しかも8種類もの金属を混合して作製できる簡便な手法である.しかもこの手法,急冷によるクエンチを伴うので,通常では合金化できないような組み合わせ(例えば,バルクでは金と鉄は混ざらない)であっても構わず固溶体の合金にしてしまえる,という特徴を持つ.

ではまず,著者らの行った手法を見ていこう.ナノ粒子の担体となるのは,高分子ナノワイヤーを焼きだして炭素化したカーボンナノファイバーである.このカーボンナノファイバーからなるぺらぺらのシートを金属イオンの塩化物を溶かしたエタノール溶液に浸し,十分染みこませる.合金を作りたい場合は,この段階で複数の金属イオンを含む溶液を用いる(例えば塩化鉄と塩化コバルトと塩化白金酸を含むエタノールに浸す,など).カーボンファイバーシートを引き上げたら乾燥させ,アルゴン雰囲気中で通電加熱を行う.要するに,導電性のカーボンファイバーシートの両端に電極をつけ,そこに電流を流すことで一気に加熱するわけだ.このとき,加熱を十分短時間で行うことがポイントである.著者らは合金ナノ粒子が作りやすい条件として,55ミリ秒程度のパルス加熱がいい感じだったと書いている.
金属イオンが染みこんだカーボンファイバーシートはジュール熱により105 K/sという猛烈な昇温速度で加熱され,およそ2000 Kに達するとそのまま50ミリ秒ほど電流が流し続けられ温度をキープする.その後電流が切られると,これまた105 K/s程度の猛烈な速度で冷却される.なお,加熱時間や冷却時間は,流す電流値やその減衰の仕方などによりコントロール可能である.

こうして加熱されたカーボンファイバーシートを電顕で確認すると,数百 nm程度の太さのカーボンファイバーの表面に,5 nm程度のかなり均一性の高いナノ粒子が無数に付着していることが確認された.電顕付属のEDXで元素分析を行ったところ,個々の粒子内に原料として入れた金属イオンが満遍なく取り込まれていることも確認できる.著者らは色々な組み合わせでデモンストレーションを行っているが,例えば単一成分のナノ粒子に始まり,PtNiやAuCuといった二元系ナノ粒子,PtPdNiやAuCuSnといった三元系,PtPdCoNiFeといった五元系やとりあえず手元にあったやつ全部入れました状態のPtPdCoNiFeCuAuSnの8元系ナノ粒子など,もうとにかく色々作っている.どの粒子も内部では各金属原子がランダムに入り交じった固溶体となっており,しかも結晶質のナノ粒子となっていることが確認された.
これはなかなか凄いことで,例えばこれら8元素は原子半径で1.24~1.44 Åの幅があり,酸化還元電位( vs SHE)で言えば酸化されやすいCoやNiの-0.25あたりから酸化されにくい金の1.5 Vぐらいまでとこちらもものすごい幅がある.しかもバルクだと体心立方格子になる金属や面心立方格子になる金属や六方最密になる金属等々と,結晶構造の違う金属まで入り交じって一つの結晶となっている.
また,粒子ごとの組成のばらつきや,粒径のばらつきもかなり小さい.例えば5種混合のPtPdCoNiFeに関しては,組成のばらつきは10%程度しかない.過去の報告例にあるリソグラフィー法などでは50%など非常に大きなばらつきがあるのとは対照的である.

では,なぜこれだけ簡便な手法で,これだけ綺麗なナノ粒子が得られるのだろうか?著者らは検証のためにいろいろと条件を変えて実験を行いそれを考察しているのだが,ここでは結論のみ記すことにする.
まず,急激な加熱により金属塩は分解し,高温のため塩素が気化して中性の液化した金属が残る.この中性の金属ナノ液滴は,担体であるカーボンファイバー表面に残存している無数の酸素欠陥(ポリマーを焼きだした際に形成された酸素を含む置換基)を「食べる」.これは要するに,金属が触媒となって酸素欠陥部分がCOやCO2として脱離する反応なわけだが,周囲に無数の酸素欠陥がある状況のため,最初に形成された金属ナノ液滴は多方向へ一気に広がろうとし,無数の小さい液滴に分裂しながらカーボンファイバー表面を疾走する.
走り回るナノ液滴は途中で別種の金属原子からなるナノ液滴と幾度も衝突し,そのたびに融合&多方向に広がって分裂,を繰り返すことである種の平衡状態となり,均質な組成をもつ無数の金属ナノ液滴を形成する.著者らの概算では液滴の会合・分裂は106回以上は起こるという事なので,この間に十分な混合が起こると期待される.
その後パルス状の電流印加が終了すると,今度は温度が一気に下がる.すると金属ナノ液滴はもはや移動することは出来なくなり,そのまま急冷され結晶化,合金ナノ粒子が生成する,というわけだ.当然ながら,この最終段階であえてゆっくり冷却するようにすると,ナノ粒子内で異種金属が分離析出したり,という事も起こる(いわゆる,バルクで合金化しない組み合わせの場合).
要するにまあ,
・酸素欠陥のおかげで金属液滴が動き回り,良く混合され均一な合金になる
・急冷により,混ざったままクエンチしてそのまま結晶性合金ナノ粒子化
というわけだ.著者らは今後のサジェスチョンとして,「もっと急冷できれば,アモルファスナノ合金も出来るんじゃないかな」と書いているが,おそらく可能だろう.

というわけで著者らの開発した新手法だが,この論文はそれだけにとどまらず,新たな触媒作成法としてのデモンストレーションも行っている.この手法でPtPdRhRuCe五元系触媒(均一な合金)と,相分離してしまっているPtPdRhRuCe五元系触媒で,アンモニアの酸化を行っている.この反応はいわゆるオストワルト法による硝酸の合成の最初のステップなのだが,NH3からNOやNO2といったNOxを作りたいのに,しばしばN2やN2Oが生成してしまうことが知られており,純度を上げるためにはかなり高温に上げる必要がある反応である(現在工業的に使われているPt触媒で800 ℃程度,コスト押さえるためにPtの量を減らすと900 ℃以上などになりがち).
実験の結果,今回の手法で作製した固溶体五元系触媒だと,温度を700 ℃に上げるだけでほぼ100%の選択性でNOとNO2を合成することに成功している.これは現在工業的に用いられている触媒が800 ℃以上を要求するのに対し,かなりの低温で済むことになる.これに対し,同じ組成の相分離してしまっているナノ粒子だと,わずか20%以下しかNOやNO2が生成しなかった.本手法の「多種金属が完全に均一に混合している」という利点が旨く発揮されている.なお耐久性としては,とりあえず30時間反応させても反応性,選択性ともに変化は見られておらず,そこそこの耐久性はあるようだ.

さらに著者らは量産性のことも視野に入れており,ポリマーナノファイバーではなく,木材を焼きだして作った活性炭を用いても同様の事が可能で,この場合体積が非常に大きくなるから一度に多量に作れる,であるとか,最終的にはカーボンファイバーで出来たシートをロール状にして,roll-to-roll方式でいけるんじゃないか,という事でそれを模擬した実験を行ったりもしている.詳しくはSupplementary Materialsの図S75あたりをご覧いただきたい.

というわけでナノ合金の作成法であった.
これ,こんだけ色々な金属を自由自在に合金化できるとなると,かなり応用範囲は広い感じである.しかもナノ材料にありがちな「特性は良いんだけどコストがね……」という点も,Supplementary Materialsで試しているバルク木材で大量作成だとかroll-to-roll方式がいけるとなると相当なインパクトがありそうだ.

13550124 journal
日記

phasonの日記: 水の液液相転移を再現できる(?)新たな水溶液 3

日記 by phason

"A liquid-liquid transition in supercooled aqueous solution related to the HDA-LDA transition"
S. Woutersen et al., Science, 359, 1127-1131 (2018).

今回,事前知識がかなり必要なので前振りがかなり長め.

水は非常に身近な溶液でありながら,その挙動には他の液体と比べかなり奇妙な点が多い.例えば通常の液体が温度の低下とともに単調にその密度を上げていくのに対し,水は4 ℃で密度最大をとったあと温度の低下とともに密度が逆に低下していく.これは一般には,「低温にいくと水素結合のせいで密度が低い氷の構造に近づいていくため」だと考えられているが,実際にはもっと複雑な事情が隠れている(と信じられている).現在の科学の認識では,常温付近の水というのは「異なる構造をもつ2種類の液体のミクロな混合物」であると推定されているのだ.

話は1980年代に遡る.当時,さまざまな金属であったりといった各種の液体を急冷することでのアモルファス固体の作製が研究されていたのだが,その中でMayerらは微小水滴を超急冷することでアモルファス氷を作成する手法を開発する.このアモルファス氷を加熱していくと,136~160 K付近(研究によりばらつきあり)でガラス転移を示し,液体となると報告された(*).

*ただし,液化した直後に結晶化して通常の固体となってしまうため,液体状態の研究は出来ていない.また,2004年には類似のガラス転移を示す無機固体の研究からの類推で,このとき熱測定で見出された「ガラス転移(ガラス状態 → 液体への転移)」と思われていたものは,実はガラス転移よりも低い温度で起きるガラス転移の「影」のような前駆現象である事が指摘されている.

一方,三島らは「氷の融点は高圧下で低下する.ならば,低温で氷に十分に高い圧力をかければ,極低温で液化させられるのではないか?」との発想から実験を行い,液体窒素温度の氷に高圧を印加するとあるところで体積が一気に縮み,高密度の別種の構造をもつ固体に転移することを発見する.この「高密度の固体」は圧力を除いたあとも(低温を維持していれば)そのままの形で取り出すことが可能で,X線などの結果からアモルファスの氷(ただし,過去に液滴の急冷で得られたものよりかなり密度が高い)である事が判明した.
また,のちに行われた実験により,液滴に急冷で得られる低密度のアモルファス氷(Low Density Amorphous Ice,LDAと称される)に圧力をかけていくと,この高密度のアモルファス氷(High Density Amorphous Ice,HDA)に転移することがわかった.アモルファスな物体というのは通常「構造が完全にランダムな固体」と考えられていたため,「2つの構造の異なるアモルファスな状態」が存在する(しかも,それらは熱力学的に異なる相で,間に相転移がある)という事実は驚きをもって迎えられた.

さて,アモルファスな固体というのは,一般には「液体を急冷することにより,その構造を保ったまま凍り付いた固体」と認識される(絶対そうだというわけではないが……).アモルファスな氷の構造が2種類あるということは,液体の水も2種類の構造があるのではないだろうか?(**)

**この観点からも多くの研究が行われており,現在の「液体の水」の理解としては
・一分子当たり4つぐらいの水素結合を作っている「氷に似た構造の低密度の水」と,3つぐらいの水素結合を作っている「高密度の水」がミクロに入り乱れたモザイク構造.
・230 K付近に第二臨界点があり,これより高い温度では低密度水と高密度水は連続的に変化できる.
・高温になるほど,高密度水の領域が増大する.
・塩類を溶かすと,その周囲は「高密度の水」に寄っており,均一な溶液に見えて実は「塩を溶かした高密度の水」と「塩があまり溶けていない低密度の水」の混合物となる.
・塩類の溶液を冷却すると,「塩があまり溶けていない低密度の水」の部分で結晶核が生成し,それが成長し氷となる.
と考えられている.ただし後述の通り実験的検証は難しく,異論もある.

アモルファス物質の特徴として,温度を上げていくとどこかでガラス転移を示し,液体になるはずである.であるならば,LDAを加熱していくとどこかで低密度な液体の水になり,HDAを加熱していくとどこかで高密度な液体の水になるのではないだろうか?
そう考え多くの実験が行われたのだが,残念ながらそれらは失敗に終わってしまっている.低温のLDAやHDAを加熱していくと,ガラス転移(液化)が起こるよりも前(=より低温)に結晶化転移が起こり,結晶質の単なる氷へと転移してしまうため「LDAやHDAが融解した過冷却液体状態」にアクセスできない.一方高温側から過冷却液体を慎重に冷却していっても,自然核発生温度(自発的に液体中に結晶核が生じ,急激に結晶化してしまう温度)で急速に結晶化してしまい,より低温(=LDAやHDAになる前の液体状態)にたどり着くことは基本的に不可能である.この「高温側からも低温側からも接近できない,(過冷却)液体の水の温度領域」はNo man's land(未踏領域)と呼ばれ,水の構造研究を難しくする最大の要因となっている.

そんなわけで「水は実は2種類の液体の混合物で,それらの間の相転移が(第二臨界点以下の低温では)存在する」というのは非常に面白い仮説なのだが,実験的な検証が困難である.これをなんとか乗り越えるため,実験家は
・ナノ細孔に閉じ込め結晶化を阻害(ただし,そもそもの液体の状態が変わるため微妙)
・常温の液体中の分子の状態を分光学的に調べ,2種類ある事を示す(ただし,それらが相分離しているかは謎)
・臨界点そのものには辿り着けなくても,そこに近づく過程の振る舞いの変化を理論と照合(決定打に欠ける)
・シミュレーションにより解決(計算量は多いが,最近だと結構頼りになる)
など,さまざまな工夫を行っている.今回紹介する論文の手法は,「いっそ,単なる水以外の系で同種の振る舞いを探す」というものになる.
そもそもの液液相転移や水のもつ2液ある事に由来する異常な物性も,水の専売特許というわけではないはずだ.適切な物質を持ってくれば,同種の現象は起こるはずである.そういった系の中で,(水では結晶化してしまうため到達しにくい)第二臨界点近傍が測定できる系もあるのではないだろうか?近年では,そういう研究も数多く行われている.
そのような観点から今回著者らがたどり着いたのが,「水に14.4 mol%ほどトリフルオロ酢酸ヒドラジニウムを加えた水溶液」である.トリフルオロ酢酸イオンは酢酸イオンの水素原子を全てフッ素で置換したような系で,CF3-C(=O)Oという構造をもつ.二つの酸素原子上の5つの非共有電子対を使って,水との水素結合を多数作る事が出来るし,フッ素原子もまあある程度は水素結合を作る事が可能である.対イオンのヒドラジニウムはH2N-N+H3という構造を持ち,5つの水素原子を使って周囲の水分子と水素結合を作る事が出来る,構造的には水分子が二つ結合したものに非常に近い構造を持っている.要するに,カチオン,アニオンともに水素結合を作りやすく,水の水素結合ネットワークをあまり破壊しない(=水の構造を良く保つ)という特徴を持ちつつ,余計なものを溶かすことで結晶化を阻害して低温まで過冷却液体状態を保とう,という戦略だ.

では著者らの実験結果を見ていこう.まず載っているのが,比熱のデータだ.通常の過冷却水を冷却していくと,-50 ℃付近(=第二臨界点と目されている温度)に向け比熱が発散していくような傾向が見られる(そして臨界点に到達する前に結晶化してしまう).それに対し14.4 mol%の溶質を溶かした今回の件では,20 K/minという比較的速い速度で冷却していくと,もう少し低温の-80 ℃(約190 K)付近に向け発散するような鋭いピーク=転移を示したあと,より低温まで液体状態を保っている.これは今回作製した溶液が明確な液液相転移を示している一つの証拠である.不純物を入れつつも出来るだけ水素結合のネットワークを壊さない,という設計により,(推定上の)水の液液転移を測定可能なところに引きずり出したと見なすことが出来る.一方,同程度の濃度の単なる塩であるLiClを入れて水の水素結合を壊してしまうと,今回見られたような液液相転移は確認されず,単にもっと低温で結晶化するだけであった.

続いて,分光学的手段による調査として,赤外吸収によりO-H(とN-H)伸縮振動を調べ,水素結合の情報を得ている.室温付近では3420 cm-1付近のそこそこ強くて非常にブロードなピークと,それよりかなり弱くこちらもブロードな3300 cm-1付近のピークが確認できている.前者はO-H伸縮によるものであり,後者はN-H伸縮によるものなのだが,前者の値や線幅は純粋な水の場合とほとんど変わらず,溶質としてそこそこの量のトリフルオロ酢酸ヒドラジニウムを入れているにもかかわらず,水分子の水素結合の状態がほとんど変わっていない事を示唆している.
7 K/minの速度で温度を下げていくと,3420 cm-1付近のO-H伸縮は低波数側に徐々にシフトしていくのだが,190 Kあたり(=比熱で液液転移が見られた温度)を境に急激な変化を見せ,3420 cm-1付近のピークは消え代わりに3300 cm-1付近にピークが現れ,温度の低下とともに成長していく.これは190 Kの液液転移により水素結合の様式ががらりと変わったことを意味している.続いて7 K/minで加熱していくと,やや上の温度である204 Kあたりでもとの波数へとまた急激に変化する.冷却時と加熱時で転移温度に差がある(=ヒステリシスを示す)ことから,この液液相転移は一次転移である事が示唆される.ちなみに,もう少し温度を上げていくと210~220 Kあたりで結晶化して氷となる.
190 Kで見られた液液転移が,ガラス転移(見た目液体だが,実際には運動が凍結してガラス状態になっている)ではないことがこのO-Hの振動数からわかる.ガラス転移は単なる凍結なので,振動数が劇的に変化することはないためだ.また,高温側で3420 cm-1のブロードな吸収,低温側で3300 cm-1のややシャープな吸収という今回観測されたO-H伸縮の振動数は,純水における高密度アモルファス相におけるO-H伸縮が3340 cm-1でブロード(ただし,測定温度が11 Kなのでそこそこ低波数シフトしている可能性あり),純水における低密度アモルファス相におけるO-H伸縮が3300 cm-1でややシャープ(同80 K),という事と良い一致を示しており,今回作製された溶液での転移が,純水において推定されていた液液相転移と起源を同じにしていることを示唆している.

なぜ今回の系では,これだけ水に似た特性を再現できたのだろうか?著者らは分子動力学計算からその理由も探っている.計算が示すところによれば,水の第一配位圏(水分子と,それに隣接する分子の位置関係)の構造は,純粋な水と今回の溶液とでほとんど変化がなかった.そればかりか第二配位圏まで広げて考えても,常圧の水とはやや異なるものの,約6000気圧というほどほどの圧力を印加した際の水の第二配位圏と非常に酷似しており,「溶質が溶けて結晶化を阻害してはいるけど,ヒドラジニウムイオンもトリフルオロ酢酸イオンも周囲の水分子とよく水素結合を作って,周りの構造を阻害していない(=元々の水に近い構造を保っている)」事を示唆している.結晶化を阻害することにより低温での液体状態を実現しつつも,元々の水の示す(と推測される)特異な液液相転移の特性は良く維持しているわけだ.

というわけで,観測不可能であると考えられている水の液液相転移を,(ちょっと系が変わるとはいえ)実測できるところまで引きずり出して見せた面白い研究であった.

13541548 journal
日記

phasonの日記: 化学的論理ゲートによるゲル分解を利用した特定条件下での薬剤放出 2

日記 by phason

"Engineered modular biomaterial logic gates for environmentally triggered therapeutic delivery"
B. A. Badeau et al., Nature Chem., 10, 251-258 (2018).

薬剤を特定の組織のみに届けるドラッグデリバリーは,副作用が少なく効率的な治療を実現できることから,近年盛んに研究がなされている分野だ.そういったドラッグデリバリーを実現する手法の一つに,薬剤等をカプセルに入れ,そのカプセルが特定の条件下で分解されるようにする,というものがある.
さまざまな疾患において,患部の組織では通常とは異なる条件が実現している事が知られている.例えば癌細胞では細胞外マトリクスを分解するタンパク質であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が多く発現し他の組織に浸潤しやすくなっていたり,pHが正常な組織に比べてやや低かったり,還元性の条件になっていたりする.こういった条件下で分解されやすいカプセルを作って中に抗癌剤を入れておけば,癌細胞にたどり着いたカプセルがそこで分解,中の薬剤がピンポイントに放出され効果を発揮する,というわけだ.
ところが,これらの「通常とは異なる条件」は癌細胞だけで実現しているわけではない.例えばMMPは骨の形成や血管の新生(これらはいずれも,既存の構造を部分的に分解する必要がある)などでも発現しているため,単純にMMPだけをターゲットとすると思わぬ副作用を引き起こす可能性がある.より正確なドラッグデリバリーを実現するには,もっと複雑な条件判定を行うことが必要となるわけだ.

今回著者らが報告しているのは,分子を使った論理ゲート的な構造により,複数の条件が満たされたときのみ分解するようなゲルの開発だ.
著者らが利用したのは以下の3つの反応である.1つ目はジスルフィド結合(R-S-S-R')であり,TCEPなどの還元剤により二つのチオールとして切断される(R-S-S-R' → R-SH + HS-R').還元(Reduction)で切れるので,これをRで表す.2つ目はアミノ酸配列による結合(R-G-P-Q-G-I-W-G-Q-R')で,酵素であるMMPにより切断される(R-G-P-Q-G-I-W-G-Q-R' → R-G-P-Q-G + I-W-G-Q-R').酵素(Enzyme)で切れるので,これをEで表そう.3つめはo-ニトロベンジルエステルのエステル結合が光開裂することを用いたものになる.光(Photon)で切れるので,これをPで表す.これら3つの構造を組み合わせることにより,3つの異なる刺激で,3つの異なる部位を切断できるわけだ.
例えば環状の接合部で上側にR,下側にEという異なる刺激で切断できる部位を入れたとしよう.
  ┌R┑
A┥ ├B
  └E┘
Rだけの刺激やEだけの刺激ではリングの片側しか切断できないため,薬剤B(を含む部分)を放出するためにはRとEの2つの刺激がともに必要となるANDゲート(R∧E)を実現できる.同様に,
  ┌R┑
A┿P┿B
  └E┘
という分子にすれば,3入力ANDゲート(R∧P∧E)と見なせる.また当然であるが,
A-R-E-B
という構成にすれば,ORゲート(R∨E)も実現可能である.

というわけで著者らは色々なゲート構造をもつ分子からなるヒドロゲルを作り,末端部分のリリースを設計通りの外部刺激できちんと行えるかをチェックした.その結果,E∨R,E∧R,(E∧P)∨R,R∧(E∨P),E∨R∨P,E∧R∧Pなどのゲートでほぼ予想通りの振る舞い(設定した必要な刺激が全て満たされると放出,一つでも欠けているとあまり出てこない)が確認された.ただまあ程度の問題もあり,あまり複雑なゲートだと足りない刺激でも少し漏れ出てきていたりするのはご愛敬.
続いて著者らは将来的なドラッグデリバリーのモデル実験として,R∧Eゲート末端に抗癌剤であるドキソルビシンを結合し,還元剤と酵素が働いた時だけ抗癌剤が放出されるようなゲルを作製,その上でヒーラー細胞を培養した.還元剤だけや酵素だけを加えた場合は細胞の成長にはあまり影響はなかったが,還元剤と酵素を両方とも加えた場合だけ,ヒーラー細胞が急激に破壊される様子が確認された.
また本手法は,薬剤を届けるだけではなく,生きた細胞をゲルで包み,特定の条件下でだけ内部の細胞が開放される,というような使い方も可能であり.ドラッグデリバリーならぬセルデリバリーといったところか.こちらもモデル実験を行っている.

面白い結果ではあるが,残念ながらまだ「癌細胞の特徴を認識して薬剤を放出」というところまでは行っておらず,そこそこ極端な条件(還元剤を加える,近紫外光を照射,酵素MMP-8を添加)を人為的に行うことで論理ゲートの条件を満たしているわけで,実用化なんてのは相当先ではあろう.ただまあ,複合的な外部刺激を認識し特定の応答を返すスマートマテリアル,という意味では既に実現できているわけで,このまま進歩していけば結構面白そうではある.

13521111 journal
日記

phasonの日記: 磁場のアレ 1

日記 by phason

専門分野に近いにもかかわらず乗り遅れた&長いのでこっちに.

物性研究では,さまざまな極限状態の追求が良く行われる.例えば超高圧,超低温,超高温,超強磁場,超強電場などが代表例であるが,なぜ物性研究者がこういった極限状況を追求するのかと言えば,それは特殊な環境下では特殊な現象,もっとぶっちゃけてしまえば新発見が隠れていることが多々あるからだ(過去にも,極低温は超伝導や超流動の発見に繋がり,超高圧は金属水素などの特異な状態の発現に繋がると期待されている).

そんな極限状態の一つ超強磁場であるが,これまた実現にはさまざまな困難が伴う.磁場研究の初期には通常の電磁石が用いられたが,これで超強磁場を実現しようとすると消費電力の爆発的な増大とどうしようもないほどの発熱が問題として立ちふさがった.通常,電磁石による磁場の強さはまあせいぜい数 T(テスラ)あたりが限界となってくる.まあ,ものすごい量の水でガンガン冷却することで30 Tぐらいまで出来なくはないが,その場合は設備が非常に大がかりになる.

次に現れたのは超伝導マグネットだ.超伝導の利用によりジュール熱による発熱は抑制され,利用できる磁場強度は格段に増大した.市販されているマグネットでも15~20 T程度は発生させられる.しかしながら超伝導体には臨界電流・臨界磁場が存在し,あまりにも大電流を流すと超伝導状態が破壊されてしまい,30 Tを超えるような超伝導マグネットの開発は難しい.

次に現れたのは,超伝導コイルの内側,最も磁場の強くなる部分に常伝導体のコイルを追加したハイブリッドマグネットだ.こちらは超伝導磁石による磁場を常伝導の電磁石でさらにブーストするようなもので,40 Tを超えるようなものが実現されている.

とまあ増強の一途を辿ってきた磁場なのだが,これ以上のレベルになってくると磁場によるマグネット自体の破壊が問題となってくる.マクスウェル方程式から出るように,電場や磁場は反発するような力が働く.磁力線同士が反発する,というようなイメージをしていただけると比較的わかりやすいだろう.このため,凄まじく強力な磁力を発生させているコイルは,その磁力線同士の反発で外向きに広がろうとする力が働くこととなり,結果として超高磁場を発生させているコイル自身が圧力に耐えきれずに破断,四方に吹き飛ぶこととなる.

こういった問題を解決できるのが,パルス磁場による超高磁場発生である.磁場の反発でコイルが爆散するには(短いとは言え)時間がかかる.それより短い時間で超高磁場がかけられるなら問題無い,という感じだ.しかも磁場が生じる時間をほんの一瞬に限定することで,トータルでの消費電力や発熱の影響を減らすこともできる.
特に超高磁場の発生でよく用いられているのが,磁場を発生させているコイル自身を何らかの方法で圧縮する,という方法である.コイルを瞬間的に圧縮すると,内部に発生している磁力線の本数はそのままに,コイルの断面積が一気に収縮する.すると非常に狭い面積に膨大な量の磁力線が圧縮され,磁場の強さとして考えると驚異的な値を叩き出すことが出来る.これにより,数百 Tという桁違いに強い磁場を発生させることが可能となった.
※ただし,一瞬で磁場が急変化するのでそれによるサンプルの変化や加熱があったりそれによる温度変化の見積もりが困難であるとか,一瞬なので時間がかかる相転移は見えないとか,マイクロ秒の現象なので観測が難しいとか,全体的に定常磁場に比べると実験やその解釈の難易度が格段に跳ね上がる.

この圧縮を利用した手法には,何を使って圧縮するのかによっていくつかの手法が存在する.例えば爆薬の爆発力でコイルを(文字通り)爆縮させる手法であるとか(ただし,通常の実験室では当然出来ないし,危険度も高い),核融合研究で培われたレーザー圧縮のような手法であるとか,まあいろいろだ.今回の論文はこの圧縮を利用したもののうち,電磁気力を使った電磁濃縮という手法となる.
この手法の概略は以下の通りだ.装置の構造が今回のプレスリリース図3にあるので,そちらも参照していただきたい.
まず,大電流を流す一巻きコイル(といっても,一般の人が想像する「コイル」とは違い,金属板を折り曲げたものに近い)と,その内側に銅製の円筒型のリング(ライナー)が存在する.そしてさらに外側に,種磁場をあらかじめ発生させておくための電磁石が存在する.これが電磁濃縮法の基本構造である.
まず最初に,一番外側にある電磁石に通電し,弱い磁場(数 T程度)を発生させておく.続いて,キャパシタに蓄えておいた電力(数メガワットぐらい)を一瞬で一巻きコイルに流し,その超大電流(数メガアンペアとか)によりコイル内に強烈な磁場を発生させる.すると,急激な磁場変化により内側のライナーに電流が誘起されることとなる.「自然は変化を嫌う」という名言があるように,ライナーにこのとき生じる円電流は磁場変化を打ち消す向き,つまり外側のコイルとは逆向きになる.抵抗ゼロの理想的な状況であればこの誘導電流は外側のコイルが作る磁場を完全に打ち消すことが可能で,ライナー内の磁場は最初の種磁場の強さのままとなる.
※実際には抵抗等があるので打ち消しは完全ではなく,種磁場にプラスして打ち消しきれなかった磁場が残る.

この時点では,外側の一巻きコイル内には膨大な電流により強い磁場が誘起され,さらに内側のライナー内は誘導電流による打ち消し効果により(それと比較して)非常に弱い磁場のみが存在する状況となっている.さて,上の方で述べたとおり,磁力線同士には反発するような圧力が発生している.という事は,強力な磁場が存在する一巻きコイル内は磁力線同士の反発により非常に強力な圧力がかかっているのと同じ状況であり,一方さらに内側のライナー内は弱い磁場しかないので圧力が低い.この「磁力線の圧力の不均衡」により,ライナーは急激に圧力の弱い内側へと爆縮する(一方の外側の一巻きコイルは,猛烈な力で外側に膨張しようとし,強度が低い場合は爆散する).
ライナー内にはもともと種磁場が存在していたわけだが,ライナーを通り抜けることの出来ない種磁場の磁束はライナーの爆縮に伴い強烈に圧縮されながら一緒に縮むこととなる.この結果磁束密度(磁場の強さ)はライナーの圧縮とともに急激に増大し,爆縮するライナーの中心部で非常に強い磁場が(爆縮でライナーが潰れるまでの一瞬だけ)得られる,というわけだ.

とまあこれが電磁濃縮法の基本なわけで,これ自体は今回の論文も以前の報告と変わっていない.
磁場の測定は以前はピックアップコイル(サンプルスペースに小さなコイルを導入し,そこに誘導される電流かを外部に引き出し磁場を測定する)を用いていたのだが,圧壊以前にその挙動がやや怪しくなっていた.つまり,完全に潰れる前に,既に誘導電流などにより絶縁破壊や衝撃波の影響を受け,磁場を正しく見積もれなくなっていたわけだ.そこで今回は磁場の測定にファラデー回転を使用している.ファラデー回転は,物体の屈折率(=電子励起に由来する効果)がスピン軌道相互作用を介して磁場の強さに影響を受ける事に由来し,右円偏光と左円偏光とで異なる屈折率になる効果だ(これにより,偏光面が回転する).この効果はかなり高磁場まで磁場に比例することがわかっており,偏光面の回転具合から磁場強度を見積もれる.ただまあこの測定手法自体も既に何十年も前から用いられている方法であり,そこまで新しいというわけではない.
というわけで,今回の論文は「スゲェ頑張って最適化して,磁場の記録を更新しました」とかそういう感じだ.

最適化の内容としては,種磁場の強度の最適化が挙げられている.外部コイルによりセットされる種磁場が圧縮れることで超高磁場を作成しているため,同じ圧縮率なら当然ながら種磁場は強ければ強いほどよい.しかし現実には,種磁場が強ければそれだけ内側からライナーにかかる反発力の強くなる.そのためあまり種磁場を強くしてしまうと,ライナーが十分内向きの加速度を得る前に内側の反発が強くなりすぎてしまい,十分な圧縮を得られない,というわけだ.
そこで今回,有限要素法によるシミュレーションと組み合わせ,種磁場をちょっと弱めにすることで最初のうちの内側からの反発を弱め,稼いだ時間の間に十分圧縮できるだけの初速をライナーが獲得,その重いライナーが収縮しようとする慣性でもって今までより一段高い磁場を実現できた,という感じである.

13512028 journal
日記

phasonの日記: 微粒子の光トラップを利用した"リアル3D"ディスプレイ 5

日記 by phason

"A photophoretic-trap volumetric display"
D. E. Smalley et al., Nature, 553, 486-490 (2018).

立体映像を表示できるディスプレイはいくつか開発されており,その中でもホログラムや,レンチキュラーまたはパララックスバリアを使ったものはお馴染みだろう.しかしこれらの3Dディスプレイは,「ディスプレイの枠内に映る範囲でしか3Dにできない」という欠点がある.要するに,「自分の目とディスプレイを結んだ範囲内でのみ,映像が見える」という事だ.
例えば,自分の前方1 mのところにディスプレイが置いてあり,そこから50 cm手前に映像を浮かばせることはできる.ところがこの「飛び出た物体」を斜め横方向から見ようとすると,視点と物体を結ぶ直線がディスプレイの枠外に出た部分は消失してしまう.これはまあ,ディスプレイから出た光で無理矢理三次元的な物体を再現しているので仕方のないことではある.

さて近年,こういった3D映像の限界を突破しようと,「立体ディスプレイ」(volumetric display)というものが研究されている.これはどういったものかというと要するに,「2Dのディスプレイで3Dを表示しようとするから無理があるのであって,ディスプレイも3Dにしてしまえば全部解決!」という,まあ,何というか,そういうものだ.例えば,平面状に並んだLEDの二次元平面があったとしよう.こいつを中心軸周りにぐるぐる回転させれば,円筒形の三次元空間内の任意の位置を光らせる事が可能であり,リアルに3Dの映像を再生できる.
こういった手法による3D映像も(ある意味驚くべきことに)実際にあるにはあるのだが,やはりでかい板を毎秒何十回転で回転させるのは危なくて仕方がない.そこで,より効率的に三次元空間の任意の位置を発光させられるディスプレイが色々開発されている.
今回報告されたのは,発光体として「光トラップに捕捉されたミクロンサイズの微粒子を使う」というものとなる.

では装置の概要を見ていこう.
発想は非常に単純である.10 μm程度の不透明な(濁った?)樹脂製のビーズを用意し,こいつをギリギリ見えない程度の波長(405 nm)のレーザーにより空間中にトラップする.こういった光トラップの技術は最近だいぶ進んでおり,粒子の屈折の反動(光を曲げると言うことは,その反動が粒子にかかる)を使ったり,熱効果(周囲の気体が光で加熱され,その熱勾配により分子運動から特定方向に力を受ける)を利用する事で,微粒子を空間中にトラップすることが可能となっている.特に最近はLCOS-SLM(Liquid Crystal On Silicon-spatial light modulator,光の位相などを自在に変形させる空間光位相変調器として使える素子)を使って光の形状を非常によくコントロールできるので,こういった光トラップはだいぶ容易になっている.
閑話休題.とにかく,微粒子を光で空間中にトラップできるわけだ.で,微粒子のトラップ位置はLCOS-SLMやレンズをちょっと動かすだけで任意に動かす事が出来る.つまり,(ある程度の範囲内の)三次元空間内で自在に動くミクロンサイズの微粒子が作れる,と思っていただければ良い.
で,今回の著者らがやったのは,「この微粒子を光の散乱体として使い,RGB各色の光源からの光を適宜照射すると,三次元中の任意の位置で,任意の色の光を散乱させられる」というもの.要するに,昔ながらのブラウン管テレビの三次元版と似たようなものだ.

実際に立体映像を映すスキームは以下のようになる.3D映像としたい物体の外形などをデータ化し,その外形をなぞるように微粒子を動かす.そして微粒子の位置に合わせ,再生したい3D映像のその点での色に合った光を照射すると,その光が散乱され,空間中のその位置がその色で光っているように見える.これを映像の外形に合わせ高速でスキャンすればリアル3Dの映像のできあがり,である.この映像は当然ながらあらゆる方向(ただし,トラップに使っているレーザーが抜けていく1方向を除く)から自由に眺めることができる.

でまあこんなもんが実用的な速度でスキャンできるのか?という点であるが,とりあえず著者らが試作したデバイスでは以下のようなスペックらしい.

微粒子の空間中での走査速度:現状で最大1.8 m/sぐらい
フレームレート:12.8 fpsぐらい(1307点からなる立体映像で)
微粒子の加速度:現状で最大5.67Gぐらい
最長表示時間(粒子がトラップから抜けてしまうまでの時間):最長で17.2時間
解像度:最大で1600 dpiぐらい
最大描画サイズ:100 cm3以上

うん,まあ,発想は面白いが,どうかなあ……

13489238 journal
日記

phasonの日記: 霞を食って生きる南極の微生物 1

日記 by phason

"Atmospheric trace gases support primary production in Antarctic desert surface soil"
M. Ji et al., Nature, 552, 400-403 (2017).

南極大陸は生物が生きるうえで非常に過酷な環境である.極端な低温,乾燥してほとんど降水の無い気候,枯れ果てた土壌,長期間の日の差さぬ夜と昼でも弱い日光,にもかかわらず夏の間は強い紫外線(雪による反射や上空オゾンが少ないことに由来)などにより,かつては南極の陸上の生物相は非常に貧弱なものだと考えられていた.
ところが近年になり南極での実地調査が進むと,南極大陸上にも非常に豊かな細菌叢などが発見されたのだ.ただ問題は,それらの細菌が何をエネルギー源として生きているのか,である.南極では地衣類なども発見されており,こちらは少ない栄養素と乏しい太陽光を使って光合成をしていると言うことで問題無いのだが,南極の,特に乾燥地で見つかった細菌叢の多くにはシアノバクテリアなどの光合成細菌がほとんど含まれておらず,彼らが「何を食べて」生きているのか,不明であった.もちろん厳しい気候条件のもと,大部分の時間は休眠状態で存在しているとは考えられているのだが,計算上,休眠状態(これは,必ずしもエネルギー消費ゼロではない)を支えるのに十分なエネルギーをどこから生み出しているのかが謎となっていたのだ.

今回の論文の著者らは,そういった細菌叢がどうやって生きているのかを調べるために南極大陸の「砂漠」(氷などが無く,礫が散らばっている乾燥地)のうちの二箇所(Robinson RidgeおよびAdams Flat,いずれも南極大陸の東岸付近で互いに千数百 km程度離れる)でサンプルを採取,調査を行った.
得られた試料(土壌サンプル)からDNAを抽出,個々の細菌類を分別せず,全てをまとめて解析している(メタゲノム解析.ヘタに培養してしまうと培養しやすい極一部の生物種のみを調べることになるため,こういった研究では有効な手法として知られる).読み取りは典型的なショットガンシーケンス(DNAをさまざまな断片にして複製,片っ端から読んで計算機で力任せにつなぎ合わせる)である.
また,土壌の化学分析も行い,どういった化学種がどの程度含まれているのかも調査している.

まず確認できたのは,予想通り土壌が非常に枯れている,という事である.例えば有機炭素は,我々の身近な土壌のように多量の植物が育つ地域では数~数十%含まれているわけだが,南極で採取された土壌ではこれがわずか0.2%前後しかなく,窒素も0.02%前後,水分も5%前後しか含まれていない.また過去に知られていた通り,これらの場所ではシアノバクテリアなどの光合成可能な細菌が非常に少なく,その存在比はわずか0.28%程度であった.また通常の環境中に住んでいることからもわかるとおり,検出された23のシーケンスの全てが末端酸化酵素(酸素を取り込み水にする,要するに好気呼吸に関連する酵素)を持っていた.
面白いのはここからだ.調べたところ,光合成などでの二酸化炭素の固定に関与するカルビン回路に関連した遺伝子が広く見つかったのだ.これらの遺伝子から生成される酵素は,通常は光によって作られた高エネルギー化学種を燃料とし,大気中の二酸化炭素から炭素を取りだし固定する反応を触媒している.つまり今回のサンプル中の微生物も,何らかのエネルギー源を利用して大気中から二酸化炭素を取りだし,それを栄養源にしていると考えられる.しかしながら,光合成の初期段階,つまり光を吸収する葉緑素部分に相当する遺伝子は見つからなかったため,そのエネルギー源は光以外であると考えられる.
では,何をエネルギー源としているのだろうか?ゲノム解析からは,水素および一酸化炭素の取り込みや酸化に関連する酵素の遺伝子が検出された.これらの化学種は大気中には非常に微量しか含まれてはいないが,ゼロではない.南極で発見された細菌類は,大気中のごく微量の水素ガスや一酸化炭素をかき集めて酸化し,その際に生まれる微量のエネルギーを使って二酸化炭素の固定を行い,生きていくための有機物を生成しているのではないだろうか?

著者らはこの仮説を補強するために,実験を行った.まず,本当に水素を取り込めるのか確かめるために採取した土壌を密閉容器に入れ,水素100ppm(vol)を含む大気に晒し,10 ℃に保った状態での水素濃度の時間変化を追った.すると,Robinson RidgeおよびAdams Flatのいずれの土壌を用いた場合でも,数日かけて水素濃度が減少していくこと,一方それらの土壌を加熱して細菌類を殺したものや,土壌を全く加えなかった場合には水素濃度は変化せず一定であったこと(つまり,装置からの漏れや土壌中の無機成分への吸着ではないこと)が確認された.(同様の実験は一酸化炭素でも行われ,細菌が一酸化炭素を吸収していることも示されている)
また,同様の実験を微量の二酸化炭素を含む大気で行い,どの程度の二酸化炭素が固定されるのかも検証した.その結果,通常の大気中での二酸化炭素固定量を1とすると,さらに水素を添加した場合に固定量は2倍程度に増えることが観測された.つまり,この土壌に棲む細菌は水素があるとより一層二酸化炭素を取り込んで固定することができる,という事を示唆している.一方,光合成的な経路があるのかどうかを確かめるために光の有無での違いを見ても,特に顕著な差は存在しなかった.このことから,光合成を行っているわけではないと示唆される.
しかし,大気中の微量な水素や一酸化炭素程度で生きていくだけのエネルギーは作れるのだろうか?著者らは一応このあたりも概算を行い,10 ℃の温度での既知データに基づくと,土壌1 gあたり5×107個以上の細菌が休眠状態で生きていくだけのエネルギーが産出可能だ,と結論づけている.もちろん実際の南極はもっと温度が低いために生み出せるエネルギーは下がるのだろうが,それでもそこそこの数の細菌が生きていける可能性はある.

という事で著者らの結論は,「南極の礫地帯に住む細菌は,大気中のごく微量の水素や一酸化炭素をエネルギー源とし,それを使って大気中の二酸化炭素の還元を行うことで有機物を生成して生きている」という事になる.
(もちろん,炭素以外の微量元素や水などは周囲から取り込む必要がある)
毎度の事ながら,極限状態であってもギリギリ生きていく細菌類の能力はなかなか大したものである.

13473129 journal
日記

phasonの日記: 人工塩基を組み込んだDNAからの異種タンパク質の翻訳 1

日記 by phason

"A semi-synthetic ortanism that stores and retrieves increased genetic information"
Y. Zhang et al., Nature, 551, 644-647 (2017).

※今回のこの話はかなり分野外なので,正直しっかりと読み切れていない部分がある.そのため概要のみを記すが,それでも間違いが混入している可能性を否定できない.

DNAは4種類の文字(=塩基.A,G,C,T)で書かれた長大な情報ストレージである.ここからタンパク質がデコードされる際には,DNAの情報の一部がmRNAに転写され,mRNAの3文字を一区切り(コドン)とし,それに対応するアミノ酸が選択され繋げられていくことで一意なアミノ酸の配列=特定のタンパク質が合成される.
このタンパク質合成においては,tRNAと呼ばれる分子が重要な働きをしている.このtRNAは,片側には特定のコドン(=mRNAの3文字)と結合する相補的な塩基配列を持ち,反対側にはそのコドンに対応するアミノ酸が結合している.タンパク質を合成するリボソームにおいては,鋳型のmRNAのコドンにぴったり合うtRNAがやってきて,そいつが連れてきた対応するアミノ酸を繋げていくことで決められたアミノ酸配列からなるタンパク質が合成されているわけだ.
4文字の塩基(※RNAの場合には,DNAにおけるT(チミン)の代わりにU(ウラシル)が用いられる)が3つ並んで1つのアミノ酸に対応すると言うことは,どう頑張っても43=64種類のアミノ酸しか指し示すことができないのは自明だろう.しかも自然界では,冗長性を持たせることで一塩基変異に対抗するため,複数のコドンが同一のアミノ酸を指し示すように進化してきており,さらに転写の開始位置や終了位置を指し示すコドンも必要であるため,実際に利用する事の出来るアミノ酸は原則として20種類ほどとなる.

さて,タンパク質というのは非常に高性能な分子機械として働くものであり,現在の化学工業を大きく超えるような触媒活性やセンサー機能,高度な複合機能などを実現することができている.既存のタンパク質中の一部のアミノ酸を任意のアミノ酸に変更したりすれば,最終的に生成するタンパク質の構造や機能を自在に操れるわけで,その将来的な応用性はとんでもなく大きいと言える.
ところが,DNAからの翻訳で20種類のアミノ酸しか使えないと言うことは,タンパク質中に組み込めるアミノ酸の種類がこの20種類に限定される,という事を意味している(*).もっと自由に,さまざまなアミノ酸を組み込んだタンパク質の合成に生物を利用する事は出来ないのだろうか?

(*)実際には,本来なら複数のコドンが重複して指し示しているアミノ酸を別々のものを意味するように手を加えるなどでもう少し種類は増やせるのだが,それはここでは置いておく.

そんな夢を叶える一つの方法が,DNAの拡張である.もしDNA(とRNA)が4種類の塩基ではなく6種類の塩基,つまりA,G,C,Tに加え人工塩基対のX,Yを合わせて作られていれば,そこから作られるコドンの種類は一気に63=216種類に激増する.増えた「自然界に存在しないコドン」(例えばAGXだのTTYだの,さまざまな組み合わせがある)を既存の20種以外の異種アミノ酸に対応させれば,どんなアミノ酸でも組み込み放題で全く新しいタンパク質を容易に生産できるようになるはずだ.

今回の論文の著者であるRomesbergらのグループは,そんな「人工塩基対」の研究を長く続けている代表的なグループである.彼らはこれまでに,自然界の塩基対が使っている水素結合ではなく,疎水的な相互作用により結合する人工塩基対を開発,それを生物中に組み込んだり,その状態での複製を行わせたり(※人工塩基対を複製する際に必要となる異種塩基を培地中に加えることで取り込ませ,それを利用して複製させている),といった事を実現してきている.そんな彼らが今回実現したのは,「大腸菌中に人工塩基対を含むプラスミド(大腸菌本体のDNAとは別個に,少量の情報を保存できる環状DNA)を組み込み,そこに記された非天然型コドンに対応するアミノ酸が組み込まれた異種タンパク質を翻訳により生産させることに成功した」というものである.

彼らがプラスミドに組み込んだのは,緑色蛍光タンパク質をエンコードしているDNAの一部を人工塩基対に置き換えた配列となる(151番目をAXCやGXCに変更).さらに,これら非自然型のコドンを特定のアミノ酸に対応させるための非自然型tRNAもコードし,これら非自然型のtRNAに特定のアミノ酸を結合させるためのaaRS(アミノアシルtRNA合成酵素)も組み込む(多分).
この大腸菌を,非自然型のDNA(XとY)のもととなる塩基を含む培地中で培養すると,培地中の成分を使って非自然型のDNAを複製,XとYを含んだプラスミドをもつ大腸菌が増殖する.これはまあ,以前の研究でも実現されていたことだが,組み込んだ非自然型DNAが成長に害を及ぼしていないことが確認できたわけだ.
そこでいよいよ組み込んだ部分の発現である.組み込んだプラスミドは,anhydrotetracyclineの存在により発現する(というか,そうなるようなプロモーターが上流に仕込んである).そこでanhydrotetracyclineを加えてやると,プラスミドの該当部分がmRNAに複写され,人工塩基対を含んだ非自然型のmRNAが生み出される.このmRNA中の非自然型のコドン(AXCとかGXCとか)は対応するtRNAが自然界に存在しないため,一緒に組み込んである非自然型のtRNAのみが特異的に結合し,そいつが運んでいる特定のアミノ酸を特定部位に組み込むこととなる.要するに,設計図(DNA)の一部の文字を本来なら対応するものの無い文字に書き換えてしまい,その「変な文字」に対応する「変なパーツ」が同時に作られるようにしておけば,一部がその「変なパーツ」で置き換えられたタンパク質が合成される,というわけだ.
で,やってみたところ,実際に特定部位(緑色蛍光タンパク質の151番目のアミノ酸)がセリンに置き換わったタンパク質が合成されていることが確認できた.

とは言え,セリンはもともとの20種類の通常のアミノ酸の一種である.そこで著者らはさらに,このコドンに対応するtRNA(というか,それにアミノ酸を結合させるタンパク質)を変えることで,普通の20種類のアミノ酸ではないピロリシンがこの部位に組み込まれるよう仕組んだ(原料となるピロリシンは培地に組み込み?).その結果,出来上がった緑色蛍光タンパク質はその151番目のアミノ酸として通常の20種類とは異なるピロリシンを含んだかたちで生産されていることが確認できた.ただし,ピロリシンに関してはこれを用いている生物が古細菌などに存在するため,人工的なアミノ酸というわけではない(ピロリシンを含むタンパク質は,自然界にも存在している)
もちろん,これらの結果が培地に変なものを組み込んだせいでない事を確認するために,tRNAにピロリシンを組み込むタンパク質(PylRS)がいない状態で同じ事を行い,この場合は緑色蛍光タンパク質がまともに合成されない(何せ,151番目のコドンのところでくっつくアミノ酸が存在しないので,まともにタンパク質の合成が行われない),などを確認している.
さらに著者らはデモンストレーションとして,非天然型の人工のアミノ酸であるp-azido-phenylalanineを用いて同じ事を行っている.このアミノ酸は完全に人工的なアミノ酸であり,通常ではタンパク質に組み込まれることは無い.培地にp-azido-phenylalanineを加え,さらにプラスミド中には人工塩基対を含むコドン(AXC)を組み込み,これに対応するtRNAにp-azido-phenylalanineを結合させるようなtRNA合成酵素を組み込む.すると予想通り,自然界には存在しないp-azido-phenylalanineが,人工塩基対により指示された151番アミノ酸にだけ組み込まれた緑色蛍光タンパク質が合成されたことが確認できた.

というわけで著者らの結果をまとめると,
・人工塩基対を組み込んだプラスミドをもつ大腸菌を作り,
・それを使うことで,人工塩基対を含む非自然型のコドンの場所にだけ特定のアミノ酸を組み込んだタンパク質を発現させることに成功した
という事になる.
これは,タンパク質の任意の箇所にさまざまなアミノ酸を自由に組み込めるようになる,という事を意味しており,将来的にさまざまなタンパク質ベースの物質やら触媒やら分子機械やらの開発の幅が大きく広がることを意味するだろう.
なお,今回含め作成された大腸菌などは人工DNAのもととなる人工塩基対を合成する能力は持っていないので,これら人工塩基対を複製する際には培地に原料が含まれている必要がある.逆に言えば,万一これら人工塩基対をもつ細胞が漏洩したとしても,自然環境中では人工DNA部分は複製できないわけで,ある種の安全装置としても働くと言える.

13443004 journal
日記

phasonの日記: 液体合金を用いた酸化物超薄膜の簡易合成法 3

日記 by phason

"A liquid metal reaction environment for the room-temperature synthesis of atomically thin metal oxide"
A. Zavabeti et al., Science, 358, 332-335 (2017).

原子1~数層という極薄の超薄膜は,ナノデバイス,分子篩,触媒担体,スピントロニクス素子,化学ゲートなど,非常に多くの応用が期待される物質である.これら超薄膜は,グラファイトの劈開によりグラフェンが作れることが示されて以降数々の研究のターゲットとされてきたが,劈開できない物質,つまり二次元的な構造を持たない物質で超薄膜を作成する事は非常に難易度が高かった.例えば粘土の主成分はケイ酸などの層状化合物であり,層間に物質を挿入するなどして容易に単層が剥離するため,超薄膜を得やすい.これに対しアルミナなどは三次元的な強固な構造を持っているため,なかなか層状にすることが難しいわけだ(できなくは無いが,手間がかかる).
今回報告されたのは,室温で液状の合金を用いる事で,一部の金属酸化物の超薄膜が容易かつ多量に作成できる,というものである.

著者らの発想の原点はほぼ室温(約30 ℃)で液化するGa,というか,その合金であり氷点下まで液状を保つガリンスタン(Ga-In-Snの合金)にある.液体Gaは空気中の酸素と迅速に反応して酸化物を作るのだが,これが液体の表面を覆ってしまい酸素を遮断するため,液体Ga表面にだけ極薄の酸化物薄膜が生じる.さてここでGaの重要な特性は,さまざまな金属と容易に合金化し,特にGaの含量が多い時には室温で液体状態を保ったまま合金化する,という点だ.
ここに著者らは注目した.もし,Gaよりも酸化物の標準生成自由エネルギー(*)が小さい金属との合金としておけば,酸素に曝すだけで液滴表面でその酸化物を作りやすい金属が優先的に酸化し超薄膜が得られるに違いない,というわけだ.

*要するに,単体元素からその物質ができた時にどのぐらいエネルギーが変化するか.この値が小さい=負に大きければ大きいほど,その物質が生成するとエネルギーが下がる,つまり生成しやすい事を意味する.

というわけで著者らは,酸化物の標準生成自由エネルギーがGa(Ga2O3)よりも小さいHf(HfO2),Al(Al2O3),Gd(Gd2O3)を用いて実験を行った.なお,一応Gaよりも酸化物が生成しにくい金属であるAg(Ag2O),Cu(Cu2O),そしてガリンスタン中に含まれるSn,Inの影響も調べている.

超薄膜の製法は二つを試している.1つ目は液体合金の液滴を基盤上に一滴置き,酸化した表面の薄膜を別な板に移しとる,という手法.もう一つは試験管の底に穴を開けそこに繋いだ管から空気を吹き込めるようにしておき,試験管下部を液体合金に,その上に水をのせ,下の穴から空気を吹き込む,というもの.こちらは液体合金内に送り込まれた気泡の表面部分で酸化が起こり「酸化物の被膜で覆われた空気の泡」を形成,これが上の水相を出て割れ,酸化物超薄膜が水中にどんどん蓄積していく,という手法だ.前者の方がちまちまとしていて量産は面倒くさい.後者は量産が効く簡便な手法だが,水と反応してしまうAlやGdの超薄膜は作れない,という制限がある.なお,どちらの方法でも,合金化する時の添加量は1 wt%となっている.

そんなわけで実験結果だ.

まず「液体合金の液滴表面で酸化させる」という手法を見ていこう.単にガリンスタン単体で本手法を行うと,ほぼ純粋なGa2O3の超薄膜が得られ,合金中に存在していたInやSnはほとんど検出されなかった.薄膜の厚みは2.78 nm程度と,原子数層分程度の薄さであった.薄膜の広さはあまり記述は無いようだが,図から判断すると数 μm以上,大きければミリメートル単位までいくかも,といったところか.
ガリンスタン中に1 wt%のHfやAl,Gdを混ぜた場合は,著者らの予想通り今度はそれらの金属の酸化物超薄膜が得られ,Ga2O3はほとんど生成していなかった.またこちらも予想通り,酸化Gaよりも生成しにくいCuやAgの薄膜は得られず,またガリンスタン中のInやSnの酸化物薄膜も混在していない.
HfO2の厚みは0.64 nm程度,Al2O3の厚みは1.1 nm程度,Gd2O3の厚みは0.51 nm程度と,酸化物の種類により差はあるもののいずれも原子数層以下程度の超薄膜が得られている.しかもこの超薄膜,ピンホールなどの欠陥が存在していない.それもまあそのはず,超薄膜の成長中にもしどこかに穴があればそこから酸素が侵入し酸化物を生成,すぐに穴が塞がるわけだ.
薄膜の結晶性に関しては,ガリンスタンのみで作成したGa2O3はアモルファスであったが,他のHfO2,Al2O3,Gd2O3は結晶質であった.

続いて液体合金に気泡を吹き込む手法である.前述の通り,水と反応するAlやGdは使用できないので,ガリンスタン単体およびHfの場合のみとなる.なお,著者らは「水の代わりに金属と反応しないような液体を使えば,多分他の金属でもできるんじゃないかな」と述べている.
こちらの手法でも,液滴法と同様にガリンスタン単体ならGa2O3の超薄膜(厚さ5.2 nm)のみが,そしてHfを混ぜるとHfO2の超薄膜(厚さ0.46 nm)が得られている.
では全てが同じかというと,液滴法とは異なる部分も見出された.HfO2は液滴法で作るときれいな結晶化した超薄膜だったが,気泡を吹き込む手法だとアモルファスの超薄膜となっていた.また,ガリンスタン単体で得られる超薄膜は,液滴法だときれいな薄膜だった一方,気泡を吹き込む手法だと内部に無数の金属質のナノ粒子(未反応のGa?)を取り込んでいる様子も見受けられた.これは,気泡を吹き込む手法だと急速に酸化が進み,十分にゆっくりとした結晶成長が起こらないためだと考えられている.

というわけで,
・ちょっと手間だが比較的簡単にμm~mmオーダーの酸化物超薄膜が作れる液滴法
・ものすごく簡便に(アモルファスの)酸化物超薄膜が作れるガス吹き込み法
の報告であった.
こういう,「あまりお金かけずにアイディア一本ですぱっと結果を出す」研究,なかなか示唆に富んでいて好きである.適用できる金属がかなり限定されるとは言え,手法もなかなかに面白い.

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