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kahoの日記: 今度は注射でコレステロールを下げます 2

日記 by kaho

RNAiを使ってマウスのコレステロール値を下げることに成功という話がNature Web NewsやForbesに.

Natureのニュースを読んだらRNAiとは書いてあるが何を対象にしたRNAiなのか分からなくて本文(Soutschek J., et al. Nature, 432. 173 - 177 (2004))を読んでみたのだが(Forbesには書いてあった),ApoBを対象にしているということだ.

このニュースを理解するにはまず前提知識として二つが必要だ.
RNAiとはRNA干渉とも呼ばれて,最近になって分かった遺伝子の発言制御機構で,これを利用することである種のタンパク質の量を低下させることができる.もしある種のタンパク質が過剰なことが原因の病気があれば,RNAiを使うことで病気の治療を行えるかもしれないと期待が持たれている.
今回の研究もFDAに申請して試験を行うということだが,既にこれまでに目の治療など既に2つの薬品が申請されているということだ.

次にApoBというのが何かだが,これはいわゆる悪玉コレステロールの一部となるタンパク質.
これだけ言われているのに一般にあま理解されていないようなのだが,善玉コレステロールも悪玉コレステロールも中に入っているコレステロールは同じで,タンパク質との複合体を形成することで善玉か悪玉かが分けられている.
そして,ApoBはその悪玉コレステロール(学術的にはlow density lipoprotein; LDL)の一部であるタンパク質であり,現在ではコレステロール値よりもApoBを測定する方が健康の指標として優れているとされている.

RNAiを治療に用いる際に問題となるのはRNAが生体内で不安定で,血液中に入っていても細胞の中に入らずに代謝されてしまうということだった.
そこで今回の研究ではRNAを化学修飾することで安定化させたのだが,これがこの研究が分かりにくいところで,対象としてコレステロールを下げさせる治療を選んでいる一方でRNAの安定化のためにRNAに結合させたのもコレステロールだというところ.

このように安定化させたことで通常の注射と同様にマウスに取り込ませることができ,RNAiの効果も持続して実際にLDL値を下げさせることができた,というのがこの研究の骨子だ.

しかし私にとって分からないのはどういう経路でchol-siRNA(コレステロールを結合させたRNA)が細胞に取り込まれているのかという部分だ.
BIACOREまで使って調べた結果だと,chol-siRNAは血中のアルブミンに強く結合するらしく,長時間体内に存在することができるという.
コレステロールが細胞内に取り込まれる経路としてはLDLレセプターを介したものか細胞膜への直接的な侵入かと考えるところだが,前者だと細胞質に入らないし,後者だとこれも膜の中にとどまってしまいそうだ.
しかもLDLの形になるより先にアルブミンに結合してしまったらこれも通常のコレステロールとは異なった代謝経路で分解されてしまいそうだ.
もしLDLレセプターからのとりこみを考えているのだとしたら,LDLを形成するApoBを選んだのはネガティブフィードバックになってしまって悪いターゲットだったようにも思えるし,長期の使用には使えない気がする.

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by y_tambe (8218) on 2004年11月11日 13時49分 (#651046) ホームページ 日記
    確かにApoBをターゲットにした点はトリッキーですね。尤も、その点をカバーするためにChol-conjugatedの対照については、lucやmismatchだけでなく、RNAi効果の弱い配列まで使ってますから、データとしてはそれなりの説得力はありますね。
    #ただ大きなTopicである分、「Natureだからなあ」という点で、今ひとつ「信じきれない部分がある」のも事実だけど ^^

    ちょうど先日invitrogenがsiRNAの売り込みに来たんですが、invitrogenでもtransfection用のsiRNAに修飾を付けて導入効率を上げる製品を出してるようです。ただし、どういう修飾かは例によって企業秘密でしたけど。私はそっち方面には疎いのですが、おそらくベンチャーを中心にしてDNA修飾方法に関して凌ぎを削っているのでしょうね。

    何にせよ、このシステムが本当に効果があるのならば、随分といろんな応用が見込めますね。遺伝子治療についてはトランジェントなノックダウンでよければいいというものに限られるかもしれませんが、少なくともノックアウトマウスを作らずとも簡単に個体レベルでのノックダウンが可能ですし、それに他の動物でのノックダウン系にも道を拓くものになりそうです。
    • これが哺乳類の系に有効かもというのは理解できるのですが,一時的なLDL減少が見られても疾患のリスクを減らせるほどかどうかは分からないというのが問題なのですよね.
      半減期が95minだということは治療に使うとしたら毎日注射(それも50mg/kgの量で)だし,それは慢性高血圧の治療としてどうなのだろう,と思いますし,この意味でもApoBでなくて他のターゲットを使った方が良かったのではないかと思ってしまうところです.ApoBをsilencingしたせいでLDL/HDLの量を量るためにNMRまで使うはめになってるし.

      まあ民間会社がやることなので実際の医療に結びつくターゲットでないと意味がなかったのだろうとは思います.
      純粋な研究手法としてみれば発生過程を観察するためのtemporally conditionalな方法としてすごく面白いし,使いたい人はいるでしょうね.
      --
      kaho
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