kahoの日記: 煙草を吸っても聴覚は大丈夫
喫煙は聴覚障害の原因にならないという話がScience Blogに.
オリジナルはJAMAらしいが購読していないので読んでいない.
喫煙は心疾患の危険因子だが,心疾患と聴覚異常が関連しているということもいわれており,すわ喫煙は聴覚異常の危険因子でもあるのか,とも言われていたが、それを否定する話.
やった実験は単純で血中のコチニンを聴覚異常者と健常者で数百人レベルで比較して相関がないとしたもの.
コチニンというのはニコチンが体内で代謝された物質で,ニコチンに比べて体内での半減期が長く(20時間),尿検査で簡単に検査できる.(たとえばこのキット)
受動喫煙の指標もコチニンの測定値が用いられる.
これに限らないのだけれど(私は吸い殻がなくなればゴミも減るし嫌な臭いもしないから喫煙家の肩を持ちたくないのだけれど),喫煙と健康の関係はひどく誇張されているよな,と思う.しかしそれが高い煙草税を維持するための政治的手法だったりするし,元から科学の話ではないのだろう.
はてなに日記をおこうとして結局面倒でやめたので,そのとき書いたものも載せておくことにしよう.
タバコを吸う料理人は失格者か?
ちょっと前にスノッブな料理人が自分の店を開店するという番組を見て,彼が自分の店の中でタバコを吸っているシーンが映っていた.
「これは料理人として失格ではないのか?」と思ったのだが,実際喫煙が味覚に及ぼす影響について実証的にデータを見たわけではないことも同時に気がついた.
そこで日本語で喫煙とレストランで検索してみたのだが,どうも有益な情報がない.
掲示板のような場所では喫煙者と非喫煙者がののしり合っている始末だ.
非喫煙者の主張は「料理人が味覚を麻痺させていいのか」「タバコの臭いが料理をまずくする」,喫煙者は「有名な料理人も吸っている」「一服したくらいで料理に臭いがつくのか」とどうにも平行線だ.喫煙が味覚に与える影響として最もシンプルに考えられる影響は一酸化炭素(CO)で,一酸化炭素が血液中に多く存在すると感覚が麻痺することはあり得るだろう.ただCOの上昇は一過性だと考えられ,よく言われるニコチンやタールの影響については分からない.
反喫煙サイトではあるがTryToStop.orgによれば20分程度でCOレベルが減少し,味覚と嗅覚が回復する.
また味覚異常が過度の喫煙によって起こることはよく知られており,その点について異論はないし,それほどの喫煙者は体からタバコの臭いがして料理人としては問題外だろう.しかし,たしなむ程度の適度な(という言葉がどうかは分からないが)喫煙ではどうなのだろう.
日本語で調べるとあまり科学的でないサイトばかりになるのでPubMedを見てみる.Ann Univ Mariae Curie Sklodowska [Med]. 2002;57(2):143-54.
では性別によっては有意に異なるが喫煙習慣での甘み,酸味,苦み,塩気を感じる閾値のちがいはわずかしかなかったとのこと.著者らはタバコの有害物質の影響があるはずだと思っていたようだが,個人差の方が大きいという結果になったようだ.というくらいしか見つからなかった.
味覚減退(hypogeusia)のような病気とまで認識されるような状態ならば研究もされようが,一般人の知覚の程度では学術論文にはならないのかもしれない.
smokeとsense of tasteではあまり見つからないのでずばりnicotineで検索してみると,一般的な物質であるニコチンなのでノイズが多くなってしまったが以下の論文をみつけた.J Ayub Med Coll Abbottabad. 2003 Oct-Dec;15(4):37-9.
喫煙者と非喫煙者でニコチン(苦み)とクエン酸(酸味)に対する感受性を,舌の先にそれぞれをたらして調べたが,喫煙者と非喫煙者で味覚に差がなかった.これはインドからの論文で,上の論文もそうだが,どうもタバコに肯定的な論文はアメリカからはなかなか出ないようだ.
PubMed以外ではたくさんサイトがみつかったが,日本と大差ないサイトばかりなので割愛.
ここまで得られた情報からとりあえず現時点で言えることは
- 喫煙直後はCOの影響があり調理には向かない
- 過剰な喫煙は味覚障害の原因になる
- しかし喫煙=味覚減退ではなく,喫煙するからといって料理の腕が落ちるとはいえない
というところ.
非喫煙者である私としてはちょっと残念な面もあるが,それ以外のデータが得られなかった以上このように言うのがフェアだろう.
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