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kahoの日記: ビタミンE補記 2

日記 by kaho

好中球がファゴサイトーシスによって外敵からの防御をしていることをど忘れしていたのでちょっと調べて再確認メモ.

そもそも活性酸素とかフリーラジカルが危険だとされるのはそれが細胞を破壊したりDNAを傷つけたりするからなのだが,そもそもなぜフリーラジカルが体内で作られるかと言えば,その強力な化学的な性質を利用して外敵を攻撃するためだ.
この役割を行うのが好中球と呼ばれる白血球の一種で,外敵を捕らえて食べてしまう(ファゴサイトーシス).そして食べた外敵を分解するのに使うのがフリーラジカルということだ.
しかしフリーラジカルは単純な物質であり敵や味方の区別をしないので多すぎると自分の細胞も攻撃してしまい,これが健康に問題を起こすということが「悪玉酸素説」の骨子になっているわけだ.

フリーラジカルは好中球の中で水に溶けているものと,細胞膜などを形成する脂質分子の不飽和脂肪酸が代表的なものだが,恐らくビタミンEで抗酸化というのは後者をターゲットとしたものだろう.
ちなみに不飽和脂肪酸が多いのは動物性よりも植物性の油で,植物性の油だけをとったマウスの方が動物性油をとっていたマウスよりも寿命が短いのはそのせいだろうと言われている.

もし好中球による生体防御作用を阻害することなくフリーラジカルを除去できればフリーラジカルによる障害を回避できるのではないかと考えるのも理解はできるのだが,対象としてビタミンEを使うのはおそらく悪い選択だろうというのが現在の私の見解だ.
そもそもビタミンEは抗酸化作用のために生体に存在しているのではないから,弱いとはいえ副作用がないはずがない.好中球による防御作用に直接的な影響はしないとしてもシグナル伝達経路を通じて様々な影響をもたらすことも考えられる.
PubMedを漁ったらビタミンEを飼料にまぜるという話がいくつかあったが,どれも検討が不十分のものだった.たとえばウシにビタミンEを与えたら好中球の活性が増したというが,これはPKCの抑制によるラジカル産生の上昇であろうから,局所的にはフリーラジカルが多くなっている上に家畜の体にダメージを与えていることも十分考えられる.

特定の症状の患者に対して有効であることは確かなようだが,その機序も単純にこうだといえるものではなさそうだ.
少なくとも抗酸化作用を謳ってビタミンEを売るのは正しくないということは言えるだろう.

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • きわめてラディカルに話をするなら、抗酸化作用がvivoで効くというデータはそもそも怪しいと思っていたりもするんですが、まあそれは置いておいて。

    ラジカルスカベンジャー自身も大抵は弱い(比較的安定な)フリーラジカルなので、採りすぎればそれ自身がラジカルとして働くというのは、極めて理解しやすい図式だと思っております。in vitroの変異原性試験(Ames試験とか)も大体は同じような感じですよね。より強い変異原性を持つ試薬と混ぜるとそれを安定化させることで、変異原性が抑制されるという結果が得られるけど、単独で高濃度与えるとそれ自身に変異原性があるという結果が得られる。

    とはいえ、これらはあくまでvitroの結果ですから、疫学的にデータが出てきているという状況は歓迎すべきでしょうね。問題は、それをvitroのデータで補強するときに誤った方向の議論に進んではならない、ってことで。
    • いやもうその通りと思っていまして,フリーラジカルの除去を本当にしたいならフリーラジカルの量をうまく調節できるようにという漢方的な話にするか,飲酒を控えるとかで生活改善するのが筋だと思います.表で決めつけて書いたら利害関係のある人になんやかんやと言われるかも,とちょっと控えめにしていますが.
      ポリフェノールでもビタミンでも,魔法の薬のように言われかねないものに関して,in vivoの研究成果を出すということは特にヒトだとすごい労力と時間と予算が必要なのでデータが集まるのはありがたいことなのですが,心情的には詐欺の片棒を担ぐようなやましさを感じてしまいます.
      現実社会では非科学的なことを言ってもある程度の理由があれば詐欺では捕まりませんから,世に商売のある限り永遠に続くとあきらめるべきところですけれど.それに,宣伝より科学的事実の方が説得力を持つ社会の方が怖いかも(笑)
      --
      kaho
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ナニゲにアレゲなのは、ナニゲなアレゲ -- アレゲ研究家

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