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kahoの日記: どうしてヒトの遺伝子はこんなに少ないのか 1

日記 by kaho

Science Blogに載っていた記事で,今度のGordon Conferenceで発表するというRNA editingの話が出ていた.

ヒトの遺伝子は3万以下の数しかないということがわかっており,これはヒトゲノム計画の前に想定されていたよりもかなり少ない数しかなかったし,他の生物と比べても多くなく,(ヒトが思う)ヒトの複雑性と矛盾するように思われている.(正確には多くの人間の自尊心を傷つけたというべきか)
例えばショウジョウバエでも14,000,コメなら50,000といった遺伝子がある.

一般的にはゲノム配列から見た単純性から現実の複雑性をもたらすのalternative splicingによると解説される.DNAに記されているエキソンのどれをタンパク質にするかという選択によってバリエーションが増えるというものだ.
例えばハエの神経系で発現するレセプターであるDSCAMという遺伝子はエキソンの取り方によって数万種類もの類似したタンパク質になる.(ヒトの同じ遺伝子は一種類のタンパク質にしかならないが)
このような,DNAからRNAに転写された後の作用によって生物内に存在するタンパク質の数は(ヒトの自尊心を満足させるだけ?)多くなっていると考えられている.

ところで,RNAの転写後の編集にはRNA editingと呼ばれる反応もある(そのまま訳すとRNA編集になってalternative splicingも含みそうな語感になるのでここでは英語で).
RNAのアデニンがタンパク質に翻訳される前にイノシンに変換されてしまうことで生成物であるタンパク質のアミノ酸配列も変わってしまう現象だ.
RNA editingによる「見た目以上の複雑さ」については通常のシーケンサーでは分かりにくいのでそれほど活発に研究されてきた訳ではない.

現在知られているRNA editingを受けるタンパク質は脳に存在するチャネルタンパク質ばかり20個程度なのだが,実際はもっとあるはずだと考えられている.
今度の学会では,このRNA editingを発見したグループがゲノム配列からRNA editingをうけるタンパク質を予測する方法を考えて,実際にアデニンからイノシンへの変換がおきていたことを示すものだそうだが,遺伝子の配列の近くにAluと呼ばれる繰り返し配列(遺伝子としては翻訳されない意味のない配列,ただしヒトのDNAの40%近くを占める)が近くにあることが予想のポイントだという.

なかなか面白そうな話なので早く論文として出版されないかと思う.

余談だが,ある学会でとある病気の原因遺伝子を特定したという発表で,SNPは見つけたがアミノ酸レベルでは変わっていないというものがあった.それがまさにRNA editingを受ける遺伝子だったのでDNAの配列だけではなくてeditingを受けた後の配列はどうなのかと聞こうと思ったのだが,演者がRNA editingについて知らなそうだったのでやめたこともあった.
測定がまだ自動的でないこともあって一般的な認識はまだまだだと思うが,RNA editingが原因で起きている病気もみつかっていることだし,これからもっと認知されていくことだと思う.

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  • by y_tambe (8218) on 2005年01月07日 9時50分 (#675191) ホームページ 日記
    これは知りませんでした。面白そうな概念ですね。研究室でJournal Clubをやるときのネタになりそうなので、しっかりとメモしておこう。

    ヒトの遺伝子数については、おっしゃる通り「万物の霊長」としてのプライドか何かを感じてる人がいるみたいに思えますね。ヒトが何万の遺伝子を持とうとも、どのみち、たかだか数個の遺伝子しか持たないウイルスにまんまと手玉に取られてしまってるんですけどね ;-)
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