kahoの日記: 恐怖は目から
Nature Web Newsに紹介されていた,今週号のNatureの論文に,扁桃体が損傷した患者に関する報告がでていた.
この患者SMは38歳の女性で,両側の扁桃体を損傷するという稀な例だが,知的能力には問題がない.しかし他人の顔を見て,その人が幸せか怒っているかは理解できるのに,恐怖だけは理解できない(普通の表情に見える).
これまでは様々な感情が脳の別の場所で処理されているのだろうと考えられてきたのだが,SMが他人の表情を読み取る時の視線を一般人と比較するとそうではないことが分かった.
SMは一般人と比較して他人の感情を鼻と口から読み取っており,目を見ていなかった.恐怖は見開いた目によって認識されるためにSMは恐怖という感情だけは読み取れなかったという.
つまり目を見るようにさえすれば彼女の「恐怖が読み取れない」という問題は解消されると考えられ,実際に目を見るように指示されると恐怖も一般人と同様のスコアで読み取ることができるようになったということだ.
恐怖の表情は結局のところ目だけによって表現されるというのも面白いのだが,これが分かると脳の機能に関する解釈が全く変わってくるのも面白い.
一例だけなので推測としか言えないが,扁桃体はどこに意識を集中させるかという機能を持っていることになるし,感情の処理についても解釈が新しくなる.
理屈をこねくり回すのではなく,「目を見るようにしなさい」という簡単な指示で問題が解決されるのは本当に現実的で,簡単で,しかも効果的だ.
Newsの方では自閉症に関しても言及されているが,少し誤解を受ける書き方だと思う.自閉症も他人の感情が読み取れないという部分はあるが,これは表情だけではなくて小説などで書かれていても同じことなので,視線の集中とは関連は薄い.
しかしある種の注意の向け方が違うだけなのかもしれないという考え方は検討の余地があるし,それが正しければ扁桃体についての新しい調査も行う必要が出てくるだろう.
最後に毒を吐くと,以前から精神分析やら現代思想やらで多くても数例の患者から得た結果を勝手に解釈して講釈を垂れる人間をうさんくさく思っていたので,ああそういう解釈は無視していいんだな,という気にもなった.
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