kahoの日記: アリにおける自己犠牲,それは愚かでいること
Science Blogから,アリの役割を血筋が決めるという話.
アブストラクトだけで本文は見られないのだが,私もこれまでアリの役割(働きアリや兵隊アリ)は(雄アリが未受精卵からであることは別として)社会性の中での必要性によって分類されると思ってきた.
女王アリは(遺伝的に)自らのクローンである雌アリを産み,いつしか次の女王アリをが雄アリと飛び立って新しい巣を作ると.
しかしアリゾナやメキシコに生息するクロナガアリでは雄アリが均一ではないことにRissing氏らは気づき,DNAを調べてみたところ,2つの異なる系統からのDNAが見つかったという.
しかも実験室で違う巣からのアリ同士,あるいは同じ巣からのアリ同士を交配させてみたところ,同じ巣同士だと女王アリとなりうる,生殖可能なアリが,別々の巣同士だと不稔のアリが産まれ,それらのアリだけがほぼ働きアリになったというのだ.
実験ではH1とH2の二つの系統からとった雄と雌のアリを用意し,両方と掛け合わせるようにしたのだが,H1同士,H2同士の卵はわずか0.3%しか成体にまで成長せず,成長しても働きアリとしては十分な働きができなかったという.
一方別の系統からの「混血」アリは87%が成体の働きアリとなった.
H1とH2が見た目上は同じでも進化的に離れているのだとしたら雑種が不稔になるのは理解できる.しかしこのシステム,雄アリの観点から見ると他の系統の雌と交配しても自分の遺伝子は残らない(どころか一生働きアリとしてこきつかわれるだけ)のだから「利己的な遺伝子」レベルから言ったら全く利益がない.
であるにもかかわらずこのアリは雄が雌を区別する能力を発達させることはなかったことになる.むしろ愚かでいることを選んだとさえ.もし個体に有利な能力を発達させすぎると,そのコロニー全体が立ち行かなくなってしまうわけだから.
かなり極端な形ではあるが,ある種の自己犠牲によって種が存続している例ということになるのだろう.
しかしこれはこの地域に住むアリの観察なのだが,この通りだと他の巣のオスと交配しない雌アリは,働きアリが確保できないので巣をつくれないことになり,かなり生存競争に不利な気がする.
しかも子供は同じ巣由来の遺伝子しか持たないので雑種強勢 (hybrid vigor)というわけにもいかない.どうしてこういうシステムになっているのか不思議だ.
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