kahoの日記: 20年のギャップ
ダーウィンが『種の起源』(On the Origin of Species)を表したのは1859年だが,ダーウィンが種の進化の着想を得たのはそれよりも20年以上前(1837年?)だとされている.
この間なぜダーウィンが自説を発表しなかったのかについては,一般にはWikipediaにもあるように世論(特に教会)の反発を恐れていたということになっている.
今週号のNatureに(要購読だがこちらから閲覧可能)ケンブリッジ大の科学史家であるvan Wyhe氏による文献調査の結果についての記事が載っていて読んだのだが,これは後に作られた伝説であったようだ.
(科学史の原著文献を読む能力はないので以降はNatureの記事に依存して書くことにする)
ダーウィンについて書かれた書物の中で,最初にこの20年の「遅れ」あるいは「断絶」について書かれたのは,なんと1948年の"Darwin : Before and After"になるのだそうだ.
ダーウィンは友人や同僚に対して種が進化するというアイデアについて語っていたことが手紙に残っており,また草稿の印刷のために少なくとも2回は支払いを行っているという.すなわち宗教的な反発を予想して自説を隠しておいたわけでもなければ,発表をまごついていたわけでもなかったようだ.
ではなぜ出版まで時間がかかったのか?
それは単にダーウィンが忙しかったかららしい.
フジツボに関する研究をまとめなければならなかったし,進化論をまとめるにも,昆虫に見られる利他的行動を説明できるような観察も必要だった.
その上ダーウィンの健康状態もよくなかったから,出版までに時間がかかったように見えるのだという.
もちろん宗教的な議論に対してダーウィンが無頓着だったわけでもないし,最終的にはウォレスに負けまいと出版を急いだことも事実で,『種の起源』の出版がいつになったかは複合的な要因がからんでいるのだろうが,科学の分野でこれほど有名で,わずか150年前のことであっても神話がまかり通っている例として面白い.
20年のギャップ More ログイン